「琉夏くん、お待たせ。」
フライパンの中のホットケーキと格闘していた琉夏くんが私の方を向いた。
私の姿を認めた瞬間、目を見開きゴクリと息をのんだ。
「奏…その服…。」
「え、何?どこか変かな。」
頭をぶるんぶるんと振った琉夏くん。
ちょ、ちょっとその勢いだと頭もげそうで心配になるんですけど。
「…ねぇ、抱きしめてもいい?」
は、はいぃー?今なんと言いました?
「だってカワイすぎじゃん、そのカッコ!ズルイ!」
あ、服装チェックの時のセリフか…。
たまにゲームのセリフをしれっと言ってくるから、気が抜けない。
「ありがとう。琉夏くんは、ほめ上手だね。どう、ドキドキしちゃう?」
「えっ、ああ…うん。ほ、ほら、ホットケーキ出来上がったから食べよ。コーヒーも淹れてあるから。」
何その反応。耳まで真っ赤。
いつものように笑いながら、逆にこっちをわたわたさせるようなことを言ってくると思ったら、恥ずかしそうに目も合わせてくれないし。
調子狂っちゃうよ。私にまでその恥ずかしさが伝染してくるかのよう。
「う、うん!そうだね、ホットケーキ食べよう。いただきまーす。ああ、今日のホットケーキも美味しそうだ。ほら、琉夏くんも食べなよ。」
「だ、だろ?奏のために作ったんだから美味しくないわけがないよな。ん、ウマい!」
落ち着け、落ち着け。
琉夏くんが慌ててる姿だなんてめったに見れるもんじゃないんだからちゃんと見とかなきゃ。
って、そこじゃない。
こんなこそばゆい展開を狙ってたわけじゃないのに。
コーヒーを一口飲んで、心を落ち着かせる。
いつもみたいな話をしなきゃ。
あ、そうだ、そういえば。