琉夏くんはさっきと違って、今度はお風呂を覗きに来なかった。
ホント良かった…またあの攻防を繰り返す元気はなかったよ…。
ゆっくりと湯船に浸かってリラックス出来たからか、余裕が戻ってきた。
いくら琉夏くんだからといって、年下にいつまでも翻弄されているわけにはいかない。
平常心、平常心。その心で琉夏くんに接すればきっとこんなに翻弄されることはないはず。
気合を入れるように両手でほっぺたを軽くたたき、お風呂からあがった。
「琉夏くん?お風呂入ったらー?ねえ…あ、寝てる。」
琉夏くんは、テレビの前のソファで横になって寝ていた。
テレビの音がするからてっきり起きてると思ってたけど…そうだよね、慣れない土地に来て疲れないはずはないよね。
ソファの横に座り、寝息を立ててすやすやと眠る琉夏くんをしばらく見つめていたら、今日の出来事が一つ一つ蘇ってきた。
今日は本当に楽しかったな…。
目を覚ますといきなり琉夏くんが横にいて、私がはばたき市に行ったと思ったらそうじゃないし、ホットケーキであーんさせられるわ、おそば屋さんに行ったり美ら海に行ったり。
そして、帰りのドライブで通った道には、中央分離帯にヤシの木が植えられていて、海を売りにしたリゾートホテルが軒を連ねていたり、御菓子御殿と呼ばれるお土産屋さんがあったり、道と道のど真ん中に防衛庁の建物があったり、広大な米軍飛行場があったり…。
意外とくるくる景色が変わる。
アメリカっぽいお店もたくさんあるし。
沖縄って一瞬日本にいるっていう感覚を忘れる場所だよねえ。
こっちに住んでない人と―まあ琉夏くんなんだけど―と色々なところを改めて見てみると、いつもとはまた違う景色が見れた気がする。
食料品の買い出しもわーわー言いながら一緒にしたし。
盛りだくさん過ぎて、現実味がない気がするけど…楽しかったなぁ…。
なんだかとても幸せだよ。
充実感にあふれた気持ちになった私は、いつの間にか琉夏くんの傍で眠りこんでいた。