繋がれた道


「シュガさん?」

携帯から顔を上げると、予想以上に美形の男がそこに立っていた。

「初めてお会いしますね、ジョングクです」

「あ……よろしく」

声だけなら何度も聞いた。優しい声で有無を言わせぬようにあれこれ命令して俺を辱しめる声を。そんな彼に会ってみたいと言われたのが一ヶ月前。一度は断ったものの、こうして会いに来てしまった。しかも成人してる癖に女子の制服なんていう格好をして。周りに男だってバレにくいように化粧までした。

待ち合わせは駅の改札。希望したのは痴漢プレイ。恥ずかしい、嫌だって思う事を要求されると思うと興奮する。人に見られたらって考えるだけで怖い。手を繋いで貰ってホームにやってきた電車に乗り込んだ。扉が閉まって確認すると結構混んでいて、これなら周りに気づかれずに出来そうだと思った。

後ろから手が伸ばされてスカートを捲られる。下着は命令されて履いてないからスースーして心もとない。つい喜んでしまって前側が膨らみそう。けど期待に震える場所は触ってくれなくて後ろ側に指を突っ込まれる。

「ふっ……んぁ」

関節がずぶずぶと入ってきた。こんな事してるっていうのがやばくて、余計に感じてしまう。ちょっと入れられただけで達しそうだ。潤滑剤は会う前に塗り込んできたからその音が少しだけくちゅくちゅとする。

「こんな格好して、男に触られてんのに興奮しちゃうんですね、可愛い」

内側を引っ掻くみたいにして擦られた。馬鹿みたいに敏感になって中を蠢く指がかき混ぜるのをただ黙って耐える。嫌、けど嫌じゃなかった。俺はおかしい。変なんだ。普通じゃない。

「誰かに見られるかもしれないのに女みたいにひくついちゃってますよ。前もほら」

注意を促されて前側を見ると前のめりになって立っているから分かりにくいがスカートが少し不自然に持ち上がっていて自分の熱が主張しているのが見えた。見られるのは恥ずかしい、まずいとそう思うと余計に期待して痙攣でも起こしたようにブルッと身を震わせてしまった。次の瞬間にはスカートに漏らしたようなシミが広がっている。

「あ……っ……や、嫌だ……」

ぎゅうっと濡れたのを隠そうとしてスカートを掴んだ。こんなにすぐに達するはずじゃなかったのに。

「次の駅で降りましょうか」

指を引き抜いて後ろから囁かれる。首だけ動かして必死に頷くと、開いた扉からホームへおりると俺をまわりから隠すように引き寄せて歩いてくれた。意地悪な癖にこういう所は優しくて複雑な気分だ。

駅のトイレに連れていかれたが個室まで一緒についてくる。着替えたいだけなのに。

「するのはホテルだろ、こんな公共の場でやるなんてさすがに」

「嫌ですか?」

嫌か、って。嫌な事をされるのが良いんだってわかってる癖に。渋々を装ってタイツと、それから下着を脱いだ。自分で汚してしまったからもうベトベトになってしまっている。それから窮屈な個室の中でなんとか壁に手をつくとスカートをたくしあげて腰をジョングクに向けた。

「くっ……ふっ……っ……んっ」

突き刺さるみたいに侵入してきて圧迫してくる。苦しいのもすぐに快感に変わってぱちゅっ、ぱちゅっとぬるぬるとしたのがトイレに響いた。

「そんなに音立てたら周りに聞こえちゃいますよ」

「俺が、出してるわけじゃなっ、いっ……んっ!」

乱暴に奥を突かれてびくりとした。大きい声が出そうになって慌てて唇を噛んだ。

「……んあっ、ふっ……くぅっ……んんっ……!」

奥まで入ってくる度にどうしたって反動で声が出る。少しでも声を抑えようとしていると扉が開かれて足音が二人分入ってきたのがわかった。思わず後ろを振り返れば、片手は腰を掴んだままもう片方の手でしぃーっとポーズを作るジョングク。やめる気はないらしい。

「や、やっ……ん……っ!!」

容赦なくひたすら奥ばかりついてくる。殴って止めようとした手は捕まえられて片腕は後ろに引っ張られ、片手は壁についたままでジョングクにされるがまま。

「ひっ……んあっ……っ……やめ……んっ」

ガタガタ激しい音立ててやってるんだから声を抑えていても無理があった。入ってきた足音は既に止まっていた。

「おい、中でヤッてんじゃね?」

「ほっとけよ、面倒くさい」

ダルそうな男と軽薄そうな声が聞こえた。若い男の二人は俺達が乱れている間にも平然と用を足している。

「んっ……やだ、嫌だっ……あっ……っ……ぐっ……」

「騒がれなくて良かったですね」

「良くないっ……いっ……やっ、やあっ……んっ」

一瞬緩めていた動きを再開して、ぱちゅんってまた内壁をかき分けて擦っていった。

「人に聞かれてるのに興奮して……っ……はぁっ……駄目じゃないですか……っ」

「い、言うなって……ちが……っ……う、からぁ……んっ……あっ、あっ……っ……んっ」

まだ脱いでいなかった上をジョングクがボタンを外していく。はだけさせると、ぺたんこの胸元が顕になった。女にするみたいに乳首を捏ねられてくすぐったさで身を捩った。

「そんなとこ、触ったって……あっ……ん……あぁっ……ひぁっ、ん……そこじゃな、いっ……やだ……ああぁっ、あっ、んっ……あっ……」

やっぱり女の代わりだよな。俺、胸ないのに。外見だけ真似してたってやっぱりそこはどうしようもないし。ジョングクの望み通りになるように頑張ったけど無理だ。身体の物足りなさにがっかりされるんじゃないかって不安になる。他の部分でなんとかしなきゃって焦った。

「あっ、あっ、ん……ひゃっ、ああああぁっ、んっ……な、なぁ……っ……気持ちい?……あっ……あっ、ひぁっ……」

少しでも圧がかかるようにって力を込めていくとずちゅっずちゅって入ってくるのが質量を増していくように感じてちょっと安心する。すぐにぬるぬるしたのが後ろから流れてきて足に伝った。俺ので気持ちよくなったんだ。されてばっかりじゃない。

「……っ……駄目、これじゃ足りないです。ねぇ、シュガさんだって……もっと刺激的な事したいでしょう?」

悪戯っぽく耳を寄せて囁くと身体をふわって抱え上げられて、便器の上に座るジョングクの膝の上にのせられる。背中側に彼がいて、俺が扉の前に足を開いて座っている形になった。腕が扉側に伸ばされるのを横目に、また固く脈打つ熱がずぽってはいってくる。

「んっ……はぁっ、あああっ、っん」

はいってきてそれどころじゃない。なのにガチャリと鍵の開くのを呆然と見ていた。ジョングクが開けちゃったんだ。軋みながらゆっくり開いていくのを止めることもできない。そこには先程の男達がニヤニヤしながらこっちを見つめてる。ずっと黙ってそこにいたんだ。悪趣味な奴。

「見ないで……見んなっ……ああぁっ、んっ……やっ、やだぁっ、ジョングガ……はぁっ、はっ、ん……ひぁっ」

ずぷずぷくわえこんでいった。見られているのに腰は止まらなくってそのまま揺すられる。きゅうきゅうジョングクのを締め付けてんのも、喜んでいるようにしか見えない表情だって全部丸見えだ。

「やだって、もう、見られてんのにやっ……ああぁっ……んっ、見られてるからぁ、あっ、あぁあああぁ……っ……んああっ」

「ちょあ、あああっ……んはあっ……んっ、あぁっ、あっ、あっ、あっ、んっ……はあぁっ、あぁっ」

下から突き上げられて身体が跳ねる。奥までガツガツと勢いよく突かれているうちに段々頭がぼーっとするようになって、痙攣でも起こしたみたいに身体を上に伸ばして引き抜くと同時にスカートはまた新たな染みを作っていた。

「はぁっ……ん、くっ……」

「勝手に抜いちゃ駄目じゃないですか」

「んっ、悪い……っ、はぁ、はぁ」

行為に夢中になっているうちにあの観客達はいなくなっていた。完全に濡れて染まったスカートをどうしようかと思案していたら、近くのホテルに行って着替えようと誘われた。着乱れをなおしてから、スカートを隠しながらジョングクにくっついて徒歩五分のいかにもな、そういうホテルに向かう。

部屋に入ると派手な看板だった割には落ち着いた内装が目に入った。ベッドを上品な照明が薄暗く照らしている。

「着替え持ってきたのでお願いします」

ガサゴソと鞄の中を漁っていたジョングクから紙袋を受けとるとそこにはフリフリのメイド服とチョーカーが入っていた。絶句したが、期待に満ちた目を向けられて渋々承諾する。

ぷつん、と一つ一つボタンを外して上を脱いで、その着替える様子まで全部見られて。スカートが床にストンと落ちて広がれば、もう緩く起き上がっているのが剥き出しになっているのが露になってしまった。フリフリのついたメイド服に袖を通すと、黙って見つめたままのジョングクを誘うためにスカートの端と端をつまんで後ろを見せびらかす。

「ジョングクのお、おちんちんを。ナカに……い、入れて?」

息が震える。興奮と緊張のその両方だ。でもジョングクは襲って来ない。また鞄を漁ったかと思うと、取り出したのはビデオカメラ。レンズがこちらに向けられてびくりとなる。これから全部が記録に残ってしまうんだ。恥ずかしい、俺の全部が。唾を飲み込んでまた続ける。

「俺を犯して、ジョングク……」

スカートを捲られて秘部に指と一緒に熱を当てられるとまた突き上げられたい衝動に駆られた。触れたまま腰を揺らしていざなう。触れていたのがまた硬くなってくると、ジョングクはついに欲情にまみれた俺を強く打ち付けた。

「はああっ、ああぉっ、ジョングクのおちんちん……来た、あぁ……あっ……あっ……んっ」

彼の要望は世界に一つだけの動画を撮影する事だった。所謂ハメ撮りというやつだ。ジジ、と小さな機械音が後ろ側から届いた。

「どうですか、はぁっ、教えてくださいっ……はっ、ほら、カメラに」

「俺の中、ジョングクの……おちんちん、が、あぁっ、ギチギチに入っててっ、あっ、あっ、気持ちい……んっ、もっ、おっきく……ああぁっ」

自分で自身のものを擦りながら後ろから突かれて、実況する。声を発する度に中のモノが存在を主張してきては内側を犯していった。

「はぁっ、カメラに、撮られて。んっ……っ、女装までさせられて年下に後ろ犯されてんのどんな気持ちですか?」

「そんなの、撮られんの恥ずかしいし……んっ、女装は嫌だ、あぁっ、あっ、んっ……でもジョングギが女とヤリたいなら……俺も我慢するから、ああぁっ」

伸びて、ぴんと張って栓が抜けるように前にへたりこむ。もう女装やめましょうか、なんてジョングクが呟いたかと思うと服をするすると脱がされた。ウィッグもとられて、ありのままの姿の俺がレンズには映っている。

「なん、でっ。女じゃないと、気持ち悪いだろ?……男の姿、お前に、あぁっ、見られたら、んっ……あっ……あっ……んぁっ」

「はぁっ、違いますって。はっ、あっ……男が、いいんです。ほら、男の姿で反応してるって、わかるでしょ。シュガさんがいいんです」

言うとおり、中に沈みこむ熱はぴくりと脈打っていた。自分がいいんだというその声にドキリとして胸が締め付けられる。男でもいいのか?本当に?

ずっと女装がいいという話を聞いていたから女が好きなんだと思っていた。気軽に遊べる相手としてただ自分を利用しているのだろうと。でも、そうじゃなかったなら。そうやって期待してしまいそうになっている俺に追い打ちをかけるように囁かれる

「シュガさんが……好きなんです」

「俺も、んっ、はあぁっ……あっ、あっ、あぁっん……好きっ……はぁっ、あっあああぁ……あぁっ」

奥に突き上げられては反動で身体は勝手に跳ねて、涙と涎でべとべとになっている。くわえこんではり付く内壁にべとりと液体を出しながらそのまま熱を込められた。

「もっと、あぁっ……もっと。中出していい、からっ……ちんちん、後ろの穴の……奥に、突いて……はぁっ」

「シュガさん、俺のにきゅうきゅう吸い付いてきてピクピクしてますよ」

「うん、気持ちい……はああぁっ、ジョングクのおちんちんで気持ちい……ああっ、あっ、あっ」

ぐぷぷって音がして後ろがどくんとする。摩擦での熱さだけじゃなく、もっと熱いような形にじんわり広がっていくようで身に染みついた。

「はぁ……はぁ……僕以外とはこういう事はもうしちゃだめ、ですよ」

「っ……お前とが初めてだっての」

「えっ、そうなんですか?良かった……」

ぎゅうと後ろから抱きつかれて、そのまま首もとを強く吸われて紅色が滲んだ。たいして抵抗もなく好きにさせてしまう。

「今日から僕がシュガさんの恋人って事でもいいですよね?」

「うん、わかった」

……なんてことがあったのが一週間前。あんな甘酸っぱくて淫靡で特別だった出来事の余韻を首もとに淡く残しながら、俺は危機に直面していた。

「シュガ先生?」

何度も聞いたあの声が。

「転校してきました、ジョングクです」

俺を変えてしまったあの声がまた新たな危険な道へと誘っている。階段を踏み外すように簡単に堕ちていくのだろう。だってもう、すでに関係は結んでしまっているのだから。




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