「ただいまー!」
家に着いて、勢いよく玄関を開けると同時に二つの声が重なった。
買い物の荷物を持ってくれた琉夏くんは、先に電気をつけキッチンに入っていった。
「ねえー奏。ホットケーキミックスどこに置けばいい?」
「あ、そっちに行くからちょっと待ってて。」
鍵を閉め、靴を靴箱に入れて琉夏くんがいるキッチンに向かう。
「えっとね、ホットケーキミックスはここの戸棚に入れてもらえるかな?」
「あいよー。なあ奏、なんかさ俺達、新婚さんみたいじゃない?」
不意を突かれて、手にしていた卵を思わず落としそうになる。
「あっぶな…もう!急にそんなこと言うからびっくりして卵落としちゃうとこだったじゃない。」
「なんで?俺は思ったことをありのままに言っただけだよ?」
「そりゃそうかもしんないけどさ…。新婚さんって響きがさあ…。」
「なーんだ。奏の方が意識してんじゃん、なあ?奏がその気なら、新婚さんらしいことしてみよっか?」
「は…?し、新婚さんらしいことってなに…わ、ま、待って!近い、近いよ。」
目に妖しい光をたたえ、不敵な笑みを浮かべながら琉夏くんと私の距離がどんどんなくなっていく。
琉夏くんの髪が私のほっぺたにかかる。
思わず目を閉じてしまった。
キス…される。