いつから、なんて覚えていない。気が付いたら貴方に惹かれていたの。
でもそれは許されない事。なぜなら私は、遊女だから。
梅の花よ、吉原遊廓のとある一室。ほんのり灯りが漏れる襖には、寄り添う二つの影が浮かび上がっていた。
『……』
「……」
そこに会話など無く、沈黙が続いているだけ。だが苦ではない、寧ろそれが心地よかったりする。
女は男にしがみ付くように、男は女の肩を抱いてポン、ポン、とリズムよく叩く。
チラリと時計に視線を移した男は、「そろそろ帰りやす」と言って立ち上がった。
『……次はいつ来てくれるでありんすか、沖田はん』
縋るような瞳で沖田と呼ばれた男を見つめる。沖田は彼女を一瞥し、優しく頭を撫でた。
「本当は毎晩来てやりてェんですがねィ…土方の野郎が煩くて」
その言葉にどきり、と心臓が跳ね上がった。毎晩でも?そんなに私に会いたいなんて……
嬉しくて涙腺が緩む。気を抜いたら涙が零れてきそうだ。
『ふふ…沖田はんも大変でありんすなぁ』
すると沖田は真顔になり、いきなり私を抱きしめた。応えるように腕を回す。彼の心臓がドクドクと忙しく鳴っているのが分かった。そして呟くのだ。源氏名では無く、私の本当の名前を。
「名前…愛してやす」
『あちきもお慕い申しておりんす……総悟はん』
思いを伝え会うこの瞬間が一番幸せで、一番残酷。
沖田は彼女からゆっくりと離れ、言葉を交わす事なく部屋から出て行く。見送る為に玄関まで着いていき、頭を下げる。次第に後ろ姿は遠ざかり、やがて誰もいなくなった。
部屋へ戻り、襖を閉めて座り込む。いつも彼の匂いが消えてしまうまで何をすることもなく、ただ茫然と一点を見つめるのだ。
突然ツー、と一筋の雫が頬を伝った。それが合図かのように、一斉に流れ出すそれ。
私は一生自由にはなれない。たとえ彼と結ばれていようとも。客が来れば盃を交わすし、床を共にする事だってある。
そんな汚れた私を好きだと言ってくれた沖田。そんな彼に、私は何一つ返せやしない。
次から次へと涙が零れる。会いたい、あの人に。ずっと隣に寄り添っていたい。
どうか私の恋心を隠してだが所詮、そんな夢など抱くだけ無駄なのだ。
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うわぁぁあぁ!ダメだ、駄文すぎる!!
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