EPISODE.25



『エース・・・ふ、えぇ・・・ッエースぅう・・・』


いくら兄弟の盃を交わし、兄弟の絆を結んだとしても・・・血の繋がった実の兄、エースを超える事は出来ない。ナマエの不安を全て受け止め、そして支える事が出来たエースはもうこの世にはいないが、それでも唯一弱音が吐ける相手、サボが生きてくれただけでナマエの心はどれほど救われただろうか。
シャンクスでもルフィでもない・・・サボだからこそ、こうして本音が言えるのだ。
子どものように泣きじゃくるナマエを愛おしそうに見つめていたサボは、ナマエの肩に手を押すと少し自分から離し、そして優しい声色でナマエの名を呼ぶ。


「ナマエ・・・お前に、ずっと伝えたかった事がある」
『ひっく、う、・・・っ・・・』
「・・・おれはエースの代わりにはなれねえ。それでも・・・ルフィやお前にとって、エースと同じ兄だ」
『・・・う、ん・・・』
「でも・・悪い。おれ、お前の兄ちゃんやっていける自信が無いんだ」
『!な、んで・・・・?』


不安そうに顔を上げるナマエ。その瞳に映るサボは困ったように笑いながら、ナマエの頬を流れる涙を親指で拭いながら言葉を繋ぐ。

――エースを超えられなくてもいい。それでもナマエの不安を少しでも和らげるのなら・・・ナマエを支える事が出来るのならば。


「・・・好きなんだ、ナマエが」
『っ』
「妹としてじゃない・・・1人の、女性として。出会った時からずっと好きだった」
『え・・・あ・・・・・・』


サボの突然の告白に動揺するナマエ。予想通りの反応に小さく笑ったサボは一度言ってしまったせいだろうか、思いがどんどんとこみ上げ、目の前で呆然とするナマエにもう一度、好きだと言った。


『・・・っ・・・』
「・・・幻滅したか?」
『!そ、んな事・・・ない・・・っないよ・・・でも・・・』
「でも?」
『ッ、今言うのは・・・ずるいよお・・・』
「ははっ。だな」


こんな時に告白なんて、自分でもずるいと思っている。けれど惚れた女が誰かの為に涙を流す姿はもう見たくはなかった。――もちろんその相手が兄弟だったとしても、だ。


『私も・・・っ・・・サボが、好き』
「!」
『ずっと、好きだった・・・!』


先ほどとはまた違う涙を流すナマエは真っ直ぐとサボを見つめながら、言った。

――もうこの気持ちに嘘をつくことはできない。サボは目頭に熱いものを感じ、それを誤魔化すようにナマエを強く抱きしめた。


『サ、ボ・・・?』
「っこれからはおれが、お前の支えになるから・・・」
『!』
「だからもうこれ以上、自分を責めないでくれ」


頼む、と哀しげに言ったサボの言葉に胸が締め付けられる。その言葉はまるで自分にも言い聞かせているようで、ナマエはサボの肩に顔を埋めると何度も何度も頷いた。



――それからどれくらいの時間が経ったのだろうか。いつまでもこうしているわけにもいかず、とにかく此処を離れようとナマエの名を呼ぶサボだが・・・何時まで経っても反応がない。自分の肩に乗っているナマエの顔を覗いてみれば、なんとすやすやと気持ち良さそうに眠っているではないか。

さすがエースの妹というべきなのか・・・こんな状況で眠れるナマエに驚きながらも、困ったように眉をハの字にさせたサボはそのままナマエを抱き上げ、一先ずナマエの怪我の手当てをするためコアラたちの待つ、地下へと向かった。






   



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