「ちょっと待って、聞き捨てならないんですけど。強いってそこ?真面目に考えた時間返して!」
「はは、ごめんごめん。冗談だよ。よし、水槽の前、お客さん引いてきてるみたいだからあっちに行こうぜ?」
そう言ってスリープをゆっくりと降りていく琉夏くん。
笑って誤魔化した琉夏くんの表情に、一瞬だけ悲しそうな表情が浮かんだのを見逃さなかった。
ゲームを最後までやったから分かる、琉夏くんが負ってる心の傷。
その傷はすべて乗り越えられるものじゃない、癒しきれるものじゃないっていうのも分かってる。
だから…だから、琉夏くんは私のもとに来たのかな。
少しだけだけど、琉夏くんがここに来た理由が分かった気がした。
「おーい、奏。こっちこっち。よく見えるよ。」
さっきの琉夏くんの表情が気になるけど、今はまだそれについて聞くタイミングじゃない。
今日は琉夏くんに「楽しかった」っていう思い出を作って、それを一緒に共有したい。
「はーい、今行く。ちょっと待ってて。」
その決意を胸に、琉夏くんのもとへと歩みよって行った。