従業員のみ出入りができる裏口の扉を開け静かに閉める。そこで必ず窓ガラスに写った自分の身なりを確認。髪型はおかしくないか、着物は着崩れしていないか。

手櫛で少しだけ前髪を梳いて、最後にニコリと笑ってみる。よし、これでバッチリ。


『沖田さんっ!』

店の前で携帯をいじっている蜂蜜色のもとへ駆け寄る。わたしの声に反応した彼は、柔らかい笑みを浮かべてこちらへ歩み寄ってきた。

『遅くなってごめんなさい!今日は、なんだかいつも以上にお客様が多くって…』
「俺ァ好きでアンタのことを待ってんだ。謝る必要なんてありやせん」

そう言ってせっかく梳いてきた前髪をクシャリと撫でる彼、沖田さんは、わたしの自慢の彼氏である。わたしがこの甘味処で働くようになって数ヶ月が経った頃、偶然やって来た沖田さんに一目惚れをしてしまったのだ。

初めは爽やかで、とても優しい印象が強かったが、話していくうちに新たな発見をするようになった。例えばサボり癖があって、よくここへ立ち寄っては上司の方に怒られているところを見かけたり、少し意地悪で、同じくここの常連である銀さんを困らせていたりする。

ここだけ述べれば決していいような印象は抱けないが、一つだけわたししか知らない彼の顔があるのだ。それは…


「名前、」
『へ…わわっ…!』

腕を引かれ、抱き寄せられたかと思えば、そのすぐそばを自動車が通りかかっていくのが見えた。そしてそのまま沖田さんは道路沿いを、わたしは歩道側を歩くことになった。

「どっか擦ってねェかィ」

心配そうにわたしの顔を覗きこむ彼が、どうしようもないくらいおかしくて愛しくて。ふふ、と思わず笑いを溢せば、眉間にシワを寄せ、怪訝そうに首を傾げた。

『ふふ…ごめんなさい、沖田さんが守ってくれたお陰でなんともないわ』

どんなに小さなことからでも、絶対にわたしを守ってくれるところ。なによりもわたしのことを考えてくれているところ。

まさしく過保護という言葉がぴったりだけれど、それが彼の愛情表現ならば、わたしはそれだけ愛さていることじゃないか。

そんなの、世界一…ううん、この世で一番の幸せ者は、きっとわたしだよね。



「んじゃ、どこに行きやしょうか」

わたしは沖田さんの手をとって、彼にしか見せないような甘い笑みを向ける。


『沖田さんとご一緒なら、どこへでも』



あなたが驚いた顔をした後、ゆっくりと目を細めるこの瞬間がたまらなく嬉しくて。








(わたしも貴方に負けないくらいの愛をあげられてるって思うから)




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日向様へ!
甘…にしてみたつもりですw
いざ意識してみると意外と難しくて何度も書き直しました(´-ω-`;)
こんな駄文で宜しければぜひもらってやって下さい(土下座)

椿


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