7月28日(土) 終里赤音

イズルもハジメも色が白いし細いし、そんなんでよく今まで生きてこられたなって思う。
うちのチビ達のがまだ元気だったぜ。
でもまあ、イズルのが大人しいって思ってたけど実際ハジメのが大人しいんだな。
そう言ったら他のヤツらに「変なモン食ったんじゃねーか」って聞かれたけど、オレは全然元気だぞ!
どっちにしろまだガキなんだし、もうちっとオレ達に甘えりゃいいのによー。



今日はオレが二人の面倒みる日!ってオレが昨日決めた。
でもコテージにもホテルにもいねーし、どこ行ってんだろってしばらく歩き回って捜してたら、ようやく砂浜で遊んでるのを見つけた。

「おっ、いたいた!イズル、ハジメ!」
「おわりおねえさん」
「おねえさんなんて堅苦しい呼び方しなくていいっつってんだろ。ねえちゃんとかでいーんだよ」

右手でハジメ、左手でイズルの頭をグシャグシャにしてやる。
甘え方がわかんねーとか言うんならよ、フツーに遊ぶだけでもいいんだし。

「……おわりねえちゃん」
「おうっ!なんだ?」
「どうしているんだ?」
「おいおい…そんな事言うかよフツー。お前らいつもジッとしてるから構ってやろうと思ってよ。ガキなら外で走り回るのがトーゼンだろ?せっかく砂浜いるんだから走ろうぜ!」
「おれはいいや」
「はじめ」
「いずるもいいってさ」
「……お前らホントにガキかよ?」

誘ってやったってのに二人とも立ち上がりもしねえ。
大人しすぎんだろ。

「うちのチビ共なんて遊ばせようと思わなくても好き勝手遊んでたぜ?」
「へー。おわりねえちゃん、きょうだいいるんだ」
「ああ。お前らよりちょっと大きいけどな。全員バカみてーに元気だぞ」
「さすがきょうだいだな」
「だろっ!」

家ん中じゃそんな暴れ回んねーけど、外に出たら落ち着きなさすぎて呆れちまうくらいだ。
そんな風になれって言う訳じゃねーけどよ、もっと子供らしく無邪気になれねーのか?
走って、遊んで、飯食って、寝てさ、ガキなんだから無駄にワガママでいいんだよ。
物分かりのいい顔なんてやめて、精一杯ふざけてやろうぜ?

「って事でよ、遊ぼーぜ!」
「……どういうことなのか、ぜんぜんわかんないけど」
「はじめ」
「……いいのか?」

何言ったんだかわかんねーけど、イズルが頷く。
ハジメは少し驚いたみたいだけど、すぐにいつも通りになって立ち上がった。
イズルも一緒に立ち上がる。

「いずるが、あそんでやろうっていうから、あそぶ」
「やっぱ子供っぽくねーなー…。ま、とにかく遊ぶか!よし、オレが追いかけるからお前ら思いっきり逃げろよな!」
「おわりねえちゃんがおにじゃすぐつかまるって!」
「大丈夫だって。ちゃーんと100秒数えて歩いて追いかけてやるからよ!いくぞ?いーち、にー」
「あんしんできない!にげるぞ、いずる!」
「ん」

数え出したら慌てて逃げ出した。
砂に足をとられながら走ってく。
でも。

「結局二人で逃げるんだよなー、あいつら……」

バラバラに動けるようになったらいいのによ。
ハジメがイズルばっか気にしてなかなか自分の好きにしないのも、イズルがハジメばっか気にして周りに自分を見せないのも、そうすりゃ直ると思うんだけどな。
まあ、まだ会ってからそんな経ってねーし、不安で一緒にいるだけかもしんないけどさ。

「……あー、いくつまで数えたっけかな。ま、もういいだろ。おーい!いくぞー!!」

まだ見えるところにいる二人にそう言ったら、ハジメに大声で「ちゃんとかぞえろ」って怒られた。
ちぇっ、あいつ、ああいうトコ細けーなー…。

「へいへーい。じゃあ50からなー。ごーじゅ、ごーじゅいーち、ごーじゅにー」

さっきよりちょっと遠くなった背中が仲良さそうに手繋いだのが見えたから、まだ二人一緒でもいいかもしんねーなとか思っちまった。
とにかく今日は、いっぱい走って、いっぱいメシ食うぞ!!



(イズルもハジメも大人しい)
(でも走り回ってボロボロになるくらい元気だ!)

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