short stories | ナノ




「俺もさ、オマエと同じようなこと考えてたんだ。まあ、俺は逆にオマエに触りたくてしょうがなかったし、堪え性もないから突っ走っちゃったけどね」

ごめんな、って言いながら親指で涙を拭うと、真一文字に結ばれ続けていた口がやっと緩み、柔らかな笑顔が浮かんだ。
ああ、やっぱり俺、この顔が見れないとダメだ。

なんだかんだ言ったって、それが大前提なんだ、って当たり前のことがようやく分かった。

「わたしの方こそ、ごめんなさい」

美奈子はほっぺたに添えられていた俺の手をぎゅっと握って、願いごとをするかのように目を閉じ額にくっつけた。

「なあ、美奈子。俺がさ、オマエを嫌いになることなんてないから。オマエが俺を嫌いになっても、俺は多分…ううん、絶対にずっとオマエのことが好きだから。それだけは覚えといて?だから、自分一人だけで考えて悩むのはやめること、分かった?」

こくんと頷く美奈子の頭をもう一方の手でぽんぽんと撫でる。

「わたしだって、るかちゃんのこと嫌いになんてなれないから。それだけは覚えとくように、ね?」

ふふっ、とちょっとだけ恥ずかしそうに目を伏せる美奈子。

「覚えとく、ちょー覚えとく。何があっても絶対に忘れないから」

「る、るかちゃん、大袈裟だよ!もうっ!」

「大袈裟じゃないよ。俺にとっては何よりも大事なことだもん」

俺を見上げる目にまだ少しだけ残る綺麗な雫。
目尻に近づけたくちびるでそれをちゅっと吸い上げると、舌に残るのは微かな塩味。

この味を覚えておくんだ。
もう二度と、美奈子にこんな思いをさせないために。


もしも願いが叶うなら。
この夜にこの星にオマエは何を願う?

俺は、オマエが俺の隣でずっと笑顔でいてくれることを願うよ。
オマエも俺と同じこと願ってくれますように。

俺が願うのはそれだけだ。

-5/5-
prev next

[return]


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -