「樹、起きなさい!!!!」
母親の声で俺は目が覚めた。目をあけると見慣れない白い天井で、体が動かなくなっていた。
所々に包帯や絆創膏、湿布などが貼られており、ようやく状況を理解した。しばらくするとお医者さんが入ってきた。
「さっき道ばたで君が倒れてるって119番通報があってね。その場にいた他校の生徒たちは警察がとりおさえたみたいだよ。
命には別状はないが、しばらくは安静にしてね」
「はい、ありがとうございます」
その瞬間、頬に痛みが走った。何が起きたか全然分からず、俺は母親を見るしかできなかった。お医者さんもびっくりした顔で
母親をなだめた
「またアンタのそんなくだらないことで……受験勉強の時間が大幅に減ってしまったじゃない!!!!遅れはどうやって取り戻すのよ!!!!高校失敗したなんて言ったら恥さらしもいいとこだわ!!!!」
俺は今までの感情が爆発し、とうとう母親に手を出してしまった。
「俺は……母親の、お前達の人形じゃない!!!!何しようと勝手だろ!?心配すらせずに……息抜きすらさせなくて子供がノイローゼになってるのも
分からないのか!!!!お前は……母親失格だ!!!!!!」
俺はそう言い残し、病院を抜け出した。母親は泣きながら叫んでいたがそんなの構わずに。ずっとずっと走り続けた。ここはどこだろう?
ずいぶんと病院から離れてしまった。どうしようかと、公園のベンチに座っていたら聞き覚えのある声が聞こえた。
「あれ、樹じゃね?久しぶりだな」
「…琢磨?お前、こんなところで何してんだよ」
そこにいたのは小学生の時以来の琢磨だった。どうやら琢磨はこの周辺に移り住んだようで、今日は琢磨の家にお邪魔することになった。
「あら、樹くん久しぶりってどうしたのその傷!?」
「ちょっと色々ありまして…すみません、今日はお世話になります」
「いいのよ、小学校の頃の仲良しに会えたんだから。ごゆっくり〜」
おばさんに挨拶してから琢磨の部屋へ入った。琢磨は背は大きくなったものの、見た目はそこまで変わってない。猫目に八重歯。
短髪でいかにもスポーツ少年のままだ。
「その傷、誰かと喧嘩したのか?」
俺はうつむいてしまったが、ちゃんと話さなければと思い視線を琢磨に向けた。
「今日家に帰ろうとしたらリンチにあったんだよ。隣の学校のバスケ部の連中に」
「おい、隣の学校って」
「そう、お前が通ってる学校のバスケ部だ」