EPISODE.21



――サボとナマエは街中を走り回っていた。コアラは別件があるといってまたもや別行動になり、別れ際にくれぐれも革命軍に迷惑をかけるような事をするなと散々忠告されたのはいうまでもない・・・。

道中、暴れ回るものや自分たちを捕まえようとする者達を倒しながら暫く走っていると・・・ふと、ナマエの足が止まる。嫌な予感がしそのまま背後を振り返ってみれば・・・地面が小さく揺れているようで、ピーカとは違う地揺れに目を細めた。


『サ、サボ!』
「どうした?」


突然声をあげるナマエにサボの足も止まる。ナマエは街全体を囲っている鳥カゴの糸を指差した。少しずつではあるが・・・糸が中心部に向かって収縮しているようだった。

糸の壁は建物を切り刻んで進んでいき・・・あれに触れてしまえば最後、人間など紙きれのようにバラバラにされてしまう。崩壊していく建物、そして糸から逃げるように街の者達たちは中心部へと走り、街中はさらに大混乱に見舞われた。

もはや安全な場所などどこにも存在しておらず・・・ゲームといっていたがドフラミンゴはもともと国の秘密を知った者達を生かすつもりはないのだ。


『・・・ルフィは、負けないよね?』
「おれ達の弟だぞ?あいつが負けるわけがねえ」
『うん・・・うん、そうだよね』


――麦わらの仲間になったからには船長・・・ルフィを信じるしかない。絶対にドフラミンゴを倒し、この地獄から皆を救ってくれるはず。

逃げても逃げても後ろから迫りくる糸に、人々の表情が絶望に満ちたその時――ある1人の男の声が、街中に響き渡る。
街の至るところにあるスピーカーを通して誰かが話しているようだった。


「"皆、聞いてくれ。私は元ドレスローザ国王リク・ドルド三世。この国は今、現国王ドフラミンゴの始めたゲームによって逃げられない巨大な鳥カゴの中にある。さらにその凶暴な鳥カゴは街を切り刻み収縮を続けている!突如降りかかった現実に感情がついてゆけぬまま、ただ命を守っている現状だと思う・・・だがこれは夢などではない!そして今日起きた悲劇でもない!!わたし達は10年間、ずっと海賊の支配するドレスローザという名の鳥カゴの中にいたのだ!!10年間、ずっと操られたままに生きる人形だったんだ・・・ッこれが現実なのだ!!だがそれももう終わる!!誰も敵わぬと思っていたドンキホーテファミリーはこの国に居合わせた屈強な戦士たちによって今や壊滅寸前!!ファミリー幹部たちはすでに全滅!!討つべき敵はもはや現ドレスローザ国王ドフラミンゴを残すのみ!!相対するは海賊麦わらのルフィ・・・きっと彼こそが鳥カゴを破壊してくれる男!!わたしは元国王でありながら見知らぬ海賊に国の運命を託すしかない己の無力を痛感している・・・っだが!!こう叫ばずにはいられない!!勝つも負けるもあとたった数十分・・・!!それまではなんとしても逃げ延びてくれ!!!この縮むゆく国に誰1人押しつぶされる事なく走り続けてくれ!!息が切れても足が折れてもあと数十分・・・生き延びてくれ!!!!希望はあるのだ・・・っ・・・どうか、諦めないでくれぇええぇえ!!!"」



元国王の魂の叫びに・・・それまで絶望していた街の民達の顔つきが一気に変わる。もう駄目だと諦めていた人々が徐に立ち上がり、病人、けが人、老人、子ども・・・誰1人として逃げ遅れのないようお互いが助け合い、一丸となってリク王の言うとおり中心街へと走り出したのだ。

決着まで生き残る――ルフィが必ずドフラミンゴを助けてくれる。

ドレスローザにいる全員が、ルフィに全ての運命を託した瞬間だった。


『!ルフィの覇気が・・・』
「ああ・・・弱まってるな・・・」


ルフィの気配を感じ取ったサボとナマエは崩壊した建物の間をすり抜けて、大通りを走るギャッツと、その背中に背負わされたルフィを見つける。

――先ほどまでドフラミンゴとほぼ互角の戦いをしていたルフィだったがギア4ギアフォースの限界により強制解除され、約10分間覇気が使えない状態のルフィは弱りきっており、コロシアムにいた戦士たちに守られながら、時間を稼ぐようにしてドフラミンゴから逃げ回っていたのだ。


「いいかお前ら、10分だ!!あと10分なんとしても逃げ切るぞ!!」
「「「「おおおーー!!!」」」」


――けれど敵はドフラミンゴだけではなかった。どこからともなく現れたバージェスがルフィに襲い掛かる。


「ウィーッハッハハァ!!死ね、麦わらァ!!!」
「バ、バージェス!?」
「・・・っ・・・」


バージェスは持っていた探検の切っ先をルフィ目掛けて振り下ろし、目を鋭くさせたサボとナマエが目にもとまらぬ速さで飛び出すとその勢いのままバージェスを蹴り飛ばした。


「!サボ・・・ナマエ・・・!!」

「5つ星の受刑者だ!!3つ星もいるぞ!!」
「あ、あれがゴールド・ロジャーのもう1人の子ども・・・ナマエ・・・!?」
「革命軍の参謀総長も一緒にいるぞ・・・!」


起き上がったバージェスは苛立った様子でサボを睨み上げるが・・・その隣にいるナマエに気づくと妖しげに口角を持ち上げる。サボは持っていた鉄パイプの先端をバージェスに向け、言い放った。


「麦わらのルフィはおれとナマエの弟・・・あいつに何か用か?バージェス」
「ッ麦わらが、弟ォ・・・?どこかで聞いた台詞だな」
『・・・エースも、そう言ってたでしょう。わたし達は兄弟なの』
「エースゥ?なるほど・・・そういう事か!」
「バナロ島の決闘でお前ら黒ひげ海賊団がエースを捕らえ、それがあの忌々しい頂上戦争の引き金になった・・・。エースの人生だ、別にお前らを恨みやしないが――以後ルフィとナマエのバックにはおれがついてる。よく覚えとけ!!」
「ウィーッハッハァ!てめェらの関係なんざ興味ねェよ!邪魔するな、革命軍にも用は無ェ!!だが・・・てめェには用がある!ナマエ!!」
『っ』
「船長がお前の力を喉から手が出る程欲しがってんだよ・・・大人しくついてきなァ!!!」


拳と拳を合わせ、戦闘態勢を取るバージェス。思わず身構えるナマエを守るようにして前に出たサボがニヤリと口角を持ち上げると、何を思ったのか指先に炎を灯しバージェスに見せつけた。
――メラメラの実の力を見たバージェスは此処に来て漸く、決勝戦に出ていたルーシーがサボだという事に気づきそれまでの記憶が蘇ってきたのか恨めしそうにサボを睨みつける。
標的がルフィでもナマエでもなく自分へと変わったことを確認したサボは背中にいるルフィにバージェスから視線を逸らさないまま話す。


「おいルフィ、酷いダメージだ・・・向こうからドフラミンゴが来るぞ?おれはバージェスに手が掛かりそうだ」
「ウィーッハッハァ!!!」
「平気だ・・・っキャッツたちが少し時間を稼いでくれるらしいんだ」
「ギャッツだ!!!」
「ミンゴはおれが必ず仕留める・・・!」
「へへ、頼もしくなったな?あっちは任せろ」
「サボ・・・食ったんだな、エースの実」
「へ!誰にも渡さねえよ!あいつの形見だ」
「ああ・・・よかった・・・!!」


力なくも、安堵したように笑うルフィに手をかざし、治癒を始めるナマエ。


「ナマエ、お前はルフィの側にいてやれ」
『うん、分かった!』
「じゃ、頼んだぞペッツ!」
「ギャッツだ!!ッ了解した!!」


ギャッツとルフィ、そしてナマエはドフラミンゴから逃げるようにして走り始める。逃がすかとナマエを狙おうとするバージェスだったが、サボがそれを許すはずもなく・・・背後でサボとバージェスの壮絶な戦いが繰り広げられた。

四皇のクルーと互角・・・否、それ以上に戦うサボの強さに、ギャッツの後をついていく戦士たちが言葉を失っていたのはいうまでもない。


「お、おいルーシーどうなってる!?大会で優勝してメラメラの実はお前が・・・」
「決勝のルーシーはおれじゃねェ・・・おれは用ができて、サボに変わってもらったんだ」
「ええ!?そ、そうだったのか・・・反則だぞ!だ、だがよかったな、うん!亡き兄弟の力を受け継ぐなんて熱い話だ・・・ッまあいい!とにかく今はお前の復活だけがこのドレスローザの希望なんだ!!!」

『!』



――背後から感じる殺気。激しい爆発音と共に聞こえてくるのは・・・戦士達の悲痛な叫び声だった。走りながらも、恐る恐る後ろを振り返ったギャッツは次々と倒されていく戦士たちと迫り来るドフラミンゴを見て目を見開かせる。

・・・さっきまでルフィと戦い、ドフラミンゴもかなりの体力を削られ、弱っているはずなのだが・・・戦士たちの力では足止めすらできていないようだった。


「麦わらぁあぁああ・・・・・・!!!」




   



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