Foll
人懐こそうな顔した奴でライブの時にお会いしましたよねジョングクです、と注文を取りに来たユンギに声をかけてきたのが最初だった。ライブ後のオフ会は暗かったしあんまり顔もよく覚えていなかったけれど、あの場にいたというならおそらく男女共に囲まれていた男がいたからそれが彼なのだろう。そう思って適当に頷くとやたら喜んでいる。変な奴だとは思っていたんだ。その時にも。ただ相手の年も若かったから警戒はしていなかった。子供扱いして油断した。
「僕もこの近くに住んでるんです、また来てもいいですか?バイト終わったら話とかしたいです」
「あぁ、うん。いいけど。」
最初のうちは良かった。バイト終わりに好きな音楽について話すのは楽しかったし。二人でライブを見に行く事もあった。趣味が同じだから話も合うし、一緒にいる事は嫌いじゃなかった。だからこそなんでこんな事になってしまったのか今ではもうわからない。
「ヒョン、今日もバイト先で待ってます」
「来週の土曜、ライブあるんですけど行きませんか?」
「映画のチケット貰ったんですけど…」
「バイトのシフトいつですか?教えて下さい」
「今日、バイト休みでしたね。もう帰ります」
「ユンギヒョンとお話したいです」
「今、何してますか?どこにいますか?会いに行きます」
「最近どうしたんですか?何か僕がしたなら教えて下さい」
「ユンギヒョンの事をもっと知りたいです」
「今日もバイト先で待ってます」
携帯にはジョングクからの通知だけがずらりと並ぶようになった。常識的な数と時間帯ではあるが通知を見る度になんともいえない気持ちになる。ちょっとおかしくないか、と。距離感を一気に詰められたような感じだ。間を置こう、そう思ってバイトはしばらくやめる事にした。バイト先以外はバレてないと思ってたしあの場所で会えないとわかれば諦めて待たなくなるだろうと思って。やめる連絡をした後、ジョングクにも電話をかける。いつもメッセージを一方的に送ってくる癖に返信もかけ直しもしないくせに珍しく数数コールで出た。

「バイトやめたから、もう待つな」

「ユンギヒョン!もう待つなってどういう……もう僕と会う気がないってことですか?」

「まあ、お前次第だけど。さすがに少しくらい距離置いた方がいいだろ」

「何でですか?嫌です!」

「毎日毎日、勝手にバイト先で待ってるのはさすがに普通の関係じゃないだろ……」

「僕は毎日でも会いたいですよ」

「お前な……」

はぁ、とため息をつく。かなりの重症らしい。

「頭冷やせ。電話切るからもうかけてくるなよ」

ヒョン……と相手が言いかけるのを無視して電話を切る。電源は切らなかった。実際に言いつけ通りジョングクはその後に再びかけ直しては来なかった。予想外だったのは数日後の大学からの帰り道の出来事だった。住宅街に入って人通りが少なくなった頃に後ろから衝撃を与えられてわけもわからないうちに倒れる。思考が沈んで行く間際に見たのは見飽きた高校制服だった。

次に視界が戻ったのは何時間後だろうか。鈍く痛む後頭部で強く殴られた事だけは理解できた。周りは落ち着いたカラーの普通の部屋で、窓は閉めきられて外が見えないからここがどこかもわからない。なんでこうなったんだ。結構強く殴られたからまだ頭が痛い。足元からじゃらじゃら音が鳴る。手首から足の先まで続いている鎖が出した音だ。

「嘘だろ……」

呆然とするしかなかった。時計を探して辺りを見回せばかろうじて視界に入る。二時半を針が指し示していた。それから鎖を外せないか試したり、動ける範囲を試してみたりする。もちろん全部無理だ。手首と足は枷で結ばれているしうつ伏せでうずくまるような状態だった。上は白シャツ1枚で下半身は裸にされている。ろくに身動きも取れない中で一つ一つ状況を知っていく。こんなんじゃ脱出は不可能だってことに。

「起きるの遅いので、心配しました。良かった」

どの口が、と言いたいがあいにく、声の主の姿を見ることすら叶わない。地面に這いつくばった格好でなんとか声の先に身体を向ける。

「ふざけんな、何が目的だ。金、のわけないよな。結構良い部屋だろここ」

「気に入ってくれました?今日からはユンギヒョンの部屋ですよ」

いつも話してたようなノリと笑顔でジョングクが話している。この状況で普段と何も変わらない態度だ。

「僕が欲しいのはユンギヒョンですよ、あなたが好きなんです」

「好きだっていうなら、こんなのおかしいだろ……間違ってるだろ。なんでわかんねぇんだよ」

苛立ちが声に滲む。本当に頭がおかしい。

「好きって恋愛の方の、ですよ?」

無反応の俺に小首を傾げて念を押すジョングク。

「あれだけ押しかけられたから、そうだろうなと思ってた」

「気づいててスルーしてたんですか、脈ナシ……」

しょんぼりと落ち込む。むしろあれで気づかないのはよほど鈍いやつだけだと思うが。

「でもわかるでしょ、正攻法で言ったって今みたいに叶わないんです。こうでもしないとユンギヒョンを愛せない……」

足が一歩ずつ近づいてくる。影が近づいてくる恐怖で身がすくんだ。腕を伸ばされて仰向けに転がされる。無様な格好の俺に覆い被さってくるジョングクに対し、無力でしかなかった。

「何する気だよ……?」

震える声で問う。

「わかってる癖に」

そうだ、もうわかりきっている。
ジョングクの身体に抱き締められていて見えないが握られた感触だけがわかった。するすると擦る音が聞こえてくる。天井のライトを見ながら唇を噛んだ。意思とは違うが無理矢理にでもよくされてしまうのだろう。リズム良くしゅっしゅっとすかれるのがいつまで続いただろうか。この状況もあってかなかなか難しい。いつもより時間がかかったように思う。

「ユンギヒョン、強情です……」

不満げに言われても。準備万端というわけにもいかないだろうに。

「ヒョン、俺のも……」

身体をジョングクに起こされる。ジッパーを下げて顔の前につき出されたそれを見て、顔をしかめた。暗にしろと言われている。断っても勝手に始めることだろう。大人しく言うことを聞く事にする。

「あっ……入って……やば、ヒョンに食べられてるの興奮する……」

パクっと口を開けて含んでやると後頭部に手が添えられる。それでも動きを強制させられることはなく、自分のペースで動いた。といっても体勢的にわずか数センチ前後に動くのがやっとで相当刺激は物足りなかったに違いない。

「……はあっ、もういいですから。ユンギヒョンの中に入りたいです……っ……」

そこそこにまた体勢を変えられて仰向けになる。また影が差して、いつ来るかと身構えた。来る、来ない、まだだ。いつ来るんだ、と思ったときにようやく侵入感が襲ってきた。

「……ぐっ……はっ、あ……うぅ……ああっ……ぐ……」

「はあっ……ふぅ……さっき寝てた時に慣らしたのにきつ……」

「……は?……ふっ、ざけんな……はぁ……」

中に埋まってくる感覚がダイレクトにわかる。位置や感触全てを身体で実感してただただ苦しい。ホントにこんなとこで何やってるんだか。今はただ早く終わればいい。そんなことばかり考えるしかない。

ぱちゅ、と間抜けな音が響く。ああ、俺犯されるんだな。他人事みたいに天井をただ見つめた。

「ユンギヒョン好き……ね、好きだよ……ただ好きだっただけ……」

だんだん鼻声になっていく。泣きたいのはこっちの方なのに。

「……あっ、は……っ……んっ…はあ……」

「好きになってもらいたかっただけなんです……っ……はあっ……」

馬鹿みたいに前後運動を繰り返す。ぱちんぱちんと肌がぶつかって、無理矢理開かれた身体は悲鳴を上げていた。息も絶え絶えになっていく。奥までいれられてかき回されて、滅茶苦茶にされている。

「……ぐっ……ひぁっ、んっ…グガ……」

「嘘でも良いからっ……好きって言ってください……俺の事、好きって言ってユンギ……んっ……はあっ、はっ……」

ガツンガツン中に突っ込まれてセリフ言う余裕もないってのに無茶をいう。ぱちゅんっ、ずっ、ずっ、ぱんっ、ぱんっ。破裂音みたいにずっと聞こえてくる音に耳がおかしくなりそうだ。

「……あっ、ひ……っ……ひぁっ、グガっ、グガぁっ、しゅっ、しゅきっ、はああっ……んっ……すきだからっ、んあっ……はっ、はっ、グガぁ……」

壊れたラジオみたいに声を絞り出した。奥に前に浅く強く継続的に身体を揺らされ、無理な体勢を強いられているから苦しくて仕方ない。ほとんど棒読みみたいに言ったつもりだったのに、内側で膨らんでいく熱があった。

「何、喜びっ…やがって……はあっ、あっん……こんなんでっ……くそっ……ひっ……んぁっ……あっ、あっ……」

「嬉しい……僕もですよ……俺のユンギヒョンっ……はあっ、くっ……ふっ……ヒョン……好き、好きっ」

ぱんっ、ぱんっと嬉しそうに腰を振っている。こっちは汗でだらだらなのにほとんど疲れていないようで、ただ潤んだ瞳から涙を落としていた。

ぱちゅんっ、ごりゅっ、ずんっ、ずぽっ、ぬぽっ。
ぱんっ、ぱんっ、ぴちゃっ、ずちゅっ、ぐりゅっ。
ガクガク揺さぶられているうちに良い場所に当たるようになっていった。

「今のとこ、はあっ、きもちい……んあっ……はっはっ……ひあああっ…ん……あんっ……」

「ここ……きもちいい?ユンギヒョン……はあっ……」

指示してやるとそこばかり突いてくる。
ぱちゅんっ、ぱちんっ、ずぽっ、ぬちっ、ぱんっ。
気持ち良くなりすぎて、自分までおかしくなりそうだ。

「はああああっ、やっ……あんっ……ひあっ……あっ、あっ…いっ……きもちっ……いっ……んぁっ……ひぁあああああっ……」

ドクッと脈打ったのがわかる。息を荒げ、はふはふと呼吸だけをする。

「……っ……きつっ、そんなにしめたらっ……はあっ、あああああっ」

中の収縮に刺激されたのか続けてジョングクも熱を吐き出した。コプリと空気の音が抜ける。

まだ抜かれてもいないのに、終わった安心感からなのか意識が落ちていった。

「ユンギヒョン、好き……好きですよ。嫌いにならないで」

自分でやったくせに辛そうな声を最後に聞いた。

意識が戻った時には足だけは枷を外されて自由になっていたが、腰はガクガクで痺れているし立ち上がる気力すら出て来ない。足首には枷がはめられた跡がまだ赤くくっきりと残っていた。身体は寝ている間にジョングクに風呂に入れられたのか綺麗にされている。立ち上がれないのでただ上体を起こそうとしていると扉が開いてシチューの良い香りが漂ってきた。

「おはようございます、朝食持ってきました」

手首を拘束した状態でどう食えと。そのまま黙っていると、スプーンで掬って口元まで押し付けてくる。安心して食べて良いものなのか迷う。だいぶ長い時間食べていない。

「毒は入ってませんから、死んだりしませんよ。ほら、食べてください」

くちゃ、と強引に指を突っ込まれて口を開かされる。熱いのを開いた隙間から差し込まれたので舌を火傷しそうだ。少し涙目になりつつ飲み込む。

「……うま」

「えっ、本当ですか?口に合ったなら嬉しいです」

こんな状況でなかったら、もっと褒めてやれたし可愛いやつだとも思ったのに。ユンギの一言で上機嫌に顔を綻ばせて次々にシチューを口へと運ばれる。それをぱくぱくと口だけ動かして咀嚼していき、皿は空っぽになった。全て食べ終えてしまえばじきに、今度は身体が熱くなる。なんだこれ。やっぱり何か混ぜられていたんだ。ぼーっと熱に浮かされたようにふわふわと酩酊したような状態になってしまう。意識はぼんやりしているけれど敏感に反応した自己が主張しだしたのだけは鮮明になっている。むしろそういう感覚だけに集中して意識が向くようだ。ただもどかしい熱が燻っている事しか頭に残らない。ジョングクが見ている前でどうにかするわけにいかないが彼は立ち去ってはくれなかった。まじまじと凝視してくる始末で、意識を失うまであれほど痴態を見られたってのに今更気恥ずかしい様な気持ちになる。

「ジョングガ、さ、触って……」

一人でするのを見られるくらいなら、ジョングクに処理してもらう他ないだろう。消え入りそうな声でお願いする。自らねだるのが恥ずかしくて穴があったら入りそうだ。

「嫌です」

突っぱねたように言われるが耳が赤くなっているし、どう見ても喜んでる。そういう行為がしたくて薬をシチューに盛ったのだろうに、彼が自分に何を求めているのか。困惑していると身体を抱き寄せられた。

「ユンギヒョンが一人でして気持ち良い所、教えてください」

耳に吐息がかかってぞわぞわする。立ち去らずにただ見守られた時点で気づいてはいたが、やはりそれが目的らしい。

「俺の事だけ……考えて」

また一方的に無理を言う。男相手に何を興奮しろというのか。拘束されたままの手を下半身に誘導される。枷を外してはくれないのでやりづらい。

「……ここの、真ん中らへんが好き」

もうどうにでもなれというやけな気分になって輪っかをつくって擦り出す。正直見られたまま自分からしているのは顔から火が出るほど恥ずかしかった。犯されている分にはまだ言い訳ができるが、自らこうやって進んでやってしまうのでは自分が彼の行為に同意してしまっているようだ。ジョングクの熱が籠った瞳が自身に注がれているのを考えないように素早く手を動かしていく。

「強くするんじゃなくて優しくすんの。はっ……こうやって……弱い方が刺激少ないから……はあっ……」

嫌々教えてやってるはずなのになんだか進んで教えてしまっているような気もする。いや、違う。きっとこれは薬のせいなんだ。俺の良い所を知って欲しいんじゃなく、ちゃんとあいつに言わされてるだけ。

「一番気持ち良い部分をわざと外して擦って、そしたら……はぁっ……もどかしい気分になるから」

「焦らして欲しいんですか?」

頷いて返事をする。こんな状況で緊張しているはずなのに前回と違ってすでに大きく膨らみかけていた。ふと見ると触ってもいないのにジョングクのズボンが持ち上がっているのが見えた。俺を見ただけで興奮するとか何、そんなに俺が好きなの?ああ、でも俺だってジョングクに見られてる事で普段より余計に興奮している。良い所だって全部教えてやってるし、擦りつけてるのを見せつけてまで。

「限界が来そうになったら頭の方いじって欲しっ……いっ……はぁっ……」

言いながら先端に指を移動させていく。動きももっと激しく、熱も上がってくる。見られている恥ずかしさも忘れて夢中で擦った。

「はぁっ……ひぁっ……くぅっ……はぁ……」

ポタリと数滴がジョングクのズボンにかかる。

「あぁ、汚しちゃって」

服を脱いで、隠していた物があらわになった。触ってもいないのに硬くそびえ立つそれから目を逸らせない。

「今日学校あるのにこれじゃ行けないです」

知らねぇよ、勝手にそっちが興奮しただけなのに。

「責任とって、俺としてくださいね」

横暴だ。こちらが拘束されて疲弊して、逆らえないのを良いようにして。逃げられないのは散々組み敷かれたから嫌でもわかる。暴れても無駄な位力の差があった。だから抵抗しようがないだけなんだ。促されるままにジョングクのを後ろ側へと呑み込ませる。足の拘束が解かれているから体勢は随分楽だった。彼の背中に足を押し付けながらその力を利用して一気に押し込む。

「はぁっ……くぅっ……くっ、はぁっ……はっ……」

全て入ってもジョングクは動いてくれない。対面だから綺麗な顔が間近で見える。しまった、背中を向けるべきだったかもしれない。全部まじまじと見られているのをこれでは実感してしまう。あまり上下に大きく動かないように小刻みに身体を揺らしながら、出したばかりで萎えたばかりの物をジョングクの腹筋に擦り付けて快感を得る。下ばかりを見つめて視線を逸らしていたら、彼が覗き込んでくるのでそれを手で抑えようとしていたら、拘束された手首を頭の上から潜らせてジョングクの首に固定されて余計に距離が縮まることになった。吐息が耳にかかって、ピアスごと耳を甘く食まれる。

「ひぁっ……ん」

ビクリと震えた。動作の一つ一つが甘くて、何度も何度も耳や頬に口が押し付けられていく。ぴちゃ、と音を立てるジョングクの舌が耳まで犯してくるようだ。必死に自ら緩く奥を突く行為に集中しようとしたが、ジョングクの行動全てが俺の心を掻き乱す。言葉にしなくとも常に好きだと言われ続けているみたいだ。無理矢理犯されて嫌だったはずなのにこんなに好意を示されては少しも嬉しくないはずがない。だからこんな気持ちになってしまうんだ。俺は既におかしくなってきていた。想われるのも悪くないなんて。奥の方に吸い付かせたまま、じんわりとした快感を拾う。

「あっ……はああっ……んぅ……グガァ……」

小さな動きがまどろっこしいけどそのまま奥を突いて、持続する時間に浸った。自分のしたいように動かせて貰えるようになったから感じ方が断然違う。

「お前とすんの、すっげぇ……気持ちい……はぁっ、ジョングガのせいで、俺っ……んぁっ……俺まで……」

少し動きを早くする。あともう少し。

「……っ……ひああああっ……はっ、ん」

ジョングクの腹筋が濡れて光っている。全部俺が出した液だった。余韻に浸っていると繋がったままひょいと軽々持ち上げられてしまう。近くの机に押し倒されて足を大きく開かされて、秘められた部分が全て露になってしまった。

「恥ずかしいんですか?耳赤くなってます」

「……五月蝿い」

「俺に全部見せて」

ごりっとまた奥を突かれる。今度はジョングクの好きな様に動いてしまうようでかなり激しく揺らされる。口を閉じていても強制的に声が洩れた。

「このままユンギヒョンのここが俺の形になればいいのに」

「ひっ……はぁっ、んぁっ……はぁっ、馬鹿な事言うなよ……ぁ……ふぅ……あっ……あっ」

下腹部の方をつうと撫でられて、身震いする。

「ずっと繋がっていたい、離れたくない」

また泣く。嬉しそうなのに全然幸せそうじゃなかった。こんなに俺が我慢してやってるのに。

「嘘でも俺を好きになって」

顔が近づいてきて、まぶたにそっとキスをされる。そういえばまだ一度も口にはしていない。あれだけキスの雨を降らせておいて不思議だ。俺もはっきりと本当に好きだとは断言出来ない。まだ自分でもよくわかっていないから返せなかった。今はジョングクの好意にあてられて気持ちが伝染してしまっただけで、彼の求めたい答えとはきっと違うだろう。それでも泣いて欲しくなかった。自分がわざわざ足を開いてまで受け入れてやってるのに幸せじゃないなんて、馬鹿だ。俺なんかに熱を上げて好きになって、そんなのこの馬鹿だけだ。ジョングクを嫌いになれないで受け入れてしまっている俺だって愚かだった。潜らせた手首でジョングクの頭を引き寄せると口づけてやる。泣く必要なんかないんだ。今だけは受け入れているんだから。

「ん……ユンギ……んっ……はぁっ」

泣きながら夢中で唇を食む。息がしづらくて苦しい。奥をずんずんと力一杯に同じところばかりを突かれて本当にジョングクの形を覚え込んでしまいそうだ。自分で焦らした後の激しさだから更に感じてしまってもう何度も達してしまっている。ジョングクも同様で、彼の欲で後ろはもう満たされていた。掻き出してはまた吐き出しての繰り返し。ついには俺の方が出にくくなってきて何も出さないまま達してしまった。いつもより長く快感が続いてしばらくは何も考えられなかったが、今度こそ意識を失う事なく最後まで保ったらしい。お風呂に抱き抱えられて連れて行かれ、ぼうっとしたまま身体中を洗われた。液体を掻き出そうとする指にまた感じてしまって声をあげると背中に熱が当たる。

「元気すぎ、だろ……」

からかうように笑っていると背後から持ち上げられてジョングクの膝に乗る格好になった。

「くっ……ああっ……んっ……はっ」

ずぶりと再びくわえこむ。風呂場の鏡が自分達の姿をありのまま映していた。熱に浮かされたようにとろけきったような表情。口はだらしなく半開き。これが自分の姿だとは信じられないくらいに。

「ああっ……あっ……もっ、無理っ……はぁっ」

下からぱちゃぱちゅと突き上げられ、風呂場で余計に自分の声が反響している。出たり入ってる姿を目の前で見せつけられて、もう本当に堪らなかった。

「繋がってるところよく見えるでしょ?はぁっ……気持ちいいですか?」

「気持ちっ……ふぁっ……はぁっ、奥に来……ああっ……あっ……あ、あっ……んぅ……」

パシャパシャとシャワーから流れた温水が跳ねる。濡れているのが水なのかボディーソープなのか自分たちの液体なのかわからなくなるほどに混ざった。ぬるぬると身体中がコーティングされたようになって、一度抜いても滑ってまた奥に呑み込まれていった。絶対わざとだ。立ち上がって鏡に手をついて自分達の淫らな姿を見ながら何度も貫かれる。お風呂に入る前にはもう萎えたと思っていたくらいの自身はすっかり膨らんでいて、両足を大きく開いてジョングクを喜んで受け入れてしまった。

「激しっ……もっとゆっくりっ……ひあっ……あああっ……無理っ、ひあああっ……んっ……くっ……」

鏡に押し付けられて胸に鏡の感触が当たってぴくりとする。動く度に擦れて痺れるような感じが少しだけあった。

「ユンギヒョン、綺麗ですよ……はぁっ……もっと感じて……ヒョンのえっちな姿見せて」

じゅると唾液の音が耳元でしたかと思うと肌を強く吸われた。軽い痛みが走った後に離される。それを繋がったまま何度も繰り返された。背中、肩、腕などに無数に跡がつけられたのだろう。ひりひりとして痛いけれど止めようともしなかった。 ずぶずぶと呑み込んでいくのをきゅうと、締め付けて内側からくわえこむように離せない。

「きつ……はっ……はぁっ……なか気持ちよすぎて……くっ……っ……」

「はぁっ……口、開けろ……キスするから……んっ」

後ろを振り向いてジョングクに口づける。舌に吸い付いてちうと音を立てて。そうすると煽られたように腰の突き方が性急になる。

「またそういう事っ……!」

「んあっ……ジョングガァ……はぁっ……ひっ……はぁっ……あっ……あっ……すき、好きっ……」

ずっずっと抉るように突かれていく。意識の限界が近い。頭もぼんやりしてただ突かれるのに集中していた。

「僕もユンギヒョンが好きですっ……僕がずっと……ヒョンも好きになって?……はぁっ……俺を見て……」

「俺もっ……あっ……あっ……グガァ……はぁっ……好きっ……お前を嫌いになりたくてもなれなかっ……よっ……」

真ん丸な目を更に大きく見開かれる。

「ほんとに、ほんとにですか?」

「好きっ……はぁっ……ああぁっ……好きっ、だから……泣くなよ。お前が泣くのは嫌だ……っ……ひぁっ……んぅ……」

ずぶずぶと出し入れされながらなんとか叫ぶと俺の意識はまたそこで落ちたのだった。そして今は、正気に戻って青ざめている。とんでもないことを口走ってしまったようだ、薬のせいで。もちろん俺の意思ではない。決して。


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