short stories | ナノ




月曜日のお昼時間、カレンとミヨが私の姿を目ざとく見つけて近づいてきた。

「バーンビ!で、答えは出た?」

「ええ?!いきなり聞くの?」

「バンビ、私も早く聞かせてほしい。」

ミヨまで…これは腹をくくるしかないかな…。


いつものように屋上に移動して、他の生徒から少し距離を取ったところに座る。

「あ、あのね、ええーっとね…私、る」

「ああー!ちょっと待って、やっぱ聞きたくないー!バンビ、それ以上言わないで!」

「カレンうるさい。分かった、私だけで聞くからカレンはあっちに行ってて。」

「ううーミヨひどいー。聞かないわけにはいかないじゃん!いかないけど…バンビの口から決定的なこと聞きたくないのっ!」

「じゃあ、後で私から教えてあげるから、やっぱりあっちに行ってて。」

「も、もう!二人ともケンカしないで!ね、カレンも落ち着いて。」

「うう…分かった…バンビがそう言うなら、ちゃんと聞く。」

「じゃ、じゃあ、改めて言うね?私、琉夏くんのこと好きみたい…なんだ。」
蚊の鳴くような声って、まさにこんな声のことをいうのかっていうくらいの小さい声で呟いた。

それでも二人は笑ったり茶化したりせずに、ちゃんと聞いてくれた。
そして、

「良かったね、バンビ。その気持ち、大切に育てていくんだよ。」

「バンビが考えて悩んで出した答えなら、それが最良の答え。私も応援してる。星の導きが必要な時はいつでも言って。」

って言ってくれた。

二人の言葉にほっとして泣いてしまったら、他の生徒に驚かれたっけ。


その時のことを思いだして、思わず笑みがこぼれた。

「よーし、張り切って畳んじゃいますか!」

横になっていた床に座りなおし、洗濯物を畳み始めた。

「そういえば、今日は琉夏くん返信遅いなー。どこか出かけてるのかな?ふふ、また前みたいに琥一くんのためにカレー作るんだって買い物に行ってたりして。」

あの照れくさそうな、はにかんだ笑顔を浮かべていた琉夏くんのことを思いだしていたら、インターホンが鳴った。

「お母さん、私出るねー。」

と玄関に向かう。

「はーい。」



その笑顔が見れるまであと5秒。

            


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