嗜虐的な彼ですが


床に背を預ける苗木は、自分の上に江ノ島が覆い被さるのを熱に浮かされた目で見ていた。
張り詰めた自身が、欲を解放させたいと疼く。

「ふ、ぁ、江ノ島、クン…もう…っ」
「うんうん、我慢してる苗木超可愛い」

切なげに眉を寄せる苗木の額に軽く唇を押しつけ、江ノ島は苗木のスラックスに手をかけた。
羞恥に耐えるように顔を背ける苗木が可愛くてついつい意地の悪い事をしたくなるが、それでは芸がない。
そもそも普段いじめている分こういった場面で挽回しないといけないのだ。
ライバルが多い以上、さすがの江ノ島も一時の衝動に身を任せるわけにはいかない。
江ノ島はふつふつと湧き上がる嗜虐心をどうにか無視、

「あはは、苗木ってばもうこんなぐちゅぐちゅにしてんじゃん!ヤッラシー。俺一度も触ってないよね?なのにこんなんにしちゃったの?俺に犯されるの想像して興奮しちゃった?それとも、俺以外にも犯してもらえるようにいっつもこうしてんの?そういえば動くこけし持ってたっけ。アレで毎晩自分を慰めてたり?大浴場とかトイレにはカメラついてないし。あーあ、ホント苗木ってば淫乱だよね!そういうのはカメラの目の前でやれよ。特別に放送しないで俺のオカズにしてやるからさぁ。な?淫乱苗木君?」
「ち、ちが……ひゃんっ!」

できなかった。
元より嗜虐的な江ノ島に、苗木の痴態に言及しないという選択肢などない。
否定の言葉を紡ごうとする苗木の露わになった自身を指先でつーっとなぞると、驚愕の為とも快楽の為とも取れる悲鳴が上がる。
零れ出した蜜を指で掬い、糸を引く様をわざとらしく見せつけると、苗木は真っ赤な顔を更に赤く染めた。
江ノ島は爽やかな笑顔のまま喉の奥でくつくつと笑う。

「イきたいだろうけどちょーっと我慢しててな」

江ノ島は無理矢理苗木の足を開き、片足を自分の肩の上に乗せる。
掬い取った先走りを露になった苗木の秘部へと塗り込んだ。
僅かに解れたのを確かめて指を挿れ、熱い内壁を擦っていく。
何度経験しても慣れない異物感。
苗木は苦しそうに呻きを上げ、瞳からぼろぼろと涙を溢れさせた。

「っく、う……痛っ、ん!」
「痛い?」

言葉を発する余裕もなく呻きながら、苗木は必死にこくこくと頷いてみせた。

「つまり慣れるほどヤってないって事だよな。大丈夫大丈夫、そのうち指だけでイけちゃうくらいに慣らしてやるからさ」

江ノ島がそう言うと同時に、たっぷりと先走りを潤滑液代わりに塗り込まれ柔らかくなった襞を割って、ぐちゅ、と指が足された。

「あっ、あ、や…、ああっ!」

増えた指に内部を圧迫される。
ぞくん、と強烈な痺れが背筋を走り、苗木は身体をしならせた。
痛みは次第に快楽へと姿を転じ始め、苦しげな声は色を孕んだ嬌声に変わる。

「ん、なに?指が増えて気持ちいいって?」

江ノ島は指で内壁を擦り上げながら出し入れを繰り返す。
ぐちゅぐちゅと淫猥な音が聞こえる度、苗木はぎゅっと目を瞑って耐えようとするが、余計に聴覚が研ぎ澄まされるだけだった。
瞼を持ち上げればにんまりと笑う江ノ島と目が合うし、瞼を閉ざせば羞恥が増す。
どうしようもなくて唇の端を噛むと、啄ばむようなキスでそれを咎められた。

「あっ、ああっ、ひ、い、ゃあ…っ!」

唇が離れたタイミングで、疼く内壁を擦られる。
甘い刺激から逃れようと腰を動かすと、それが更なる快感となり、苗木を戸惑わせた。

「ナカ、気持ちいいだろ?」
「あっ、ひぅ!そ…んな…動かさ…なっ…でぇ…っん!やぁっ、あ、ァ…っ!」

中で二本の指をバラバラに動かされ、掻き混ぜられる。
内壁を引き伸ばされるような感覚に堪らず苗木は喘いだ。
それでもどこか物足りない。
江ノ島から与えられる快楽がこれだけではないと身体が覚えてしまっているのだ。
指よりも太く熱いものを受け入れてきた場所が、まるで強請るようにヒクヒクと収縮し江ノ島の指を締めつける。

「あっは!そんなに欲しいんだ?やっぱ淫乱だね。ほら苗木のココ、俺の指咥え込んで離さないし」
「ぅ、あ!や…っ、耳、だめ…え…ッ」

耳元で言い聞かせるように囁けば、苗木はいやいやをするように左右に首を振る。

「苗木ってホント耳弱いよなー」
「っや…!」

寄せていた唇を離して再び指で後孔を弄ると、淫猥な水音が部屋に響く。
内側を確かめるような、らしくないゆっくりとした優しい動きは、かえって苗木の感覚を過敏にした。
苗木の意に反し、身体のすべてが快楽を拾おうと躍起になっている。
江ノ島の指の節が粘膜を擦って動かされる度、ゾクゾクとした痺れが全身に走った。

「あっん、やぁ…も…っ」
「なーに?もっと違うの欲しいの?」

江ノ島は指を抜き、代わりに熱を孕んだそれを苗木の秘部に宛行った。
しかし宛行っただけで挿れる事はしない。

「苗木、コレ、欲しい?」
「っ……」

愉快そうに口元を歪ませて見つめてくる江ノ島に対して、苗木は所在なさげに視線をあちこちへと逸らす。
欲しい。けれど、強請りたくはない。
頷けばいいだけというなら何度でも頷くところだが、江ノ島がそれほど優しくないという事は分かりきっていた。
頷いたらどうなるのだろう、淫乱と嗤われるのか、咥えろと命じられるのか、全く違う物を挿れられる可能性だってある。
頭では分かっているのだが、それでも身体は江ノ島を求めていて。

「ほ、欲しい…っ!」
「うん、素直でいいね。俺苗木のそういうトコ結構好きだわ。じゃあ欲望に素直な淫乱苗木君、俺にどうしてほしいか言ってみな?」

また江ノ島が耳元で囁く。
ついでとばかりに耳朶を唇で軽く食み、穴の中に熱い舌を差し込んでやれば、僅かばかり残っていた苗木の理性はあっさりと四散した。
耳を犯す江ノ島の舌と水音に身体を震わせながら、苗木はいつか教えられた通りに彼の望む言葉を半ば叫ぶように口にしていた。

「江ノ島クンのおっきいの挿れてっ…奥いっぱい突いてグチャグチャにして…っ!」
「……グチャグチャにするだけでいいワケ?イけないように苗木の縛っちゃってもいいって事?」
「やっ、やだぁ…!中に出して、イかせて…!!」
「ん、上手に言えましたー。ご褒美に苗木のおねだり通り俺の挿れて奥いっぱい突いてグチャグチャにして中に出してイかせてやるよ」

苗木の口から普段は聞けないような言葉を引き出した江ノ島は満足げに頷き、宛行っていた雄を苗木のナカに押し挿れた。
だいぶ解したおかげで難なく挿れる事ができたが、元から欲を受け入れる器官ではない為か、やはりキツイ。
熱い内壁が江ノ島の自身をきゅっと締めつける。

「んああッ…やっ、え、のしま…くっん、ン…おっき…ぁ、は、んァ!」

強請った通り与えられた快楽が、確かに感じる苦痛に勝った。
自分の下から聞こえる女のように艶めいた声が江ノ島の劣情を刺激する。

「っ…なーえぎ。動いてほしい?」
「…っん…う、ごい…ひぁっ…てぇ…!いっぱい…はあっ、突い、て…っ!」
「あー、もう、可愛すぎなんだってば!」

受け入れただけでもういっぱいいっぱいなハズの苗木が、蕩けた目で、舌足らずな声で、江ノ島を求めるものだから。
なけなしの、それこそ無いに等しい程度しか持ち合わせていない良心と理性を総動員させて抑えていた江ノ島の欲が爆発するのは当然の結果だった。

「ぁ、あ…っん、ふ…うあっ!?あ、あっ、や…ぁあっ!ら、めっ、ココ…あっあァ、やだ、ぁン!こわれ、ちゃ…ひ、ぁッ!!」
「っは、グチャグチャにしてイかせてやるよ…ッ!」

予想以上の快楽に狼狽える苗木を見て江ノ島のモノがさらに強くなる。
若干余裕をなくした江ノ島は、それに気づかれる前にと激しく腰を打ちつけた。
苗木の啼き声と淫靡な水音、肉を穿つ音が耳につく。
自然律動が速まり、苗木だけでなく江ノ島にも絶頂の兆しが訪れた。

「……苗木、イきたい?」
「ヒ、あっ、あ…ン…っ…きた、ぁ…、ふ、ぅあっ…い…きた、いぃ…っ!」
「ん、そっか。俺も。一緒にイこうな」

ボロボロと瞳から涙を零す苗木の目尻にキスを一つ落として、江ノ島は苗木の奥深くに一気に身を沈めた。

「ん、あっ…あああああ―――っ!!」
「―――ッ!」

一層声高な喘ぎと共に苗木は外に、江ノ島は苗木のナカに、それぞれ精を放つ。
数呼吸置いて江ノ島が自身を引き抜くと、ずちゅりと音を立てて苗木のナカに注いだ精液がしたたか零れ出た。

「……はー……結構出たなー。ま、最近ヌいてなかったし当たり前か。苗木ー、もっかいヤろ…って気絶してるし。苗木くーん、なーえーぎーくーん……マジかよ、せめて俺にかかった精液舐め取ってから気絶しろよなー」

ぐちぐちと文句を言いながら苗木を見る瞳は優しい。
結局二人の関係を保っているのは、江ノ島の嗜虐癖を補って猶余りある程の愛情、という事なのだろう。



(意地悪なところも全部、全部)
(大好きなんです)

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