小説 | ナノ
3月に入ったばかりのとても晴れた、そして珍しく春らしい暖かな日、今日はこの多色村の高等学校である、多色北高等学校の卒業式の執り行われる日であった

卒業式のあと、みんなが晴れ晴れと笑い、もしくは清々しく泣いている中
ただ一人、思い出の部屋から、門を過ぎ別れを惜しみつつも帰っている生徒たちを見つめる

窓の外の門までの道のりは早咲きの薄いピンクと白の合わさった桜の花の色で飾られている
暖かい春の日差しの中で目の前に手をやり眩しさを回避する
しかし、ゆっくりと太陽に接近していた雲が彼の左手の仕事を颯爽と奪ってしまう

そのまま雲の影に身を隠して、この学校で過ごしてきた3年間に思いを馳せる
学年行事では、生徒会長としてみんなのために見えないところでも尽力してきた
人の役に立ちたいと、そう思ってよりよい学校作りを頑張ってきたつもりだが、果たしてそれは実現できていたのだろうか
そう自分に問いかけながらも、しかし、自分自身の100%の力を出しきって何事にも挑んできたので、後悔などはなにもないように思われた


「あ!灯センパイみっけた!」


後ろから明るい声が聞こえて来た、灯くんもよく知る後輩の真昼の声だった
真昼はとたとたと灯くんに駆け寄ると彼の腕をつかんで楽しそうに振った
卒業式ではボロボロと涙をこぼしていて、今も少し目が赤いというのに、なぜか今はとても楽しげである


「真昼くん、どうかしたの?」


そう尋ねるとこれから、村中総出で卒業祝いのパーティーを行うらしい
一人でふらりと姿をくらましていた灯くんを1年生たちで探していたそうだ


「センパイ、生徒会室にいるなんて...やっぱり会長だし、一番思い出のある場所ですもんね!」


真昼は屈託のない笑顔でそう言った
少し戸惑いがちに灯くんは聞く


「真昼くん、僕はしっかりと生徒会長として学校のためになにか出来ていたかな?」


少し目を伏せて言う先輩の姿に真昼はきょとんとした
そしてすぐにははっと笑うと言った


「それはセンパイ、なにかもなにも、何もかもじゃないですか!」


センパイがいつも学校やみんなのために色々してたの、みんなちゃんとわかってますよ!
俺でもわかってるんだし...、と最後は少し小さめの声で付け加えて真昼は言った

その言葉に、自分の3年間の努力は皆にも認めてもらえるものだったのだと嬉しさが込み上げてきた
目の縁に涙が押し出てこようとしたが、ついさきほど号泣したばかりの、でもこの後のパーティーを楽しみにして泣き止んでいる後輩の前で泣くわけにはいかないと思い止まらせて、そのまま無理矢理微笑んだ

ほんの少し、涙が目の縁にのっていたが、真昼の方からは灯くんは逆光になっていてよくわからなかった


「ありがとう、真昼くん」


そう告げると、彼は照れたように頬をかいた


「おやおやこんな所に居たのですか?」


真昼が背を向けていた扉の方から、柔らかな声がした
真昼は振り返って声のした方を見やると、この村の村長である多色さんが優しい微笑みを浮かべて立っていた


「多色さん!」


真昼がそう言って駆け寄ると、多色さんは真昼にパーティーの準備で蓮華さんが忙しそうにしていたことを伝えた
すると、真昼は灯くんにまたあとでという旨の言葉を短く告げると、すぐさま駆けていった


「ずっと生徒会室にいたのですか?」


真昼が出ていって、1人増えた室内の人数はまた2人になった
多色さんは近くにあった椅子に腰かけて、ゆったりと問うた


「はい...なんだか名残惜しくて...」


そう少年、灯くんは素直な気持ちを言葉にした
3年間、ここには3年間の、しかしそれ以上の想いや価値がある
夢を叶えるために日々クラスメイトと共に努力をしてきた
タシキタの3年生は皆学力が高く、切磋琢磨しあうにはとてもいい環境であったように思う
彼らがいなければ、ここまで頑張ってこれなかったかもしれない
そして、彼はその努力の結果として春から医学部生として夢に向かって突き進んでいくのである


「なにも惜しむことはありませんよ」


変わらずに微笑みながらそう多色さんは灯くんに言った
これが最後ではないのですから、そう後から付け加えて


「灯くんは夢のためにこの村を出ていきます、しかし、だからといってこの村で過ごしてきた全てがうしなわれるわけではありませんよ」


ここはいつまでも変わることなく君たちの故郷です
そう、最後に付け加えると卒業後の村をあげての送別会がはじまるからと灯くんを手まねいた


そうは言われても、理解することは出来ても、しばらくはもうここに戻ってこられないのだろう...


そう思うと、やはり名残惜しく感じた
しかし、これからの未来のため、夢に繋がっている明日のために、もろもろの想いをこの生徒会室の窓に残し

灯くんは多色さんと共に今までお世話になった先生方や共にこの学園生活を営んできた級友たち、そして村のみんなが待つ村長さんのお宅へと舞い散る桜道を歩み向かっていった

go out into the world...



卒業式後のお話です〜〜(><)
巣立ちをテーマに書いてみました!!!
お茶会にて、灯くんは卒業後お医者さんをめざして頑張るというようなことをうかがったのでちょっと取り入れてみました!
口調とかキャラが違う!
といったことがございましたら、ご連絡ください!!!
改正します!゜゜(´O`)°゜
灯くんは学校のために影ながら奮闘してたりしたらいいなぁ〜〜とか、人一倍学校を愛してたらいいなぁ〜〜みたいな私の願望がつまっております...(*´ω`*)
ではでは、本当に描かせて頂きまして、ありがとうございました!!o(^o^)o


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