俺の手の中にあるこの紙を提出すれば、俺たちは晴れて夫婦となる。
たかが紙切れ一枚だけど。
その紙切れに俺は、幸せと責任を乗っけてるんだ。
けじめというより、誓い。
その誓いを胸に、美奈子を愛し生きていく。
「おめでとうございます」
係りのお兄さんに婚姻届を無事提出し、手を繋ぎ二人並んで歩く帰り道。
夜空にはさっきと同じようにまん丸い月がぽっかりと浮かんでいる。
「ルカちゃん見て見て!綺麗な月だね。ふふっ。ルカちゃんの髪の色と同じ色してる」
「そうだな」
「ねえ、ルカちゃん。あのね……」
「ん、どした?」
「……私ね、月を見るとね、ルカちゃんが笑って私を守ってくれてるような気になるんだ」
なんか恥ずかしいなぁ、なんてはにかみながら漏らす白い息までいとおしい。
「俺だってそうだよ」
「……?」
分からない?
俺だっていつもオマエを感じてる。
「陽の光を感じるとさ、オマエの笑った顔や温もりを思い出すんだ。離れてた所にいてもいつもオマエを感じてる」
「ルカちゃん……」
繋いだ手に力を込めて、美奈子を抱き寄せキスをする。
すっかり冷たくなっていた二人の唇に、触れ合った瞬間から温もりが戻っていく。
「俺の奥さんになってからの初めてのチューだね?あっ、今年初めてのチューでもあるね」
「ル、ルカちゃん…もうっ!」
美奈子は恥ずかしがって、隠すように俺の胸に顔を埋める。
「これからもさ、初めてはたくさんあるよ。一緒に一つずつ経験していこ?よろしくね、カワイイカワイイ俺の奥さん」
こくん、と腕の中で頷く美奈子をギュッと抱き締める。
―もう大丈夫。
ぽっかりと浮かぶ月を見上げ、そう伝えるように一つ大きく頷いた。