とある字書きの書架

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[擬人]下書き・ある夜
〈擬人物語:本文〉
2016/05/10

 
 
「擬人物語」をすごく久し振りに更新。

今回のエピソードは以前書いていたものと全く別の話です(^^;

***

冷え込みの厳しい日だった。

「今日は寒いから、私の部屋で寝ていいよ」

リクトの教師がそんなことを言い出したのは夕食のときだった。

自分が寝る部屋に他の者を入れる行為がヒトにとってどんな意味を持つのか、
リクトには正確にわからなかったが、教師が彼に相当親しく接しているらしいことは想像できた。



かつて人間の主人と暮らしていたときのことを思い出す。

「今日は寒いから一緒に寝よう」

リクトの主人は、寒い夜にはよくそう言って彼を自分のベッドに入れたものだった。

「リクト。ずっと一緒だからね」

彼を優しく抱き締めてそう言う主人の声が今も耳の奥に残っている。

――ずっと一緒。

リクトも、きっと彼女もそう思っていた。あの日が来るまでは。



 



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