clap_log#03


彼は横暴で、自分本位で、選民思想で、差別的で、人を人と思わないようなところがある、どうしようもない人で。
でもそんな彼の惹かれてしまった僕はきっともっとどうしようもないんだなとコッソリで苦笑する。

「何を一人で笑ってるんだ」
「うわっ!?あ、いや、な、何でもないよ!」

ボクに淹れさせたコーヒーを片手に本を読んでいたはずなのに、どうやら見られていたらしい。
慌てて否定すると、十神クンは本を閉じてテーブルに置いて、正面に座るボクをまっすぐ見てきた。
……この強すぎる目が少し苦手で、でも大好きなんて、きっと十神クンは知らないだろうな。
何でもない、なんて言葉で誤魔化されてくれるはずもなく、十神クンは気分を害したように眉を寄せる。
言弾の選択を間違えたのは明らかだ。

「なるほど?お前は何でもないときに人の顔を盗み見て忍び笑いをするような怪しい男だったという事か」
「ち、ちがっ、いや、違くないんだけど、でも、あのっ」
「冗談に決まってるだろう。それで?実際は何だったんだ?」
「え……、そんな気にするような事じゃないんだけど…」
「お前には学習能力というものがないのか?俺が言えと言ってるんだ。素直に従え」

冗談に思えない顔で冗談だと言われ、答えを促される。
ここで正直に「十神クンのどうしようもない人間性について考えていた」なんて言ったらボクは間違いなく明日人前に出られない姿になってしまうだろう。
どうしよう、どうしよう、論破できない…!
ボクを見る十神クンの目が、十神クンを見つけて舌舐めずりしてるときのジェノサイダー翔の目みたいに細められていて、これはマズイと防衛本能が叫ぶ。
どうにか…どうにかしないと…!

「と、十神クンの事好き過ぎてどうしようもないなって…思って…苦笑いしてました…!」
「…………それなら別に構わない」
「ごめんなさ……え?」
「構わないと言ったんだ。二度も言わせるな」

ボクは初めて自分の才能に心から感謝したかもしれない。
俯いて再び本を読み始める十神クンの、綺麗な髪の間から少しだけ覗く耳がいつもより赤い事に気が付いて、どうしようもなく恥ずかしくなる。
間違った事は言ってない、けど。でも。今、ボク、好きって。好き過ぎてどうしようもないって。間違いじゃ、ないけど!
きっと十神クンは顔が熱いから俯いて隠してるんだろうけど、本当にありがとう。
今顔上げられたら、同じく顔が熱いボクはきっと恥ずかしさで茹だっちゃうから。

どうしようもないキミが、どうしようもなく、大好きだよ!






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