7月31日(火) 花村輝々

二人だけで遊んでいるのを見るとどうしても思い出す。
忙しいお母ちゃんの邪魔をしないように、隅っこで小さくなって遊んでいた幼い弟妹達の姿。
だからかなぁ、遊んでやりたくて仕方ないんだ。



今日は僕の仕事はお休み。
採集も掃除も他のみんなで受け持ってくれてる。
だからこの隙に二人と遊ぼうと思うんだ!

「あ、いたいたー。ようやく見付けたよ」

どこにいるのかと思ったら図書館にいた。
イズル君は子供が読むには難しそうな本を広げていて、ハジメ君の方は図鑑を眺めていた。
やっぱり性格が違うと読む本も違うみたいだけど、難易度の差に少しだけ目眩がした。

「はなむらおにいさん、なんかよう?」
「ん?いやいや、用っていうかさ?おやつでもどうかなと思って」
「いずる、おやつだって。ほんいっかいやめろー」
「……はじめ」
「おやつたべたら、な?」
「……ん」

読んでいた本を閉じられたイズル君がハジメ君の名前を呼ぶ。
たったそれだけで何が言いたいのかわかるんだから、やっぱり双子って凄いよね。

「僕が作った苺のタルトだよ。苺は好き?」
「すき!おれもいずるも!」
「よかったー。味はもちろん自信あるけど、嫌いだったら意味ないもんね!さあさあ、遠慮せず食べてよ!」

キラキラと目を輝かせてタルトを手に取る姿に弟妹達が重なる。
苺を見ながら「宝石みたい」なんて言うその目の方が宝石みたいで、僕はいつだって幸せな気持ちになれたんだ。

「おいしいっ」

美味しいの一言が僕の胸を打つ。
アレに似てるとかなんとか言ったって、結局僕は料理って行為が好きで、料理を食べた人が幸せそうな顔をしてくれるのが好きなんだ。
やっぱり自分は超高校級の料理人なんだなぁって実感した。

「イズル君も美味しいかい?」
「……はじめ」
「おいしいって!」

ハジメ君の言葉にこくりと頷くイズル君。

うーん、やっぱりコミュニケーション取ろうにも、ハジメ君のワンクッション必要なんだね。
とりあえず今日のところは、美味しいって思ってもらえただけで満足かな。
なんだか餌付けしてるみたいだけどね。

「他になにか食べたいのとかある?」
「いずる、なにがいい?」
「はじめ」
「じゃあ、くさもち」
「草餅?好きなんだ?」
「すき!」

草餅が好きな5歳児って結構珍しい気がする。
もっとホットケーキとかパフェとか言うと思ってたよ。
……そういえばお母ちゃんも好きだったなぁ、草餅……。

「じゃあ今度は草餅を作ってくるよ。いつも以上に、腕によりをかけてね!」

たったそれだけで嬉しそうに笑ってくれるから僕も嬉しくなる。
イズル君の方もそんなハジメ君を見て少しだけ頬を緩めていた。
本当、凄く仲が良いよね。
お互い以外要らないって普通に言い切れちゃいそうなレベルで。
食べ終わった二人分の小皿を片付けて持ってきたバスケットに入れながらそんな事を考える。

「はじめ」
「ん、ごめん。いまかえすから」
「……はじめ」
「!うん」

さっき取り上げた本の話をしてるのかと思ったら、どうやら図鑑を一緒に見ることにしたらしい。
さっきより身体をくっつけて、たどたどしい手付きでハジメ君がページをめくっていく。

「はなむらおにいさん、いっしょにみようよ」
「…え?いいの?」
「うん。ね、いずる」

イズル君がしっかり頷くのを見てから、ハジメ君の隣の椅子を引いた。

「へえ、動物図鑑だったんだ」
「うん。ねことか、とらとか、らいおんとか、いっぱいいる」

猫とか虎とかライオンとかって…猫科の動物が好きなのかな?
猫が好きって言われたら僕としては身をもって体感させてあげたいところだけど、さすがに何も知らない5歳の子供に手を出すほど落ちぶれちゃいないよ!

「!はじめっ」

ハジメ君がページをめくった瞬間にイズル君が声を上げた。
珍しく興奮したような声だ。

「!はかいしんあんこくしてんのうっ!」

破壊神暗黒四天王……確か田中君が連れてるハムスターの事だったよね。
開いたページを見てみるとちょうどハムスターのページだった。

「いずるっ、いずるっ、さんでぃーがいる!じゃんぴーも!!」
「……っ!!」

……どうしよう、全然ついていけない。
いつの間にか二人は田中君のハムスターと仲良くなってたみたい。
ハジメ君だけじゃなくてイズル君もっていうのはちょっと驚きだけど、やっぱりまだまだ子供だもんね。

「まがじーとちゃんぴーはいないのかなー」
楽しそうに破壊神暗黒四天王探しを始めた二人を横目に、一人ついていけない僕は今日の夕飯のメニューを考えていた。



(二人とも苺が好き)
(二人とも田中君のハムスターに夢中)

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