long story-trip- | ナノ





覚えてるもなにもたった3日前のこと。
私は、お酒を飲みながら「琉夏くんとイチャイチャしたい」って叫んでた。
普段飲めないお酒を飲んだその理由は、あの人から届いたハガキ。
一緒に写ってる女の人のお腹は大きくなっていて。
私と別れたその後、彼は一つ一つ着実に未来へと歩み始めていたんだって突きつけられた気がして悲しくなったから。

なんで私の時間はあの時から止まったままなんだろう。
少しだけ現実逃避したくて、久々に琉夏くんを攻略したあの日。
こんな都合いいことなんて現実に起こるわけない、なんて思った。
でも、いつも悲しげな目をしていた琉夏くんが恋をすることによって変わっていったってことが羨ましかった。
それで、私も琉夏くんと実際に過ごしてみたら何かが変わるかもしれないって酔い潰れそうな頭で思って泣いて叫んだんだ。

「思い出した?最初からずっと気になってて、久々に俺に会いに来た奏の顔をあの顔見ちゃったら、もう放っておけなくて。3日っていう条件でこっちの世界に来たんだ。でもさ、どんどん変わっていく奏をずっと見ていたくて一緒にいたくて、なかなか切り出せなかった。本当にごめん。」

「私は、琉夏くんが来て、くれて一歩を踏み出すことが出来た。でも、それは…琉夏くんが傍にいてくれたからでしょ…?」

「違うよ、奏。一歩を踏み出すことが出来たのは奏自身の力だよ。奏は自分が思ってるほど弱くない。俺がこっちに来たのはただのきっかけ。自分の力を信じて踏み出して欲しかったんだ。」

何勝手なこと言ってるの、と思うと同時に心のどこかでああ、そうかもしれないなという思いが渦巻いてきた。
周りがどんなにきっかけをくれたって、自分自身の殻に閉じこもってちゃそこから何も変わることは出来ない。
結局は、自分の心の持ち方次第ってことだよね?
でもね、確かに琉夏くんが来てくれて私の心は変わったんだよ。
それだけは、覚えておいてほしい。

どれだけ時間が経ったのだろう。
だんだんと気持ちが落ち着いてきて、琉夏くんは戻る、という選択肢以外はないってことをちゃんと理解し始めてきた。

「…ねぇ琉夏くん、いつ戻るの?」

「朝日が昇ると同時に戻らなきゃなんないんだ。」

ごめんな、とそう言って悲しそうな顔でこっちを見る琉夏くん。

そんな顔させたまま、帰しちゃっていいの?


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