「美奈子ちゃん、ありがと。でも、ホントにお礼はチューじゃなくて良かったの?」
「もう!しつこいんだから…」
ほくほく顔したルカくんと、ショッピングセンター内に併設されているフードコートのテーブルに向かい合って座る。
ルカくんは、チューが一番なのにね、と笑いながらジュースを注文してくれた。
真剣に写真を選んだのと、この一連のやり取りですっかり渇いてしまった喉を一気に潤した。
「女子的にはこういうコウがお好みなんだね」
わたしが選んだ写真をじっくり見ながらうんうんと頷く。
「ねぇルカくん。なんで急にコウくんの写メなんか撮りだしたの?しかも量も半端じゃないし」
「んー?だって俺、お兄ちゃんのこと大好きだし」
本気なのか大嘘なのか。
目の前の幼馴染に浮かぶ表情からはどっちとも取れてしまって、まるで正解が分からない。
「い、いや大好きかもしれないけどさ……だって家でいつでも見てるでしょ?別に写メ撮んなくてもいいじゃない」
「だって、色んなコウをいつでもどこでも見れるように携帯にいれときたいじゃない?あ、何、美奈子ちゃんもしかして俺に嫉妬してる?」
「し、嫉妬!?な、なんでわたしがコウくんのことでルカくんに嫉妬しなきゃ……って、ルカくん!」
わたしが喋り終わる前に、目に涙をためながら盛大に吹き出したルカくんを見て、冗談だったんだと悟った。
それも極めてたちの悪い冗談だ。
「ルーカーくーん!からかうのもいい加減にしてよね!」
「何言ってんの。美奈子ちゃんのリアクションがいちいちカワイイのがいけないんだよ?でもさ、嫉妬はしたでしょ?」
包装から解放されたオレンジ色の飴玉がわたしを指さすように、目の前に差し出された。
ほのかにオレンジの香りがする飴の香りが、コウくんからいつも漂ってる香りに似ていて胸をきゅっと締めつけた。
「ねぇ、図星なんでしょ?」
全てを見透かしているかのような顔したルカくんに苛立ったわたしは、その飴をひったくるように口に含んだ。