long story-trip- | ナノ




「えっ…一緒に撮る気だったの?ご、ごめんなさい…本気で言ってました。こういうこと、とんと鈍くて。申し訳ない。」

「奏…謝り方、新名風に言うと『シビィ』って感じ。武士みたくなってる。ついに性別も世紀も超えちゃった感じに…あ!すみませーん、写真撮ってもらいたんですけどー。よろしくお願いします。」

反論する隙も与えず、ちょうど通りかかったお客さんに写真を頼む琉夏くん。
ねえ、私の喋り方そんなに渋い…?性別も世紀も超えるって…それもう私じゃなくなってる気がしてならないんだけど。

「ほら、奏笑って。もーさっきの冗談だから。新鮮で面白いって意味だからね。ほら、もっとくっつかないと入らないって。」

フォローしてるのかしてないのかさっぱり分からない琉夏くんの言葉が腑に落ちないけど…。
そして、琉夏くん近づきすぎじゃありませんか?
か、顔が近いです。腰に手が回ってます。
これは…どこからどうみても、恋人たちの撮られ方になってませんか。


その状況にいっぱいいっぱいになってしまった私は、ぎこちない笑みを浮かべることしかできなかった。
きっと、後で散々突っ込まれるとは思うけど、無理。
カメラのほうに顔を向けられただけでも大金星ですから。

「ありがとうございまーす!」

撮ってくれた人に元気よくお礼を言ってる琉夏くんの声が聞こえる。
鼻歌なんか歌いながら、撮ってもらった写真をチェックしてるのが視界に入る。
私も撮ってもらった写真を見たいけど、今はそれどころじゃない。
とにかく少しでもこのドキドキを沈めなきゃ。

自分を落ち着かせるために、水槽とは反対側の壁にもたれかかる。
ああ、ひんやりしてて火照った頬に気持ちいい。
ムダにドキドキすることばっかりしてくれちゃって。
気がつけばいつも琉夏くんのペースにハマってる。
イヤじゃない。イヤじゃないけど、身体がいくつあっても足りない気がする…。

「うわ!!」
                  

-5/8-
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