8月3日(金) 左右田和一


正直子供の構い方なんてわかんねーよ!!……そう言ったのに、当番は毎日回って来ちまうだろ?
まあ田中のヤローにできるならオレにもできるだろうけどよォ……。
ソニアさんとも仲良いみたいだし、良いトコ見せとかねーとな!
なーんて、そう上手くいかねーか…。



特に話す事もなくて、オレは機械いじり、アイツらはその様子を見てるだけ。
他のヤツらと一緒の時は笑ったりハシャいだりしてるクセによ。
まあ、だからこそ気づいたっつーか…。
ハジメが黙ってる時って、イズルがスゲー心配そうな顔してんのな。

「……取って食いやしねーよ」
「?」
「あー…いや、なんでもねー」

首を傾げるハジメの頭を誤魔化すように軽く叩いてやる。
それだけで顔が明るくなるもんだから、コイツも単純っつーかなんつーか…。
その分イズルがオレを見る目がキツくなった気もすんだけど、どんだけブラコンなんだよ?

「…オメーらもやってみっか?」
「……いいの?」
「ああ。直してくれって頼まれたのは直したしな。余った部品だから適当に作ったりバラしたりしていいぜ」

つってもさすがにスパナとか電ドリとか半田鏝とかいろいろ危ねーのもあるから、いじっても大丈夫そうなやつ以外片付ける。
ペンキも付いちまったらなかなか落ちねーし、部屋の端にでも置いとくか。
あー……紙とか糊とかも出しといた方がいいのか?
ガキっつえばクレヨンだけど持ってねーしな……色鉛筆でいいだろ。
あとテープと……そういや紙粘土もあったな。
粘土板とヘラはこっちに……。
一応下にビニールシートでも敷いとくか。

「ほら、こんだけありゃ充分遊べんだろ!」
「……そうだおにーさん、ずこうがすきなのか?」
「ず、図工…!?ちげーよ!オレはメカニックだっての!」
「めかにっく……いずる、めかにっくって、きかいじゃないのももってるのかな?」
「……」
「無言で首振んなって!!」

やめろ、と頭掴んだついでに髪の毛をぐしゃぐしゃにしてやったら鬱陶しそうな顔をされた。
チクショー…地味に傷付くじゃねーか…。

「ねんどー」
「……はじめ」
「ん、はんぶんこな」

粘土を分け合って二人で何か作り始めたのを見てとりあえず一安心だ。
機械いじりよりも図工の方がいいみたいだから、余った部品も踏まないように片付ける。
壊されてもそんなに問題ねーけど、踏んで怪我でもされたら大変だしな。
しばらくして、できた、なんて声が聞こえたから見てみたら、丸っこいのが4つ転がってた。

「あー…ハジメ、何作ったんだ?」
「はかいしんあんこくしてんのう!」
「ぐ…っ……あのヤロー、ハジメまで手懐けてやがったのか…!!」

ハムスターを使うなんて卑怯なヤツだぜ!
高笑いする田中の顔を思い浮かべて拳を握る……と、ハムスター(仮)の横に綺麗に整えられた、ただ四角い粘土が置かれていた。

「イズルのは……なんだそれ?」
「……はじめ」
「とうふだって」
「っだあああああ!!なんだそのやる気のない作品は!!」
「……はじめ」
「もめんだから、やるきはあるって」
「わかんねえよ!!木綿と絹ごしのやる気の違いなんて!!!」
「そっかー、そうだおにーさん、わかんないのかー…」

ばっ、馬鹿にしやがって…!!
そもそも粘土で豆腐とか作んねーよ普通!!
そういう事すんのって大体やる気のない小学生だろ!?
くそ……5歳児にまで馬鹿にされるオレって一体何なんだよ……。

「……そうだおにーさん」

つーか、コイツらオレの事馬鹿にし過ぎだよな?
オレだって高校生だぜ?
一回り近く年違うんだぜ?

「そうだおにーさん!」

他のヤツらにはあんな態度取んねークセに、なんでオレにだけ…。
つーかイズルのヤツ、鼻で笑いやがったよな?
マジで意味わっかんねーんだけど!!

「そうだってば!!」
「呼び捨てすんなッ!!」
「もうっ、なんどよんでもへんじしないからだぞ!」
「だあああああ!!何だってんだ…よ…っ!?」

目の前に差し出された妙にカラフルな粘土を受け取る。
目に痛いピンクと黄色がいやに目立って、ついでによく見ると顔みたいなのが……。

「いずるとつくったんだ、そうだおにーさん」
「…は?作ったって……こ、これ…オレなのか?」
「ん」

こくこく頷くイズルを見て、もう一度まじまじ粘土人形を見る。
よくもまあ、帽子やら歯やらツナギやらちゃんと描いたもんだ。

「上手にできてんじゃねーか。でも何で色付けたんだ?色鉛筆しか用意してな……ああッ!?オメーら勝手にペンキ使っただろ!!?」
「だって、いろがないとそうだおにーさんってわかんないし。な、いずる?」
「ん」
「あー…ったく、手がピンクになってんじゃねえかよ…!」
「……そうだおにーさん、おこってる?」
「あ?……いや、怒ってはねーよ。作ってくれてありがとな」

不安そうに見るもんだからつい絆された。
礼を言えば一気に明るくなるハジメの顔…と、安心したようなイズルの顔。
あー、はいはい、ブラコンブラコン。

「んじゃ、手洗うぞー。ペンキ落ちなくなったら夕飯まで十神のお説教コースな」
「うえぇ…やだ…」
「はじめ」
「ん、さっさとあらっちゃおうな!」
「あっ、オイ!!ペンキ付いた手繋ぐなって!!」

まあ、騒がしかったけど、意外となんとかなったオレとガキ共の金曜日。
ちなみにペンキは落ちたけどペンキに触った事がバレて結局十神に叱られた。オレが。



(ハジメはオレの事馬鹿にしすぎ)
(イズルはオレの事睨みすぎ)

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