疼く残り香
丁度ジンヒョンがいない隙に部屋に入り込む。普段から入っているから別にいない間に入ることはそんなに不自然ではないけれど。辺りを見回りして皆がそれぞれの部屋にいるかチェックしてきた。ジンヒョンはお風呂に入ってるからこの時間は絶対見つからない。なら、決行は今だ。

勝手知ったるクローゼット。目当ての物をすぐに探しあてる。自分のを脱いでこっそりジンヒョンの物に履き替えた。それからジンヒョンのベッドを借りてマットに寝っころがって下の方に擦り付けるように動かす。

「はぁっ、ジンヒョン……っ……はっ……ん……」

ジンヒョンの香りに包まれて安心するのと同時にいけない感情がせりあがってきた。お願いだ。ヒョンには何も見せないようにするから。こんな俺を許して。

「はぁっ、ヒョン……っん……ジンヒョンっ!」

擦り付けて、湿らせてジンヒョンを汚していく。完全にたち上がる前にぴゅるっと飛び出したそれをジンヒョンの下着が吸いとっていった。あっという間に終わってしまったようで物足りないけどすぐに気持ち良くなれるから、時間的にも丁度いい。ジンヒョンがお風呂からあがってくるまでにベッドを整えてできるだけ証拠を隠滅して、自分のズボンを履いて、ジンヒョンの下着を隠す。交換した下着はズボンのポケットに無理やり押し込んだ。適当に服を見繕っていると、髪がまだ濡れているジンヒョンが部屋に入ってきた。

「おー、ユンギヤ」

「ジンヒョン、明日この服借りていっていいですか」

「うん、いいよ」

借りる服なんていつも嘘だ。本当に借りたいときもあるけどこうやって誤魔化す為。そんな事も知らないでヒョンは今日も俺に騙されている。

「じゃあ……」

「ユンギヤ」

いつもと違って出ていこうとする俺を呼び止めてきた。べとついて湿ったのを早くなんとかしたいのに。無視する訳にもいかなくて、ヒョンのところに戻ると、腰かけているベッドの隣に座るよう指示される。

「俺に何か言いたい事があるんじゃない?」

そんなの、たくさんある。ジンヒョンが好きな事、そんなジンヒョンを汚している事、ジンヒョンの服を勝手に良くない使い方をする事。いうわけにはいかなくて、首をふる。

「ユンギから話してほしかったんだけどな」

はぁ、とため息をつく。頭をかいて、俺を見つめる。逸らして、俯いてしまう俺をジンヒョンはまだ見つめている。しばらく俺の返事を待っていたジンヒョンは漸く諦めたのか、また口を開く。

「匂いがするんだ」

「なんのですか」

「んーなんていったらいいんだろう……雄の?」

「そりゃ、男ばかりだから……」

「ユンギのでしょ?この匂い」

トントンと俺がさっきまで寝ていた辺りを叩く。まだ色濃く残っているはずの香りにサーっと青ざめた。自分の匂いには気づきにくいから違和感を感じにくかったんだ。必ず消していくべきだったものを。

「俺の部屋で、何してたの?」

「ごめん、なさい……ごめ……っ」

終わりだ。ジンヒョンが好きだなんてバレたら一緒に普通には過ごせなくなる。頭が真っ白になりながら謝ると、俺より慌てたような様子で宥めにかかる。俺の好きな、どこまでも優しいジンヒョン。

「怒ってるわけじゃないよ」

俯く頭の上から優しい声が降ってきて俺を甘やかす。罪状を聞く罪人のような気持ちでジンヒョンの裁きを聞く。怖い、何を言われるのか。膝を握りしめて耐える。

「溜まってたんでしょ?下の子達には言いづらいもんね」

「……」

「もちろん俺の部屋でやってたのにびっくりはしたけど」

元気付けるみたいにわざと明るく笑って見せる。

「ユンギの事だから何か理由があったんだろ」

ヒョンの信頼を裏切って、俺は酷いことをしたのにヒョンは笑って許してくれる。本当なら怒ってもおかしくないはずなのに俺がしたことだからって。

「ごめんなさい、ジンヒョン……」

「うん、何か悩み事があるなら話したくなったら話してみて。今日はもうおやすみ」

「はい、おやすみなさい」

ジンヒョンの部屋から出ていって、自分の部屋へと戻ると、下着の中は既に渇き始めていた。


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