「琉夏くん、ただいま。」
「あ、おかえり。今日は早かったんだね。」
ソファに座っていた琉夏くんが私の方に顔を向けて出迎えてくれる。
ジャケットとバッグを琉夏くんが座ってるソファの横に置いてキッチンへと向かう。
時間を置いたからか、朝のようないたたまれなさは残っていない。
でも、なにかいつもと違う雰囲気。
口では上手く説明できないけど…。
「うん、最近ずっと琉夏くんがご飯作ってくれてたでしょう?今日は私が作ろうと思って仕事頑張っちゃった。あ、おにぎり美味しかったよ。ごちそうさま。」
「じゃあ、今日は奏特製の夕ご飯なんだ。楽しみ。あ、おにぎりかなり大きくなかった?」
「特製ってほどの料理は作れないから、期待はしないで。おにぎり大きかったよーでも全部食べた。お腹破裂しそうだったけど。」
「ホントに?よくあの量を残さずに食えたね。そうか、奏は大食漢なんだな。」
「もう、酷い!そんなこと言う人には夕ご飯あげないからね。」
「ハハ、うそうそ。残さずに食べてくれて嬉しいよ。ありがとう。あ、俺も手伝うよ。」
「いいのいいの、琉夏くんは座ってテレビでも見てて。張り切って作っちゃうから。」
「そ?じゃあ、楽しみに待ってる。あ、俺ちょっとだけベランダに出とくね。用があったら呼んで。」
「うん、分かった。」
琉夏くんはそう言うと、ベランダに出て手すりに肘を乗せ街をぼーっと見つめている。
その背中が少し寂しそうで。
何かあったのかな?
お腹空きすぎたとか?
なんてのんきなことを思ってご飯を作り始めた。
まさか、もうすぐ別れの時が来るなんて思いもせずに。