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あかん。可愛すぎる。めっちゃ笑うやん。めっちゃ表情豊かやん。ほんでめっちゃええ子やん。
初デートから数日経つというのに俺はまだあの幸せな余韻が抜けないでいた。だってな?みょうじさんは「普段は落ち着いたクールビューティー寄りのたまに笑うと可愛い子」やと思っててん。それがな?俺の話にめっちゃ笑ってくれるし、ケーキ食べたらなんかちょっと嬉しそうな顔するし、ちゃんと「いただきます」と「ごちそうさま」すんねんで?いただきますの声が俺とハモってみょうじさんが笑った時ほんまに天使が迎えに来た思たわ。あと俺がまた誘って良いですかって聞いた時の「はい」って言った時の控えめな笑顔も良かった。ほんまにやばない?やばいねん。他にも色々あんねんけど、

「お疲れ」
「おー、お疲れ」

サバの味噌煮定食を持った嵐山が俺の向かいに座った。美味そやな。明日はサバにしよか……でも量足りひん気すんねんなあ。

「生駒は次行かなくて良いのか?」
「休講やねん」

慌ただしく3限の講義に向かう学生たちをちらりと見てから嵐山はサバの味噌煮定食を食べ始める。こいつもちゃんといただきますすんねんな。トンカツ定食の最後のトンカツと白米を味わいながら、またみょうじさんとのあの数時間の出来事を再生し始めた。
ほんまに嬉しかった。ほんまに可愛いし、楽しいし、あのまま話していたいと思った。できることならみょうじさんと付き合いたいと思う。しかし何回あの日のことを再生しても、俺にはひとつだけどうしても引っかかることがあった。

「この前な、前から可愛いなあ思ってた子と二人で飯行ってんか」
「おお」
「俺がたまに行くコンビニで働いてる子やねんけど、俺が番号渡して」
「やるな」
「いやほんまにやばかったであん時。ほんでな、俺その子の名前も知らんと番号渡してんけどな、普段も落ち着いてるし、見た目も可愛いより綺麗って感じで俺完全に大学生や思っててんけど……ほんまは高校生らしいねん」
「うん」
「俺、捕まらへん?」

食べながら話を聞いていた嵐山が箸を止めた。

「その子は何歳だ?」
「3年生やから18か17ちゃうかな」
「……17は際どいかもしれない。18なら問題ないと思う」
「まじで」

舞い上がりすぎてみょうじさんにはまた誘いますと言ってしまったが、本来俺が女子高生をデートに誘うなんて、あってはならない事なのではないだろうか。大学生と高校生で付き合ってる人達なんて沢山いるだろうし嵐山が言う通り年齢差もたったの1歳なのだが、どこかイケナイ雰囲気が漂っている気がする。
嵐山は少し黙って、真面目な顔で言った。

「俺が駄目だ、もう会うなと言ったら諦められるのか?」
「………………嫌や」

もう会えなくなるのは嫌だ。もっとみょうじさんと遊びたい。話したい。みょうじさんのこともっと知りたい。まだ一回しかデートしてへんけど……何ならただの客と店員さんやけど、俺にとってはそれだけやないねん。でもなあ。

「……俺はこのまま仲良くなりたいけど、こういうのは歳上がちゃんとせなあかんやん。高校生誑かして〜とかそういうのあるやん」
「生駒はその子を誑かしてるのか?」
「んな訳あるかい、めちゃくちゃ真面目にお付き合いしたいわ」
「女子高生なら誰でもいい訳じゃないんだろう?」
「当たり前やん、ほんまにJKって思ってへんかったし」
「真剣交際なら問題ないと思うけどな」
「ほんまに?17でも?」
「女子は16歳から結婚できるんだから、真剣交際なら大丈夫だと思う」
「……確かに」

スパッとお悩み解決した嵐山は食事を再開する。解決……解決したけど。俺のもやもやはまだ完全には晴れていない。

「いやでもな、俺と制服着たJK横に並んでみ?絵面エグない?通報されへん?」

いくらみょうじさんが大人っぽくて大学生に見えても制服着たら絶対可愛いってかエロ……いやあかん、ちゃうねん、俺とJKってなんかアレやん。ほら嵐山も「わからなくもない」みたいな顔であ〜言うてるし。やっぱ俺と並ぶとやばさ際立つよな?顔は変えられへんし……ほんまにどないせえ言うねん。俺だけ1年前の自分になれへんかな。窓から飛び降りるか?いやそれ俺が過去に行くだけやん、誰が時をかける生駒や。……あかんおもんない。
俺がアホなことを考えているとは知らない嵐山はサバを咀嚼しながらも真面目に考えてくれているようだ。いや俺も真面目に考えてんねんけどな。サバを飲み込んだ嵐山が口を開いた。

「二人で会うときは私服を着てもらえば良いんじゃないか?その子が私服で大学生に見えるなら、生駒と並んでも援助交際には見えないだろう」
「援助交際はやばい」
「周囲におかしいと思われなければ良い」
「確かに。でも制服姿見たいわ」
「捕まるか?」
「それはほんまにあかん」

制服姿のみょうじさんが見られへんのは残念やけど。……ちゃうで、制服が好きなんちゃうで。制服はもちろん可愛いけどな、可愛いのは制服を着たみょうじさんやねんで。ちゃんとわきまえてるで。でもな、好きな子のいろんなところが見たいと思うのは当たり前やんか。いろんなとこってそういうことちゃうで、違わへんけど今は違うで。

「あとは二人で会うのは昼だけにするとか?夜だとその子も不安になるかもしれないからな」
「なるほど、流石やな」

こいつほんまにすごいな。もしかして高校生と付き合ったことあんの?と聞きそうになったが嵐山には妹がいたことを思い出した。やっぱお兄ちゃんやからそういうのわかるんかな。何にしてもとてもありがたいことや。俺がみょうじさんをデートに誘っても問題ないことがわかって安心した。

「ありがとう。俺頑張るわ」
「うまくいくと良いな」
「ほんまに。めっちゃ可愛いねんで」
「誰が可愛いって?」
「うわ、太刀川さん」
「お疲れ様です」

おつかれ、と俺の隣に着席する。太刀川さんは肉うどんだった。

「4限からですか?」
「いや、これ食ったら行く」

言ってすぐに勢いよくうどんを啜る。3限始まってから飯食い始めるってどういうこと。流石やな。太刀川さんは頬にうどんを蓄えながら「で、誰が可愛いって?」と話を戻した。

「俺の好きな子です」
「お、良いな〜写真無いのか?」
「無いです」
「それは残念。まあ生駒は誰でも可愛いって言うからな」
「いやその子は特別なんすよ」

女の子はみんな可愛いし好きやで。でも名前さんはちゃうねん。なんて言えばいいかわからへんけどとにかく特別な子やし、「可愛い」だけでは収まらへん。
考えてたらまた会いたくなってきた。そろそろ誘ってもええやんな。次はどこ行こうかなあ。

その後も嵐山と次のデートは何に誘えばいいかと話していたら太刀川さんが色々と教えてくれた。ありがたいねんけど「映画は楽だぞ〜何も喋らなくても2時間は持つ」って、デートの認識やばない?





200310