AFTER monokuma manufacturing facility


食堂にやってきた寝惚け眼の苗木は当たり前だというように極自然に山田の隣の席に腰を下ろした。
全員揃っている訳ではなく、他にも席は空いているというのに、珍しい事もあるものだ。

「山田クン、おはよ…」
「おはようございます、苗木誠殿。だいぶ眠そうですが」
「うん……だいじょぶ……今日は工場長が回るっていうから……頑張らないと……」

工場長?と首を傾げる面々を余所に、苗木はうとうとと舟を漕いでいる。
石丸が注意をしてもなかなかハッキリした返事を寄越さない。
焦れた石丸が苗木に近づこうと席を立った、正にそのタイミングで、それは現れた。

「あっれー?苗木クンってば眠そうだね?もしかして昨日お楽しみだ…ったワケないよねー!!健全な男子高校生が性の欲求を持て余した結果どうなるのか……ボク、気になります!なんちゃってね!殺人ゲームと謎解き小説のコラボだよ!うぷぷ!!」

神出鬼没なモノクマはとてとてと苗木に歩み寄りながら、いつも通りの小馬鹿な言動を、

「おはようございます、工場長!今日も納期厳守で高品質なモノクマ作りに励みます!!」
「…………は?」

していたのだが、突然の出来事に思わず小首を傾げた。
工場長やらモノクマ作りやら、ちょっと待て何の話だ。

「……苗木君、一体何の話をしてるの?」
「え、朝のあいさ……あれ?あ、夢…?」

霧切の格好を見て、自分の格好を見て、苗木はようやくモノクマパーツの塗り分けに勤しんでいたのは夢だったと気づいたようだ。
安堵したようにほうと息を吐く。
モノクマ生産工場なんて存在しないのだ。

「どんな夢見てたの?モノクマが工場長とか、モノクマ作りとかさ」
「あー…えっとね、工場で朝から晩までモノクマを作る夢」
「……悪夢ね」
「どこが悪夢なのさ!一日中ボクと触れ合ってられるんだよ?それってすっごい奇跡じゃない?奇跡的な幸運じゃない?うぷぷ、そのネタ次回作で使っちゃおっかなー。モノクマ製造工場!」
「……。私達を絶望させてないのに次の話……浮気?」

楽しげに笑うモノクマを冷めた目で一瞥し、霧切は柄にもない一言を発した。
それに驚きはすれど、攻撃の手を緩めるような生徒はここにはいない。

「えー……モノクマ最低じゃん……」
「最初の攻略対象を攻略せずして別のキャラを攻略しようとは……まったく男の風上にも置けませんな!」
「わたくし達との勝負は捨てる、という事ですか?それでしたらこの学園生活も終わらせざるをえないのでは?」
「自分で定めた目標を途中で変えるだなんて非常識じゃないか!そんな意思の弱さでは誰も絶望なんてさせられないぞ!!」
「さすがに…気が早すぎるよねぇ」
「私達の事なんてどうでもいいんですね……」

散々言われて多少は心が痛んだのか何なのか、モノクマもさすがに笑いを引っ込めた。

「……あーもうっ、わかったよ!ちゃんとオマエラを絶望させてから次回作の構想練ればいいんだろ!自分達の事以外考えるなって何その束縛!学園長はみんなの学園長なんだからねっ!?」
「はふぅ……ちっとも萌えませんな。いっそ擬人化……擬人化……?……アリ、か……」
「ないよ!!」
「じゃあボクはオマエラを絶望させるとっておきの動機を考えに戻るから、ちゃんと朝ごはん食べて殺人の為の気力体力を養っておく事!!」

モノクマはそう言い残し、現れた時同様突然姿を消した。
次回作とやらのモノクマ製造工場の話は白紙に戻ったのかどうか、残された彼らには知る術もなかった。



(え?だって主人公自らのネタ提供だよ?)
(捨てる神いれば拾うクマありってね!)

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