long story-trip- | ナノ




飼育員さんに別れを告げ、歩みを進める。

これぞ南国、というような色とりどりの魚が泳いでいるゾーンだったり、在来種のゾーンだったり、パニック映画に出てきそうなとても大きなイカの標本だったりを一つ一つ見て行きながら、美ら海といえばここでしょうというような有名な場所に出る。

有名な場所だけあって、水槽の前にはお客さんが絶えず行き交っている。
少し遠くから見てから近づいて見ようか、と琉夏くんに話しかけスロープになっている通路に他の人の邪魔にならないように立つ。

「わあ…大きい水槽だ。ここだよな、有名な場所って。あっジンベエザメだ。エイも小さい魚もいっぱいいる!へえーみんな仲良く泳いでるんだ。」

「魚に詳しくないけど、ジンベエザメってプランクトンとか小魚食べるんだよね?あんなに大きな体して温和だよねえ。泳ぎもゆっくりだし…見てると和む。ここにだったら何時間も居れる気がする。」

「…なあ、奏。もし、さ、この水槽がいきなり割れちゃったらどうする?」


ん?この問いかけって、水族館デートの時聞いたことあるけど…バッチリの答えってなんだっけ?!
2段目ってことは覚えてるんだけど、肝心のセリフが出てこない。
っていうか、琉夏くんなんでいきなり抜き打ちテストみたいなこと始めちゃうの?

「恐ろしいことサラっと言ってのけるね、琉夏くん。うーん、割れちゃったら…ねえ。世界一の厚さのアクリル板っていうことだし、割れることはまずないと思うから考えたこともないけど…ここにいる人たち全員が助かればいいなって思う。そう思っていれば、そういう状態になったときに、思ってる結果になるような行動をとると思うんだ。まあ、さすがに水には勝てる気はしないけどやってみる価値はあるよね。何が起こるか分かんないし。たとえ他のことが起こったとしても、そう思うよ。」

「…奏は強いな。」

「強いって、私が?そうかなあ…初めて言われたよ。」

「強いよ。だって水に勝とうとか考えられないよ、フツー。溺れちゃうってしか思わないと思うよ。」
             

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