食器の後片付けが終わり、テレビの前のソファで二人でくつろいでいると、琉夏くんがなんてことない、お腹空いた、のような当たり前のことをいうように私に大事なことを言ってきた。
「なあ、奏。ちょっと話があるんだけど。」
「んー何?」
「あのさ、俺、今日であっちの世界に戻るから。」
…は?聞き間違い?それともたちの悪い冗談?
「ま、またまたー。私を驚かそうとしてるんでしょ?もうその手には乗らないよ。」
少し困ったように、どうしようもないんだというように目を伏せた琉夏くん。
「違うんだ。本当に戻るんだ。最初から3日間の約束で俺はここに来たんだ。」
「…うそ。ねえ、うそでしょ?」
「ごめんな。これだけは最初から決まってた約束だったんだ。今まで何も言わずにごめん。」
「…琉夏くん、酷いよ。私の気持ちを揺さぶって楽しむためだけにこっちの世界に来たってこと?」
「違う、それは違う。」
「な、何が違う、っていうの、よ…。言って、みなさいよ。気まぐれ…で人の心を、弄んで楽し…かった?」
訳がわかんなくてパニックになって流した涙さえ拭いもせずにそのままで。
せっかく一歩踏み出せたと思ったらこんなことになるなんて。
「違う。俺は奏を放っておけなかったんだ。」
「…どういう、意味よ。」
「初めて奏を見たときから、奏の目が俺の目に似ていて放っておけなかったんだ。それに奏さ、俺がここに来た日の前の日のこと覚えてる?」