EPISODE.17



ドフラミンゴの企みによっておもちゃにされ、奴隷同様に働かされていた者達が元に戻った瞬間、一丸となってSMILE工場とドフラミンゴを倒すべく活気に満ちていた。
それは街中でも一緒で、地上ではドフラミンゴファミリーと海軍、海賊、おもちゃにされた者達たちが暴動を起こしており、ウソップの治癒を終えたと同時にあちこちから聞こえてくる怒号や悲鳴に思わず耳を塞ぐナマエ。
――人の"心の声"が聞こえるようになったのはいつからだろうか・・・レイリー曰く見聞色の覇気が異常に発達したせいといっていたが、これに至っては未だにコントロールが難しく、たまにこうして聞こえてくるときがあるのだ。


『うッ・・・』
「!」


激しい頭痛、めまいが襲ってくる。

何十人・・・否、何百人という声が直接脳内に響き渡り、気分が悪くなったナマエがサボに寄りかかるようにして、ずるずるとその場に座り込んでいく。サボは支えながら一緒に座り込むと、尋常ではない汗をかき、顔も真っ青な状態のナマエを見て目を見開かせた。


「ナマエ!どうした!?」
『色んなところから、声が・・・っ・・・』
「!」


周りに喋っている者はいない。いたとしても遠くの方で士気を高めている戦士たちのみで、しかしそれほど大きい声ではなく・・・1つ心当たりのあったサボは昔の出来事を思い出した。
――あれはルフィがブルージャム海賊団の部下、ポルシェーミーに捕まった時・・・ナマエはかなり離れた場所にいたルフィの"声"をたった1人、聞こえるといって涙していた。全く同じ現象にどうすればいいか分からないサボはナマエを抱きしめると何度も声を掛け続けた。


『ッはあ・・・はあ・・・っや、ぁ・・・』
「大丈夫だナマエ、落ち着け」
『ううッ・・・』




――うわああ!!!!やめてくれええ!!


――な、なんだこれ!?体が勝手に・・・!!!!


――誰かおれを止めてくれええええ!!!!


――おとうさああああん!!おかあさああああああん!!!!


――ドレスローザの各地で無差別に人を傷つける者達が・・・!!


――海兵の中にも突然暴れ出すものもいるぞ!?!?


――このままじゃ多くの犠牲者が出る!!!!





地上で一体何が起きているのか、ナマエ自身も分かっていなかった。老若男女問わず聞こえてくる断末魔の叫び・・・次々と消えていく命の灯に唇が震え、涙が止まらない。ここまで多くの声が聞こえてくるのは初めてだった。


『も、やめ・・・て・・・っ・・・』
「!!」


ゴゴゴゴゴ、と突如地面が大きく揺れ始める。今度は一体何が起きようとしているのか、見てみれば地下の中央にあったSMILE工場が何かの力によってせり上がっていくではないか。あっという間にSMILE工場は天井に空いた大きな穴を通って地上へと出ていき、姿を消した。
その後もまるで島全体が動いているのではないかと思うくらいの強い揺れが続き、暫くして収まったと思えば――どこからともなくドフラミンゴの声が街全体に響き渡る。



「"ドレスローザの国民たち・・・及び、客人たち。別に初めからお前らを恐怖で支配してもよかったんだ"」



街中にある映像電伝虫によって映像が映し出される。そこに映っていたのは他でもない――ドンキホーテ・ドフラミンゴであった。ドフラミンゴが映像に映った瞬間、全員の視線が映像へ向けられたからか・・・それまで聞こえていた心の声も少なくなっていき、徐々に落ち着きを取り戻していくナマエ。地下にある大画面にも、ドフラミンゴの映像が流されていた。


「"真実を知り・・・おれを殺してえと思うやつもさぞ多かろう・・・だからゲームを用意した。このおれを殺すゲームだ。おれは王宮にいる・・・逃げも隠れもしない。この命を取れれば当然、そこでゲームセットだ・・・だがもう1つだけ、ゲームを終わらせる方法がある。今からおれが名前をあげる奴ら全員を君らが仕留めた場合だ・・・さらにそいつら1人1人に多額の懸賞金をつける。殺るか、殺られるか・・・この国にいる全員がハンター・・・お前らが助かる道は誰かを仕留める他にはない!!!"」

「ドフラミンゴのやつ、一体何を・・・」

「"ふふふ・・・誰も助けにはこない。この【鳥カゴ】からは誰も逃げられない・・・外への通信も不可。外の誰にも気づかれずお前達は死んでいく・・・暴れ出した隣人たちは無作為に人を傷つけつけるだろう。それが家族であれ、親友であれ、守るべき市民であれ――ふふふふふ!逃げても隠れてもこのかごの中に安全な場所などない・・・鳥カゴの恐怖は幾日でも続く。全員が死に絶えるが早いがお前らがゲームを終わらせるのが早いか・・・ふはははは!!!"」


鳥カゴ――上空へ伸ばした糸の束を対象を包囲するように展開し、国を囲う程の巨大な糸の檻を作り出す技。糸の檻は触れたものを容易に切断するほど鋭くすさまじい耐久力を持っており、ドフラミンゴの言うとおり、今この島から逃げ出す手段はどこにも無かった。

――SMILE工場は地上へとせり上がりどこかへと姿を消してしまい、その代わりにSMILE工場がせり上がっていった事によって地上へと繋がる道が出来ていた。地下にいる者達はチャンスといわんばかりにその道を使って地上へと出ようと一斉に走り出す。


「ロビン殿ー!!」
「!錦えもん!よかった、無事だったのね」
「うむ!」


沢山の小人たちを連れ、やってきたのは錦えもんだった。小人の中には酷い怪我を負っている者も多く、王宮の廊下に倒れていたのを見つけたらしい。


「・・・もう聞こえないか?」
『うん・・・もう、大丈夫。ごめんね』


肩で息をしながらも、ふーと長い息を吐いたナマエはサボに支えられながら立ち上がると、木箱の上で横になっている数人の小人を見て眉をハの字にさせ、キラキラの実の能力を使って小人たちに治癒を始めた。まだ本調子ではないのだが、目の前で傷だらけの小さな戦士たちを見てただ座っているわけにもいかない。

突然輝き始める仲間たちに、側にいた小人――レオが慌てた様子でナマエを警戒する。


「な、何をするのれすか!?」
「大丈夫よレオ、彼女はわたし達の仲間よ」
「!ロビランドたちの・・・?」
「ええ」
『完全には治せないけど・・・治癒を、早める事が出来るの』


半信半疑で、仲間の傷を見てみれば・・・軽い擦り傷がみるみるうちに治っていき、レオたちも自身が癒されていくのが手に取るように分かった。


「これは・・・マンシェリー姫みたいな能力れすね!」
『マンシェリー姫・・・?』
「ありがとうれす!!」


額に汗を浮かばせながらもナマエは「どういたしまして」と小人たちに笑いかける。その笑顔に魅了された小人たちが頬を赤らめさせたのはいうまでもない・・・。



   



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