short stories | ナノ





「美奈子、お弁当食べないの?」

「食わねぇなら俺が食っちまうぞ」

美味しそうに食べる二人の顔を見てたら、箸が止まってたらしい。

「食べますー。って私の分までってどれだけ食べる気なのよ、食いしん坊なんだから!」


誰からともなく、笑いが漏れる。

こういう何気ないやり取りがとても楽しくて、三人でいる時間はとても大事な時間なんだ。

ずっとこのまま、三人でいられればいいのにな。

壊したくない、壊されたくない大事なバランス。
私は、どっちの手も離せない。
二人と繋がったまま、一生一緒にいたいなんて……わがままだって分かってるけど、そう願わずにはいられない。


「美奈子ー?どした、気分悪い?」

ルカちゃんが、少し俯いた私の顔を覗き込む。

その横でコウちゃんが、大きな手のひらで頭をポンポンと軽く叩く。


――ううん。大丈夫、なんでもないよ。

笑いながらそう言って、心配そうな顔をしてる二人を一刻も早く安心させたいのに。

何故だか、口を開くと涙が溢れそうな気がして、首を横に振るのが精一杯だった。


「……じゃ、まあこれ食って元気出せ」

「じゃじゃーん!美奈子、ほらこれ見て?」

コウちゃんの手のひらに乗った、少し大きめの白い箱をルカちゃんが開けて私に中を見るよう促す。


その箱の中には、少しだけいびつな形をしたケーキが入っていた。

生クリームと莓でデコレーションされたケーキの上に、ホワイトチョコのプレート。

『美奈子、お誕生日おめでとう』

そのプレートには、チョコペンでそう書かれていた。


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