いつの間にか蝉の鳴き声が聞こえなくなり、代わりに金木犀の穏やかな香りが舞う今日この頃。開け放った窓から、さわさわと優しい秋風が吹いてきて、あたしはそっと目を閉じてみた。

「なーに居眠りしてんでィ、名前」

パッと顔をあげれば呆れたような、それなのにどこか微笑ましいようなそんな顔をした沖田と視線がぶつかった。

『あんまり心地よかったもんだから』

そう言うと沖田は怪訝そうに首を傾げてやがて、あぁ、と窓の方を見た。その瞬間再び風が吹き込み、彼の横顔を擦り抜けていった。

「…………」
『…………』

今度は二人で目を瞑る。あぁ、何してるんだろう。今日は総悟と勉強するつもりで来たのに。頭では分かっていても、体が、気持ちが言うことを聞かない。それがどうしてなのか、なんて想像できてるんだけど。

「……高校生活最後の秋…か」

ポツリ。その言葉にあたしは、沖田も同じことを考えていたのだと分かり嬉しくなって大きく頷いた。

『そうだね…』
「ちっとばかし寂しいですねィ」
『お、珍しくデレましたね』
「なんでィ、悪ィか」

悪くないよ。だって、それはあたしも同じだから。なんてことない、ただの会話。それすら貴重な時間のような気がして。

急に黙り込んだあたしに心配になったのか、はたまた意図を察知したのか、沖田はゆっくりとあたしのあごを持ち上げた。

「…来年も、再来年も。ずっと一緒にいやしょう」









彼が口付けたのと同時に金木犀を乗せた風が頬を撫でた

そのあとを、静かに涙が伝っていくのがわかった





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恋華様へ相互記念!

現パロ・甘ということだったのですが、甘が全然ないような……すみませんんん!
恋華様も私と同じ受験生ということで、今の自分の心境も交えてこれを書いてみました^^

恋華様のみお持ち帰り、文句を受け付けます!


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