真也【高校2年生】

引っ張られながら2人が帰宅したあと、店長が気まずそうに俺に話しかけてきた。

「君の親にも連絡したんだけどね、もう戸籍からも抜いたし家族じゃないと言われたんだ。迎えには来ないって」

店長は気を遣ってか、俺に飲み物とお菓子を渡してくれた。本当は賞味期限切れてて捨てなきゃいけないんだけど内緒だよ、と渡してくれた。俺は本当に捨てられたんだ。その事実に目から涙があふれ出していた。そんな俺の背中を店長はさすってくれた。

「昔な、お前に似た奴を面倒みたことあるんだよ。親に捨てられてどこにも居場所がないって男の子をね。万引きしてるところをちょうど見かけてさ、注意して家に連絡しようとしたら『俺んち誰もいねぇから意味ねぇよ。型をつけるなら俺を雇ってくれ』って。言ってることめちゃくちゃだけど面白いやつだなと思ってそいつを雇ってやったんだ。そしたら最近、仕事見つけられて家も借りられるようになったからって辞めちまったんだけどな」

店長は懐かしそうに言いながら俺を見た。さっきとは違う優しい目で。

「どうだ?お前もうちで働かないか?」
「真也……!!!って店長!!!!ご無沙汰っす」
「えっ、さっきの話の人って…」

先輩の顔を見た店長は嬉しそうな顔をして俺の隣の席に座るように促した。と同時に俺は先輩からゲンコツをうけた。

「お前!!!!俺みたいになるなってあれほど言っただろ!?!?さっき彼女がここのドラックストアでお前見かけたって言ったからすっとんできたらこのザマかよ」

「そんなお前も少し前まではこの子と同じだっただろ?どうだ?更正の含めてコイツうちで雇いたいと思ってるんだけど」
「俺の方からも頼みます!!!すんません、店長よろしくお願いします!!!…お前も頭下げろ」

急に立ち上がって直角ってほどに腰を曲げて頭を下げる先輩。俺もそのあとに続くように頭を下げた。たぶん学校にはもう戻れないだろう。

「ふ、ふつつか者ですが……よろしくお願いします!!!!」
俺は次の日には学校には退学届を出して、先輩もお世話になったというドラックストアで働くことになった。店長にまずは社会人になるということを聞いて、パートさんやアルバイトの人から業務の内容を教えてもらい、接客の態度なども教えてもらった。
職場の人たちに恵まれて、俺は自分に自信を持てるようになり、小学校や中学の頃のオドオドした自分でもなく高校にいた頃の関わりにくい自分でもなく、明るくて話しかけやすい人に変われたのだ。これも俺を引き取ってくれた先輩や雇ってくれた店長のおかげだ。

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