EPISODE.20



「さすが海軍大将・・・すげえ力だ。まだ能力に慣れてなくていちいち避けちまうよ」
「お前さん・・・立場分かってやすか?」
「ッバスティーユ中将!!」


言いながらサボはバスティーユが付けていた仮面を粉砕し、側で倒れているバスティーユを見つけ慌てて駆け寄る海兵たち。


「先ほど"兄として"、そうおっしゃいましたが・・・」
「ああ」
「頂上戦争で死んだ火拳のエースと、そこにいる双子の妹のお嬢さん・・・その2人は麦わらの義兄弟と公表されていやしたが・・・お前さんもそうだと?」
「・・・4人で盃を交わした。おれ達には切っても切れねェ絆がある」
「はた迷惑な4兄弟が・・・いたもんだ」


藤虎とサボの会話を聞いていた海兵は口をあんぐりと開かせた。
白ひげ海賊団2番隊隊長のポートガス・D・エース、世界が求めていた伝説の悪魔の実の能力を持ったポートガス・D・ナマエ、革命軍No.2のサボ・・・ルフィの兄弟のすごさに驚愕する他無かった。


「覚えとけ。ナマエやルフィがもしおれに助けを求めたら・・・例え世界のどこにいてもおれは立場を押して駆け付ける!!・・・っもう二度と、」


――あんな想いはしたくない。



『・・・サボ?』



唇を噛み締めながら帽子のつばを下ろすサボを、ナマエは心配そうに見つめた。一体何を思いだしているのか・・・正面にいた藤虎も黙り込んだサボの心情を取ったのか――複雑な表情をしているようにみえた。


「・・・これ以上の質問は野暮のようだ」
「どうせ興味はねェだろ?」
「その肴に合う酒も無ェもんで・・・」


眉をハの字にさせるナマエの頭に手を置いたサボは安心させるよう微笑むと、背中の鉄パイプを持ち構える。


「ナマエは下がってろ」
『・・・嫌』
「え?」
『守られてばかりは嫌。私も・・・戦う!』


そう言うとナマエは手をぐっと握り、身構える。一瞬は躊躇ったサボだったがナマエの意思の強い瞳を見て頷き、「よし行くぞ!」と2人で藤虎に立ち向かっていった。


――サボとナマエ、藤虎の壮絶な戦いが繰り広げられる。3人の戦いによって起きる衝撃波が周りにいた海兵たちを襲い、他の者達は手も足も出す事が出来なかった。
サボは目を欺くためにあえて地面を攻撃し、土煙を起こすが・・・もともと藤虎は盲目。目以外の機能を使って戦っているため意味は無かった。


「さすが時代を担う革命軍のNo.2、伝説の悪魔の実の能力者・・・鋭い攻撃で」
「へっ!心にも無ェ事を」


サボは自分達の周りを炎で包み込み、部外者からの侵入を遮断した。回り込もうとする海兵たちもいたが辺りの建物が崩れているため道もなく・・・サボは何度も攻撃を仕掛けるものの、藤虎の異変に気づくと一旦攻撃をやめた。


「お前・・・一体なんのつもりだ?海軍大将の力はこんなもんじゃねェはずだ。茶番はやめろ」
「おかしな人だ・・・あんたの目的は海軍を止めることでしょう?」
「いつまでシラを切りとおすつもりだ」
「へへ、参ったな・・・あっしはご覧の通り、少しは手加減にしてもらわねェと」
「おれは差別はしねェんだ」
「怖ェなあ・・・革命軍No.2はダテじゃねえようで・・・・・・ただ、あっしにも立場ってもんがござんす。どうかご理解を」

「『!』」


重力刀 猛虎グラビとう もうこ!!!」



藤虎の周りの地面が重力によって沈んでいく。
刀に能力を行使し、それを振るった方向へ向けて強力な重力帯を広範囲に発生させる。辺り一帯の建造物はまとめて破壊され強い重力に引き込まれていくなか、真横から襲い掛かる重力にサボとナマエは唇を噛み締めながらそれに耐えていたが・・・2人の背後にあった建物がそれに耐え切れず、崩れ落ちてきた。

咄嗟にナマエは月の壁ムーン・ウォールを張って建物から身を守り、その間に炎に身を包んだサボが藤虎に真っ直ぐと向かっていく。


「っそうだな・・・これくらいはやってもらわねェと!」
「!」
『(あの人・・・一体何を企んで・・・?)』


大きな爆炎が辺りを包み込む。

サボの攻撃を受け止める藤虎は反撃のチャンスはいくらでもあったというのに、反撃はしてこず・・・一旦藤虎から離れたサボは訝しげに顔を顰めた。
海軍大将の本気はこのようなものではないはず・・・藤虎という男は一体何を企んでいるというのか。


「一が出るか八が出るか・・・あっしはこの首一つ賭ける覚悟だ。だが・・・転がすサイコロを失っちゃあツボを振る前からお釈迦でござんす」
「『!!』」
「同じ穴の狢なんだ・・・あっしら海軍もドフラミンゴも筋違いだ・・・海軍はこの国じゃァヒーローにはなれねえんですよ」
『そ、そんな考え誰かにバレたら・・・』
「いえ・・・あっしはあんた達に"阻まれただけ"だ・・・」
「へへ・・・まるで博打だな」
「これでも運はいい方で」


笑いながらそう言った藤虎は抜いていた刀を鞘に戻し、サボも能力を解除する。辺りの炎が一瞬で消え、驚きながらも海兵たちが銃を身構えるとサボはナマエを脇に抱えてその場から逃げ去った――。



――追っ手が来る事も無く、誰もいない広場に辿り着いたサボはナマエを下ろすと拍子抜けしたようにその場に座り込んだ。海軍の、しかも大将に・・・あんな考えを持つ者がいるとは思ってもいなかった。


「あ、見つけた!サボくーん!!」
『!コアラさん』


遠くの方からサボを呼ぶ声。振り返ればそこにはコアラがいて、コアラは肩で息をしながらもサボに現状の報告をする・・・が、先ほどの藤虎の言葉がまだ頭に残っているサボの心此処にあらずというべきか、何の反応もしないサボに首を傾げたコアラが何度もサボに問いかけるも・・・全て無視されてしまう。
ムッと眉を顰めさせたコアラは試しに、ナマエにサボを呼ぶよう頼んだ。首を傾げながらもナマエがサボの名を呼べばサボはすぐに「どうした?」と反応し、その差にブチッとコアラの堪忍袋の緒が切れる。


「サーボーくーーーん!!??ナマエさんには反応するくせにわたしのことは無視して!わたしの話が聞こえないっていうのー!?」
「っき、聞いてるよ!」
「聞いてない!!いーい!?キミには立場があるんだよ!1人の感情で海軍大将なんかと戦わないで!!革命軍に戦争でもさせるつもり!?」
「妹と弟の危機だ!関係ねェ!!」
あーるー!!!!


顔を真っ赤にさせて怒ったコアラがサボの頬をつねり、ビヨーンと真横に引っ張る。


「キミの暴走でとばっちりくうのは嫌なの!!」
「しはへえほ!(しらねえよ!)」
「なにぃー!!??ちょっと!ナマエさんからも言ってやって!」
『え?で、でも』
「ナマエをふはほうとふんな!(ナマエを使おうとすんな!)」
「ッなによー!大体なんでキミはいっつもいっつもそうなの!人が真剣に心配してるのに自分は勝手に行動してその度にわたしとハックばかりが後始末に終われて私はキミのお守り役じゃないんだよ!!!!」


キミの身勝手でいつも怒られるのはわたしとハックなんだからね、とそれまでの不満を全て言い放ったコアラは掴んでいた頬を離し、漸く解放されるも真っ赤になった頬を痛そうに摩るサボ。
そんな仲睦まじい(?)2人を見て笑みをこぼしながら、ナマエは街の中央にそびえたつ王宮を見上げ――ルフィの身を案じるのだった。



   



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