「は…?え…?だ、誰?」
急に怖くなって、あわててその声の主に背を向け逃げ出そうとしたときに急にその声の主の名前が頭の中に浮かんだ。
あれ今のって、琉夏くん…?
おそるおそる振り返り、顔をまじまじと確認してみる。
「えっと…琉夏くん?」
「そうだよ、琉夏くんだよ。ねえ、びっくりした?」
びっくりしないわけがない。
でも、びっくりしたとかしてないとかそういう問題でもなく。
なぜ貴方はここにいるの?っていうことが問題っていうか…。
「ええっと…つかぬことをお聞きしますが…琉夏くんは、なんでここにいるの?」
「えーヒドイ。だって昨日奏が『琉夏くんとイチャイチャしたい!』って叫んでたからじゃん。覚えてないの?」
そう、昨日お酒を飲みながら琉夏くんとデートしていた私は、テンション上がりきっちゃって
『琉夏くんとイチャイチャしたいんだー!』
って叫んでた。しかも何度も何度も。本人に聞かれてたなんて、今すぐ消えたくなるくらい恥ずかしすぎるんですが…。
「うっ、覚えてますけど…。」
「でしょ?だから俺は今ここにいるの。」
って満面の笑みで言われても、普通そんなこと起こらないですから!!
困った…。なんでこの人こんなに普通なの?
ん?ちょい待ち。琉夏くんがいるってことは…
ここってもしや住みたいと夢にまで見た「はばたき市」なんですか?
そう思ったら居てもたってもいられず、あわててベランダに出て外を確認する。
でもどんなに目を凝らしても、ほっぺたをつねってみても、そこにはいつもと同じ風景が広がるばかり。
いつの間にか隣に並んで外を見ていた琉夏くんが、
「あっ、ほらあの女の子と男の子、照れちゃって手つなげてないねー。一緒に登校すんのかな?あの少し開いた距離がカワイイ。」
なんて言うもんだから、
「あっ、ホントだー。初々しくて可愛いね。朝からさわやかなもの見せてもらった。ごちそうさまでした。」
なんて、朝日が差し込む暖かいベランダでつい和んじゃって。
って違う!今考えなきゃいけない大事なことはそれじゃない!
もしかして琉夏くん、こっちの世界に来ちゃったの!?
「ええええええー?!」