「んーそうだなぁ。あ、あっちの星とそっちとそっちの星を繋げて三角形作れるから、多分その中の二つがベガとアルタイルだ。うん、きっとそうだ」
「ええー…ルカちゃん、適当に言ってるでしょ?」
「…ハハ、バレちゃったか」
「もう!ルカちゃんったら適当過ぎるよ!」
ふふっと微笑む黒く澄んだ大きな瞳に覗きこまれ、つやつやしたくちびるに吸い寄せられるように顔を近づける。
「あー!ルカちゃん!ほら、後ろ後ろ!流れ星だよっ!」
俺を覗きこんでいたはずの大きな黒い瞳は、すでに俺の背後に広がる夜空に向いていた。
最近ずっとこんな感じだ。
付き合い始めてもう随分と経つのに、いや経ったからなのか、美奈子は俺と触れあうことを避けるようになった。
前はチューだってハグだって、俺がくっつけば恥ずかしがりながらも、それに応えてくれたのに。
……残念ながらエッチはまだだけど。
埋まらないパーツ。
はまらないピース。
それを満たせるのは、美奈子しかいないのに。
窓枠に立てた肘で頬杖ついて、ふと夜空を見上げると、俺の中でアルタイルと決めた星がまるで慰めるかのように、綺麗に瞬いた。
彦星は触れあいたくても触れ合えない時、どうやって気を紛らわせてるんだろう?
どう転んでも下世話な想像しか出来ない俺は、相当溜まってるって言われてもしょうがない。
だってそれホントのことだから。
綺麗なモンだけで恋愛するなんて、そんなの無理だ。
なぁ、美奈子もそう思わない?
「美奈子ってさ、何気にヒドイよね」
「えー何が?えっ、あ、何?ルカちゃんそんなに流れ星見たかったの?」
さすがに一瞬のことだったからなー、なんて首をひねる美奈子。
違う違う、そういうことじゃない。
それどころか1ミリもかすってないよ。
「あのさ、美奈子。それ分かってて言ってんの?」
「それって…?」
きょとんとした目が俺を見つめる。
その言葉の意味が分かってないだけなのか、それともホントにそう思ってないだけなのか。
どっちにしろ、今仕掛けないと、この先ずっと分かってくんない気がする。
そうして俺は窓枠から肘をおろし、ベッドを這うように美奈子ににじり寄っていった。