short stories | ナノ





箱にさっと手を伸ばし、一つ摘まんで、コウちゃんの両腿を跨いで口にトリュフをセットする。

「へっへーんだ!どうだ、苦しいでしょ?ちゃんと全部食べるまで、退かないんだからね!」

「……オマエ何やってんだよ」

「何って……コウちゃん、ほら口開けて?あーん」


少しだけ開いてるくちびるにトリュフを付ける。

「チッ。メンドクセーな…」

コウちゃんはそう悪態をつきながらも、少しずつくちびるを開いていく。

それに気を良くした私は、得意満面な笑みを浮かべ、再び手を伸ばしトリュフを次々と摘まむ。

「ほら、コウちゃん、あーん……」

そのやり取りを何度か繰り返したその時、コウちゃんはトリュフを摘まんでいる手をがっちりと掴んで、そのまま私の口にトリュフを押し込んだ。

そして、腰に腕が回され頭を掴まれ、身体がコウちゃんの方に引き寄せられた瞬間、私のくちびるにコウちゃんのくちびるが重なった。


「こっちの方が美味ぇな」

私の口内の全てを吸い取り、ペロリとくちびるを舐めるコウちゃん。


ほろ苦いのに甘い。
甘すぎてどうにかなっちゃいそう。

コウちゃんが与えてくれるものは全てがちょっとだけほろ苦く、でもとびきり甘い。


それはチョコのようにほろ苦く、全てが蕩けるようなキスの味。
身体も心も、私の全てがコウちゃんに溶けていく。


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