「俺もさ、オマエと同じようなこと考えてたんだ。まあ、俺は逆にオマエに触りたくてしょうがなかったし、堪え性もないから突っ走っちゃったけどね」
ごめんな、って言いながら親指で涙を拭うと、真一文字に結ばれ続けていた口がやっと緩み、柔らかな笑顔が浮かんだ。
ああ、やっぱり俺、この顔が見れないとダメだ。
なんだかんだ言ったって、それが大前提なんだ、って当たり前のことがようやく分かった。
「わたしの方こそ、ごめんなさい」
美奈子はほっぺたに添えられていた俺の手をぎゅっと握って、願いごとをするかのように目を閉じ額にくっつけた。
「なあ、美奈子。俺がさ、オマエを嫌いになることなんてないから。オマエが俺を嫌いになっても、俺は多分…ううん、絶対にずっとオマエのことが好きだから。それだけは覚えといて?だから、自分一人だけで考えて悩むのはやめること、分かった?」
こくんと頷く美奈子の頭をもう一方の手でぽんぽんと撫でる。
「わたしだって、るかちゃんのこと嫌いになんてなれないから。それだけは覚えとくように、ね?」
ふふっ、とちょっとだけ恥ずかしそうに目を伏せる美奈子。
「覚えとく、ちょー覚えとく。何があっても絶対に忘れないから」
「る、るかちゃん、大袈裟だよ!もうっ!」
「大袈裟じゃないよ。俺にとっては何よりも大事なことだもん」
俺を見上げる目にまだ少しだけ残る綺麗な雫。
目尻に近づけたくちびるでそれをちゅっと吸い上げると、舌に残るのは微かな塩味。
この味を覚えておくんだ。
もう二度と、美奈子にこんな思いをさせないために。
もしも願いが叶うなら。
この夜にこの星にオマエは何を願う?
俺は、オマエが俺の隣でずっと笑顔でいてくれることを願うよ。
オマエも俺と同じこと願ってくれますように。
俺が願うのはそれだけだ。