long story-trip- | ナノ





沖縄といったって、家のすぐそばに海があるわけじゃなく。
車で10分くらいのところに位置する家から一番近い海を目指したのは覚えてる。
でもそれ以外は狐につままれたような感じで、なにがなんだか分からないうちに海に着いていた。

波打ち際から少し離れた砂浜に腰を下ろす。
琉夏くんは少し離れて一人で波と戯れてる。

久々に近くで聞く波の音は耳に気持ちいい。
白く続く砂浜は昼間の熱をすっかり逃がしひんやりとしていて、触れてるところから私の熱をどんどん奪っていく。
だからなのか、湿り気を帯びた風も今日ばかりは気にもならない。
立てた膝に顔を乗せて、水平線と夜の闇が重なって溶け合ってるところをじっと見つめる。

なんだか…

「気持ち、落ち着いてきた?」

「ちょ、ちょっと琉夏くん。驚かさないでよ。」

いつの間にか横に並んで座っていた琉夏くんが声をかけてきた。
私が思ってたことを聞いてくるあたり、琉夏くんには私の混乱が全てお見通しだったのかなって思ってなんだか恥ずかしい。

「うん、落ち着いてきた。琉夏くんはさすがだね。」

「さすがって何が?俺なにもしてないよ。むしろ海に行きたいってわがまま言ったと思うし。」

「それもありがたかったっていうか…でも確かに、いきなり『今から海に行かない?』は無いよねぇ…しかも私が運転してるし。それを言うなら『海に連れてってください、お願いします。』の方が正しいと思うんだけど。」

「奏…落ち着いてきたと思ったら即反撃?やるねぇ。」

なんて、以前のように掛け合いをしていたらどちらからともなく笑いが出てきて。
顔を見合わせて、自然と同じことを同じように感じ合える関係。

私とあの人も最初はそうだったのかもしれない。
でも、だんだんとなれ合いになってきて努力をせずにお互いがお互いに甘えきっていたのかもしれない。
少なくとも私はあの人の優しさに甘えて驕って自分を変える努力をしようともせず、あの人にばかり変わることを望んでた。

だから、私たちはダメになったんだ。


-5/17-
prev next

[return to top]


「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -