short stories | ナノ


スイート・ビター・キス


ビター・キス×琥一


それはチョコのようにほろ苦く、全てが蕩けるようなキスの味。
身体も心も、私の全てがコウちゃんに溶けていく。


「コウちゃん、ハッピーバレンタイン!」

今日もいつものように、コウちゃんと一緒に帰る。

いつもと違うのは、チョコを渡すためにWest Beachに寄ったこと。

部屋にあがって待ってろ、と言われ、コウちゃんがコーヒーを淹れてくれてくれた。

その香ばしい薫りが漂う中で、昨日カレンとみよと手作りしたチョコを渡した。

「……。」

「コ、コウちゃん?」

……もしかして、気に入らなかった?


「あ、あのね、コウちゃん甘いの苦手って言ってたから、苦手な人でも食べられるようにってビターチョコで、トリュフを作ってみたんだけど……」


「……。」

コウちゃんは、眉間に皺を寄せて、手渡されたチョコを凝視している。

やっぱりチョコより、実用的な物の方が良かったのかな…?

沈黙する時間が長くなるにつれ、私の気持ちもそれに比例してどんどん沈んでいく。


いつもなら幸せを感じるコーヒーの香りも、今はただ苦さしか感じない。

-4/6-
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