そんな期間がしばらく続き、テストを迎えてしまった。テストは仕方なく教室で受けることになり、気分が上がらない中
教室へ重い足を運んだ。私が教室に入ったのをネタにしてるのかいつもの連中はクスクス笑っていた。テストが終わってから
また保健室で勉強する日常に戻った。いつものように翼から借りた授業のノートを写してると内線が鳴り響く。
保健室の先生がとると、私宛に担任からだというので代わった。
「お前、いつまで保健室で引きこもってるつもりなんだ?」
「えっ、先生今までのこと何も知らないんですか?」
そう言うとため息をはいて先生とは思えない言葉を発した。
「音無は元気が取り柄だろ。そんなことでへこんでるなんてお前らしくない。それに、神原は逆にお前に色々されてるのに頑張って
学校に来ていると言っていたぞ。早く教室へ戻って来い」
電話越しで泣いていたのを察したのか保健室の先生が私から受話器を取り上げ、
「音無さんは胃潰瘍でしばらくまだ休みます。それにクラスのことは他の子達にも聞いた方がいいと思います!!」
そう言って叩きつけるように受話器を戻した。何かを思いついたのか、先輩3人が授業終わったら教室に行こうと言いだして他のクラスの
保健室登校の子に応援されながら自分の教室へ向かった。廊下を歩いてる時はドキドキした。
授業が終わると同時に先生と入れ違いに先輩が教室へ入っていく。異様な空気に静かになる。その後ろを私がついて歩くと
翼が一目散に駆け寄ってきた。そして先輩は大きな声で叫んだ
「神原ってどいつ?」
「はぁい、私です」
猫なで声で気持ち悪くなるが、私は今までの気持ちをぐっとこらえた。
「私ぃ、先輩と仲良くなれるなんてぇ〜めっちゃ嬉しいですぅ」
「やっぱキモいわ。無理。よくこんなのが読モやってんな。現場でも浮いてるんじゃね?」
「えっ」
先輩の言葉に他の2人の先輩は大爆笑、クラスメイトはざわついていた。もちろん結衣本人は顔が引きつってる。
お腹を抱えて爆笑していた先輩が結衣の前で立ち、
「アンタ、先輩たちに嫌われてるの知ってる?性格ブスの読モって。私の知り合いにアイドルやってる子いるけど、その子の方が何倍も
可愛いから。いや、茉由のが何倍も可愛いわ」
「私達が何も知らないとでも思った?それにこの間のテストの点数、ネットに載せてたよね。その時点でバカ確定だし、茉由なんて
授業でれなくてもクラスで2番目の成績にはいったんだよ。もう比べるもの何もないね?かわいそうに」
さすがに耐えられなくなった結衣は泣きながら発狂した。そうすると先輩は結衣に目線を合わせて冷たい視線を送った。
「なんでアンタが泣くの?騒ぐの?そうしたかったのは茉由だろ?違うか?」
「……ごめんなさい」
「私じゃなくて茉由に謝るんだろ!?」
そう言って近くの椅子を蹴飛ばし、結衣を威嚇した。結衣は悔しそうにしながら私に向かった。
「…本当は茉由が羨ましかった。クラスの中心にいて、男子からもちやほやされて、友達たくさんいて…本当にごめん」
「これは許せることではない。ネットに書き込んだこと、私の上履きの落書き、そしてこれからのクラスメイトの反応。
それらを結衣は全部背負って行かなきゃいけないんだよ。それほどのことをしたの」
そこから結衣は泣き崩れて、あとはクラスで解決しなさいよと先輩たちは去って行った。次の日から結衣は大人しくなったが、
やはりクラスの空気に耐えられず退学。取り巻きも不登校や転校をした。担任もちゃんと処理しなかったということで保健室の先生
から校長先生への報告があり、謹慎処分を言い渡されたそうだ。私はあれから教室でちゃんと授業を受けられるようになった。
翼も前以上に私を心配してくれたが、私はもう大丈夫。
クリアファイルから紙を出したら封筒が出てきた。そういえば、入学式の時に樹から手紙がきたんだった。みんな元気にしてるかな。
私はあの頃より強くなれたかな?手紙を読むと、樹が学校の先生を目指してることが書いてあった。私もノートを切り取って、返事を
書いてみた。樹には届かないけど。
『私は、カウンセラーの先生になる!!』
「茉由らしいじゃん」
「でしょ?」
翼が笑いながら言った。私も笑顔で返して先輩と約束した放課後のタピオカの時間を待った。