EPISODE.23



恐怖のあまりレベッカが目を瞑りながら剣を振り下ろした――その刹那。


キイイイン!!!!!


高い金属音が鳴り響く。


驚いて目を開けてみてみればさっきまでそこにいたはずのナマエの姿はどこにもなく、代わりにルフィの姿があった。振り下ろされた剣はルフィが纏った武装色の覇気によって真っ二つに割れる。


「"ルーシーが現れたぁああぁ!!!"」


ルフィの登場に、ドレスローザ全体を王宮から実況していたギャッツが涙ながらに叫び、ドレスローザにいる人々は声を張り上げた。
ギャッツの実況を聞いて、鳥カゴを押さえていた麦わらの一味たちは安堵し、その一方でローの能力によってルフィと位置を入れ替えになったナマエは一瞬で風景が変わると目の前にいるローを見て大きく目を見開かせる。


『トラ、ファルガー・・・?』
「運が良かったな歌姫屋」


壁に寄りかかるようにして座り込んでいたローもまた酷い怪我を負っており、その膝の上にいたナマエは慌てて上から退こうとするが先ほどの攻撃と、海楼石の手錠によって思うように動く事ができずそのまま倒れこんでしまう。

弱々しく顔だけ上げ、さっきまで自分のいた場所・・・ルフィのいる場所を見てみれば、今いる場所はドフラミンゴたちがいる場所からそう遠くはなく、建物の屋上にいるようだった。


「大げさな復活だなァ・・・だがかろうじて覇気が戻っただけ・・・立ってるのが精一杯だろう?」
「っそれは・・・お前も同じだろう」


笑みを深めたドフラミンゴはルフィを糸で攻撃を仕掛け、吹き飛ばされていくルフィに慌てて駆け寄ろうとするレベッカにもドフラミンゴの魔の手が襲いかかる。


「シャンブルズ」


攻撃される寸前にローは足元にあった石と、レベッカの位置を入れ替えた。同じようにしてヴィオラもこちらに持ってくると下にいるのはルフィと、ドフラミンゴのみとなる。
ドフラミンゴはローの存在に気づいてはいるものの、先にルフィを始末することにしたのかルフィに激しい攻撃を繰り広げ、ルフィは迫り来る無数の糸を武装色の覇気で防御する・・・が一撃一撃が重く、ドフラミンゴの言うとおり全てを防御できるほどルフィの覇気も完全には戻っていなかった。

派手な音と共に遠くへと吹き飛ばされていくルフィを見て目を見開かせたナマエはローに自分の手首につけられた手錠を外すようお願いするが、ローも能力者・・・相棒の刀があればなんとかなるのだが今は手元になく、かといって迂闊に触る事もできず、ヴィオラやレベッカも外せるほどの力を持ち合わせていない。

――ルフィとドフラミンゴの一騎打ちを見守るしかなかった。


「滑稽だなァ・・・どいつもこいつもおれのカゴの中で大人しく操られてりゃ良かったんだ」
「ハアッ・・・ハア・・・カゴ・・・?操る・・・?」
「人間など所詮ゴミ・・・神の力を宿すこのおれが操ってこそ生きる価値があったんだ。ゴミなりに生きる価値が、な。その操り人形の糸をお前らが切りやがった。その結果がこれだ。お前らが余計な真似をしなければこんな大虐殺せずに済んだんだ」
「ッ・・・・・・いい加減に・・・いい加減にしろぉおお!!!」


叫んだルフィが武装色の覇気を纏った腕から空気を入れ、筋肉を増幅させる。


弾む男バウンドマンとやらになったら仲間は愚か国民全てをお前に殺させてやるよ。安心しろ・・・お前の姉だけは生かしてやる。もっとも奴隷のような人生になるだろうがなァ・・・ふふふふふ!」
「ッてめェなんかにナマエは渡さねェ!!!!ギア4ギアフォース!!!」
「!糸を・・・!?」


ルフィが声を張り上げただけでドフラミンゴの用意していた寄生糸は全て解かれた。


「わずかな体力で何秒もつんだ?その姿」


鳥カゴはもうすぐそこまで来ている。早くドフラミンゴを倒さなければここにいる全員が殺されてしまう・・・怒りを露にしたルフィは大きく弾むとそのまま上空に向かって真っ直ぐと飛んでいく。
空中戦となるとドフラミンゴのほうが有利・・・ルフィ自身もそれは分かっていた。ルフィの後を追うようにドフラミンゴも糸を使って空へと飛んで行き、ドレスローザ全員の視線が上空に集まる。


「おれの頭上に立つとは気分が悪い・・・引き摺り下ろしてもう一度操り人形にしてやる!」
「ミンゴォオ・・・!!!!お前は何でもかんでも手の中に閉じ込めてどいつもこいつも操ろうとするからおれは・・・ッ息が詰まりそうだぁあぁあぁ!!
「血を恨め!お前達は操られるだけのゴミとして生まれたんだ!お前ら人間とおれとは違う!」
「黙れ!!お前をぶっ飛ばしておれは出て行く!!」
「やれるもんならな・・・小僧!!!」


――この一撃で、勝敗が決まる。
渾身の力を込めたルフィの拳がドフラミンゴに襲い掛かり、ドフラミンゴはそれを蜘蛛の巣のように張った糸で受け止めた。


『ルフィ!!!!』
「うおおおおお!!!!!」


全員がルフィに声援を送り、その想いが募ったのか――ルフィの拳は遂にドフラミンゴの糸を貫き、ドフラミンゴに直撃した。
物凄い勢いで殴り飛ばされたドフラミンゴは地面を割り、奥深くの地下まで落下していく。

戦いの衝撃によって辺りの建物が崩壊し、国民たちが呆然とするなか・・・1人ギャッツが恐る恐るマイクを手に持ち、声を出す。


「"空を見よ、ドレスローザ!!"」


――鳥カゴの糸が、ゆっくりと消えていく。・・・ルフィが、遂にドフラミンゴに勝ったのだ。
消えていく糸を見つめながら、その場にいた者達はこの10年間を思い返す。おもちゃにされ、愛する者に忘れられた者、奴隷のように働かされ、ゴミ同然に扱われていた日々・・・それから解放されると思うと涙がとめどなく溢れてくる。

糸が消える頃には雲も晴れて青い空が広がり、ドレスローザに陽が差す。まるで人々の心を表しているかのように・・・。


「"カゴの外に広がる風景は・・・切り刻まれた街か・・・!はたまた・・・!!もはや操られることのない自由の地か!!ドレスローザ国防船!海賊ドンキホーテファミリー2千人VSバーサスこの地に居合わせた運命の戦士たち・・・!!その大将戦、王下七武海ドンキホーテ・ドフラミンゴVSバーサス剣闘士ルーシー!!ひょーひゃ・・・っひょーひゃぁあ・・・!!"」


街中がどよめきに包まれる。実況するギャッツも感情が高ぶったのか涙と鼻水を流しながら、それでもさすがはその道のプロというべきなのか・・・再びマイクを持ち直し、息を整えてから叫んだ。


「"勝者・・・・・・ッ・・・・・ル"ゥーーーシィィイイーーーー!!!!"」


崩壊する国が必ずしも不幸とは限らない――この日国の人々は、ガレキの中で喜び・・・泣くのだった。



   



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