『無い……』



顔から血の気が引いていく。目の前が真っ暗になった。




の予定運命




終わった。ああ終わった。

クシャクシャに丸められた受験票に目を移す。たった今。そう、たった今から私は浪人が確定してしまった。

一体、私の今までの努力は何だったのだ。行き場の無い哀しみと悔しさと腹立たしさに堪らずクッションに顔を埋める。


親も私を気遣ってか、今は外出しており家には私一人しかいない。

どうせ誰もいないのだ。今のうちに思いっきり泣いてしまおう。


『…っう、ひっく…ああ』

声を上げて泣きじゃくる。すると、携帯の受信ランプが光っている事に気が付いた。


涙を拭いながら受信ボックスを開く。誰かと思えば、なんと…

『おき…た……!?』

目を見張る。受信ボックスには、確かに私の思い人である、"沖田総悟"と表示されていた。


慌ててメールを読み始める。好きな人からメールというのは、やはりいつでも緊張するわけで。携帯を持つ手の平が微かに汗ばんでいた。



From  :沖田総悟
Subject:無題
──────────

銀魂公園に来い

----END----



何とも彼らしい、簡潔なメールだった。

何故?と考えるより先にコートと家の鍵を引っ掴み、銀魂公園へと走った。



『ご、めんっ!』

息を切らしながら謝れば、いつもは悪態をつく筈の彼は「別にいい」と許した。

その態度に益々怪訝になる。今日の彼は優しい。小さな変化にでも気付く私は相当沖田に惚れ込んでいるらしい。


『…で、どうかしたの?』

「アンタ、大学落ちたんだろィ」

『っ!?…なん、で』


うろたえる私に、彼はやっぱり、と言って息を吐いた。


「俺は上京しやす」

その言葉に胸がズキンと酷く傷んだ。沖田は警察官になる為、近藤や土方達と上京するのだ。今年の春から、もうこのように会う事は無いだろう。


『知っ、てる……頑張って、ね…』

涙が溢れて、拙い言葉になってしまった。ちゃんと伝わっただろうか。


「あァ。だから……」


その瞬間、温かいものに包まれた。私は今、沖田に抱き締められて…

『へ?え、お、おき……』

「アンタは将来、俺の妻になる事。必ず迎えに来やす。だから、いつまでもくよくよしてんじゃねェ」

突然すぎる展開に、頭の中が真っ白になった。

「返事は?」


『…はい!』


今度も考えるより先だった。





(数年後、教師になる筈だった私は彼の妻になった)







|



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -