short stories | ナノ




それからどれだけ経った頃だろう。
沈黙を破ったのはコウちゃんの方だった。


「……だ」

「……ん?コウちゃん?」

「だから、上出来だって言ってんだ」


相変わらず眉間に皺を寄せたままなのに、コウちゃんのほっぺたや耳たぶがほんのり赤く色づいている。


「ホ、ホントに?」

コウちゃんはふっと笑みをもらして、大きな手で私の頭を撫でてくれる。

その大きく骨ばった手で頭を撫でられると、私の心の奥はキュッと締め付けられる。

それはとても苦しくて切なくて。
でも、泣けてくるほどの幸せを感じるの。


コウちゃんが好き。

そう思えるだけで、幸せなの。


コウちゃんは、眉間の皺を緩め、綺麗にラッピングをほどいている。
箱を開け、小さく丸まったトリュフを摘まんで口にパクっと放り込むと、一瞬顔をしかめながらゴクリと飲み込んだ。


「まあ…甘ぇが悪かねぇな」

「ホントに!?嬉しい」


コウちゃんに褒められたのが嬉しくて、顔がにやけてしまう。


「オマエ、何ニヤニヤしてんだよ?」

ニヤニヤって……。
まあその通りだけど、もっと違う言い方があると思うんだけど。

うう…相変わらず口が悪いんだから。

「もうっ!コウちゃん酷いよ!こうなったら……」


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