家から歩いて数分の所にあるコンビニ。

ある曜日に、ある時間に決まって私はそこを訪れる。

なぜなら、出会ってしまったのだ。王子様に。















目の前には今日の日付に赤ペンでハートマークが描かれたカレンダー。

たちまち吊り上がる口角。おっといけない。これから"彼"に会いに行くのだから、と慌てて皺を延ばす。

500円玉を手に収め、勢いよく家を飛び出した。


店特有に造られた重いドアを開く。それと同時に…

「いらっしゃいやせー」

あの気だるそうな間延びした声…いた!!力を抜けばすぐに緩みだしそうな頬を気にしつつ、雑誌コーナーへ歩を進める。


……うっしゃぁぁあぁ!!今日はあの人がレジだァァ!!ちょ、やば、手汗かいてきた……。

浮き足立った気持ちを押さえ込みながら毎月買っている雑誌を探す…………が、

『え…無い…』

うっそォォ!?あ、実は他の雑誌と重なっていたよ的なオチ……でもなかったァァ!!

『(…どうしよ)』

お菓子コーナーへと向かいかけて、足を止めた。そうだ、今ダイエットしてるんだった……てことはジュースもデザートも買えないのか。


わ、マジで困った。これじゃ私、王子見に来たって思われんじゃん(いや確かに半分以上がそうだけど)。


『(くっ、今日だけお菓子…「オイ」

え。

目を見開きながら振り返る。と、そこにはあの王子が立っていた。しかも…

『その雑誌…』

彼の手には私の探していた雑誌が。

「…アンタ、いつもこの雑誌選んでただろィ…残り一冊だったから取っておいたんでさァ」

「感謝しなせェ」と言って私の手の平へと移される、それ。一気に熱が顔に集中していくのが分かり、悟られないように頭を下げる。

『ああありがとうございます!!』

「なに吃ってんでィ」

フッと彼が笑い、私の顔は茹でダコのように真っ赤になった。その笑顔はアウト、死ぬゥゥ!

「ホラ、会計しやすぜ?」

慌てて懐から500円玉を取り出す。それを見てまた彼は笑った。

「いつも500円しか出してやせんよねィ」

"いつも"……?彼に会計をしてもらうのは初めてなのに、どうして知っているの?

「まだ分かんねェのかィ…」

『う、はい』


そう言えば、「どうぞ」とお釣りとレシートを渡される。

「レシートの裏、見てみなせェ」

言われるがままに裏を捲る。

「バイトの時とかは出来やせんけど」


口元が綻ぶことにすら気づかずに、ただただ文字の羅列を見つめる。

『…ありがとうございます!!』

するとさっきとは違って、いたずらっ子のような笑顔を向けてきた。

「今度はハッキリ言えやしたねィ」






(レシートの裏には、)
(沖田総悟という名前と彼のアドレスが)








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