写真をチェックしてたはずの琉夏くんから驚きの声が聞こえる。
え、私の顔…そんなに酷い…?
「ちょっとちょっと、奏!!ほら写真見て!」
「えっ…いいです…だってそんな顔の写真見たくないよ…。」
「はあ?何言ってんの。違う、水槽の方見て、ほら!」
仕方なく、琉夏くんのスラッと綺麗に伸びた指が指し示す箇所を見る。
そこには、水槽の向こうで酸素ボンベをつけダブルピースでほほ笑む飼育員さんが写っていた。
「え…?!私よりばっちりポーズ決めてる…。」
思わず水槽の方を振り向くと、飼育員さんと目が合った。
してやったりというような表情を浮かべてる、はず。
酸素ボンベで顔が隠れてるからちゃんとした表情は分からないけど、あの顔は絶対にしてる。
あ、親指立てて「グー」ってやってる!
琉夏くんの顔を見ると、口を開けてぽかーんとしていた。
私の視線に気づいたのか、こっちに顔を向け、目が合った瞬間、同時に吹き出してしまった。
「ダメだ…なにこのドッキリ。笑いが止まんね。面白いね、ここ。これだけでも、美ら海に来て良かった気がする。」
「ホントに…脇腹痛いよ。サービス精神旺盛だね。何回か来たことあるけど、こんなの初めてだよ。得した気がする。美ら海を選んでくれてありがとうね、琉夏くん。」
私の写真写りなんてどうでもよくなったお礼ってわけでもないけど、さっきの飼育員さんに私も親指を立てて「グー」を返す。
隣で琉夏くんも笑いながら「グー」を返してる。
こういうことで一緒に笑えるっていいな。
そこまで水族館が好きってわけじゃないはずなのに、無邪気に笑ってる琉夏くんを見て、私まで幸せが伝染したようだった。