EPISODE.19



サボに引っ張られるがまま、地上に出てみればそこは地獄のような光景が広がっていた。ドフラミンゴのイトイトの実の能力によって身体を操られた海賊、海兵、そして一般市民たちまでもが無差別に武器を奮っており・・・まるで戦争のようだ。

助けたいところだが操られたもの達を助けるには元凶のドフラミンゴを倒す他に手立てがなく、悔しそうに握り拳を作ったナマエは周囲で暴れまわる者たちから武器を奪い、気を失わせることしか出来なかった。見える範囲での争いは治ったもののこの街で操られてる者は何百人、何千といる。1人1人相手にしていてもキリがなかった。

敵であろうと分け隔てなく怪我を負っている者達に治癒をかけながら、ナマエは地形の変わったドレスローザに気づき首を傾げた。


『地形が、変わってる・・・?』
「ああ。これは恐らく・・・」


ドフラミンゴファミリーの最高幹部ピーカはイシイシの実の能力者で、岩や石と同化することで自在に操ることができる"岩石同化人間"・・・大地と同化して大きな段丘状の台地を形成したり自らを山のごとき岩石の巨兵に変貌させることも出来るらしく、先ほどの大きな揺れも地形が変わったのも・・・全てはピーカの仕業だった。

今まさに、誰かと戦っているのか大地が大きく揺れ、激しい地響きが鳴り響いている。



――あの映像のせいでてっきりルフィ達は集中砲火を浴びると思っていたが・・・そうでもないようだった。特にコリーダコロシアムにいた誇り高き戦士たちは大会敗戦後、ドフラミンゴファミリーによっておもちゃにされ奴隷同様に働かされていたがウソップの活躍によって人間の姿に戻ることができ、そのお礼といわんばかりに下っ端たちとは違い懸賞金に目もくれずルフィ達の味方となって加勢しており、ドフラミンゴのいる王宮へと向かうルフィ達の援護を行っていた。
強力な助っ人に安堵しながらもナマエは王宮とは反対側のほうへと走るサボに声をかける。


『ねえサボ、ルフィ達と一緒にいなくて大丈夫なの?』
「ああ。おれ達にはおれ達で出来ることがある」

「おいこっちだ!!3つ星の革命軍だ!!!」
「5つ星もいるぞー!!!生け捕りだあああ!!」

「『!』」


目の前に立ちはだかる賞金稼ぎたちが一斉に襲い掛かってくる。サボはメラメラの実を使って高くそびえる王宮の外周を炎で包み込み、彼らの道を遮断した。・・・ルフィの邪魔をする者を足止めするために。

次々と向かってくる賞金稼ぎとドフラミンゴファミリーの部下、海兵らをナマエとサボは息の合ったコンビで倒していく。あまりの強さに周りが怖気付きはじめたその時・・・炎の向こうから先ほどゾロと戦った海軍大将――藤虎が現れる。


「・・・どうしても退いていただけやしませんかね?」
「そうだな・・・海賊麦わらの一味、及びそれを手助けする戦士たち・・・それらに危害を加えるようとする者をこの先通すわけにはいかない」


炎の向こうには藤虎だけでなく、多くの海兵の姿もあった。


「海賊の援護は革命軍の仕事ですかい?」
「そうだとも。革命軍としてこの道は通さない・・・いや、間違えた。"兄"として、だ」
「ほう・・・一体、どちらのお兄さんでしょうね?それにそちらのお嬢さん・・・海軍に引き渡すってのは、ちょっとばかり無理なご相談ですかね?こちらにも事情がございやして」
「はっ、どんな事情であれ大事な妹を易々と引き渡すわけねえだろ」


言いながらサボは持っていた鉄パイプを背中に戻し、辺りの炎を消す。

藤虎と共にいた海軍中将のバスティーユは手前で武器を構える部下たちに銃を下ろすよう、指示をした。
革命軍参謀のサボ、伝説の悪魔の実の能力者のナマエ・・・どちらも手に負える相手ではないことは戦わずとも分かりきっていた。ドレスローザが大混乱に包まれているこの状況で大切な戦力を失うわけにはいかなかった。


「中将か・・・そいつの言うとおりだ。お前らがいくら束になってもおれ達には勝てねえ」
「ッ貴様ァ!!!」


怒りに身を任せた1人の海兵が、持っていた武器を発砲する。激しい爆発音が鳴り響く・・・が、サボもナマエも自然ロギア系・・・ただの銃弾が効くはずもなく、たった2人に海兵が負けるはずがないと、それぞれ正義を背負った海兵たちがそれを合図に次々と引き金を引いていく。やめるんだとバスティーユが指示するも頭に血が上っている海兵にその声は届かなかった。

多くの銃声音が鳴り響くなか――サボは先に前に飛び出すとメラメラの実、そして"竜爪拳"という武術を使ってなぎ倒していく。一方のナマエも自分から攻撃は一切しないものの、ただ向かってくる海兵らの首の後ろ、腹部など急所を狙って一発で気絶させて倒していた。


「ッお前ら!そいつらは自然ロギア系の能力者だぞ、物理攻撃は効かん!!全く恐ろしいことだらァ・・・革命軍No2のくせにあの悪魔の実が渡るとは・・・ッ退け、お前らじゃ無理だらァ!!!」


どんどんと倒されていく海兵を見て唇を噛み締めたバスティーユが2人の前に現れる。

巨大な刀身をもつ刀剣"鮫切包丁"を持ち構えると何の躊躇いもなくナマエに向かって振り下ろされる。咄嗟に避けようとしたナマエだったがそれよりも早く目の前に現れたサボがナマエを横抱きするとすぐその場所から離れ、一太刀を避けた。攻撃は当たらなかったものの――2人の背後にあった建物が綺麗に真っ二つに割れ、派手な音を立てて崩壊していく。


「鮫切包丁はダテじゃねえな」
「ッ生意気なァ!!猫のように逃げおって・・・ッ自慢のその爪ごとへし折ってやるだら!!」
「おれの指は・・・竜の爪!!!嵩取る権力を引き裂くための――爪!!!」


サボはナマエを下ろすと背中に隠し、手の人差し指と中指、薬指と小指を合わせてその構えた手で振り下ろされた鮫切包丁を受け止めてみせた。体格差ではサボのほうが不利だというのに、サボは余裕に口角を持ち上げ、バスティーユは身動きが取れないのか微動だにしていない。
バリンと激しい金属音が鳴り響き、バスティーユの鮫切包丁はサボによって粉砕され、原型を留めていなかった。しかしさすがは中将クラス・・・バスティーユは動揺する事無く武器を手放すと、一瞬の隙も与えずサボに殴りかかろうとした――が、その前にサボに顔面を掴まれてしまう。


「この爪は人間の頭蓋骨くらい卵みてえに握りつぶせる・・・!」
「ッ、う、ぐ・・・!!!!」
「お前らの目的はなんだ?なぜ世界政府はそうまでしてナマエを捕まえようとする?」
「うああああ!!!!」
「理由が何であれ・・・ナマエを傷つける奴はおれが許さねェ・・・!!」

『っサボ!』


バスティーユがつけていた鋼鉄の仮面にメキメキと亀裂が入る。
そのままでは本当に死んでしまう・・・慌てたナマエが止めようとした――その時。空がやけに明るくなり、全員の視線が上空へと集まる。


「弱りやしたね・・・鳥カゴとやらが邪魔してうちの"隕石"が切れちまってやいませんか?」


――藤虎の能力によって宇宙から落下してきた隕石は、ドフラミンゴが作ったイトによって切断されるも威力は衰えぬまま、真っ直ぐと街中へと降りかかってきた。
あんな巨大な隕石が広範囲に落ちてしまったらひとたまりもない・・・中には何の関係もない市民もいるというのに。

ナマエは離れた場所で泣き叫ぶ子どもの姿を見つけると目つきを変え、キラキラの実の能力を解放すると建物を伝って隕石に向かって高く舞い上がった。目と鼻の先にある巨大な隕石に怯むことなくナマエは少ない月の力を借りてキラキラの実の力を集中させると狙いを定め、淡く光る両手をかざす。


星の導きスターダスト・レイ!!』


星のように光り輝く光が隕石を包み込む。すると巨大隕石は一瞬で粉砕し粒子となり、空中で散らばっていった。・・・まるで流れ星のようにドレスローザ全体にキラキラと輝く粒子が降りかかり、その光の粒子が人々の体に降りかかると・・・人々の身体は癒されていた。わずかではあるが治癒効果も発揮されていたのだ。

地面に着地したナマエは先ほどの子どもが無事な様子を見てホッと安堵し、肩を撫で下ろす。


「すげえ・・・」
「イ、イッショウさんの隕石を一瞬で・・・!」
「キラキラの実は月のある夜じゃないと使えないんじゃないのか!?」
「そ、それよりもイッショウさん!隕石を落とす時は言ってください!!」
「あ、あいすいやせん・・・落としやした!!」
「「「やる前ー!!」」」






   



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