ストローで氷をつつけば、カラン、と渇いた音が鳴った。それが妙に心地よくて、目を瞑りながら今度はかき回してみる。



そろそろ潮時だろうな、とは薄々感づいていた。多分、それは向こうも同じで。まったく、変なところで気が合うんだからいやになっちゃう。

あの日もわたしの方が先に着いて、こうして氷をカランカランと鳴らしていたっけ。そんなわたしを見たあなたは、ガキですねィ、と微笑んでみせたよね。

もはやクセになっていたから、何も言えなくて、いつもいつも言い負かされっぱなしだった。


別れを切り出したのは、わたし。最後くらいこっちが言ってやろうとも思ったし、あなたの口からそんな事聞きたくなかったから。

向こうも予想していた通りだったのか、すぐに二つ返事で返ってきた。

『別れても…わたしたち、友達だよね?』
「当たり前でさァ。むしろ親友だったり」

それを聞いてホッとした反面、なんだか複雑な気持ちになった。昨日…いや、昔まで"本当の"恋人同士だったあなたと、今から親友になるのだ。

じゃ、と言いながら席を立って歩いていくその後ろ姿を、わたしはただ茫然と見つめることしかできなかった。



「名前ー?そんな難しい顔してどうしたアルか?」
『……ん、ちょっと昔のことを思い出してたの』


――カラン、カラン、
つついてみれば、やっぱりあの時と同じ渇いた音がした。












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