EPISODE.15



――ディアマンテから告げられた衝撃の告白にレベッカは言葉を失い、ただただ涙を流していた。
サボに言われレベッカを守るようにしてバリアを展開するバルトロメオは背後にいるレベッカを見て困惑する。


「何度でも教えてやるぞレベッカ?お前の母スカーレットを撃ち殺したのは"おれ"なんだ」
「おいおい!言葉攻撃って・・・ッお、おれのバリアの立場は!?」
「ッ・・・・・・う、うう・・・・」
『・・・・・・』
「(兵隊さん、だめだわたし・・・っ・・・悔しくて・・・体が動かない・・・!)」


10年以上も前、代王朝の末裔である海賊ドンキホーテ・ドフラミンゴが襲来しレベッカの母、スカーレットは幼いレベッカを連れて国中を逃げまわった。・・・その途中、レベッカのために食料を調達しに街に出たところを今目の前にいる男、ディアマンテの手によって殺された。

声を出して泣き叫ぶレベッカの姿に唇を噛み締めたナマエは静かに立ち上がるとバルトロメオのバリアの横を通り過ぎ、ディアマンテにゆっくりと歩み寄る。


――大切な家族を殺され、残された者の苦しみや辛さも知らず嘲笑うディアマンテを前に足を止めたナマエはふつふつと湧いてくる怒りに任せ拳を強く握ると一瞬のうちに間合いに入り、そのまま真下からディアマンテの顔を蹴り上げた。


「がはッ・・・!?」
『・・・それ以上笑ったら、許さないから・・・!』
「!偽名・・・・・・」


重い一撃に空高く蹴り飛ばされていくディアマンテ。派手な音を立てて地面に落ちていき、場内がシーンと静まり返る。


「ッチ・・・その力・・・・・・間違いねェようだな・・・!!」


起き上がったディアマンテは口の中に溜まった血を吐く。偽名が一体何者なのか、観客たちがざわめき始めた刹那――会場内で異変が起きた。
観客達の中に混ざっていたおもちゃ達の体が突然光り始め、人間や動物の姿になりはじめたのだ。

会場内は一気に混乱状態に陥り、ただ1人、心当たりがあるディアマンテが「まさかシュガーが・・・」と呟いた言葉は誰の耳にも届かなかった。


「こ、これは一体!?どうなっているんだ!?どうしたことでしょう!!!おもちゃ達が、おもちゃ達が人になっていきますーー!!!!!い、いや!人間だけじゃなさそうだ!!」

『(おもちゃが人や動物になった途端、人々の記憶も戻っている・・・という事は、もしかして)』


――オモチャたちが"本来の姿に戻った"と言ったほうが正しいのだろうか。戻ったオモチャの中には凶暴な猛獣もおり、パニックになった観客たちが一斉にコロシアムから出て行きあっという間に客席は蛻の殻となった。
サボの方に視線を向けてみればサボは小さく頷き、このドレスローザでの一部の闇を理解したナマエの脳裏におもちゃの兵隊が過ぎる。まさかと思いレベッカに視線を戻してみれば・・・レベッカは座り込んだまま、先ほどはまた違う涙を流していた。


「こりゃたまげた・・・おい、いつまで泣いてるんだ?」
「ッ違う、のォ・・・うっ、ううう・・・っ思い・・ッ出した・・・!!とても、大切な人・・・!」
「あ?」
「お、父様・・・ッ・・・私には、お父様がいたのォオ・・・!!」
「はあ?なーに言ってんだべおめェ・・・」
「・・・それがどうやらこの国のからくりだったようだな。モノには必ず"核"がある・・・それをつけばどんな状況だって覆せるもんさ」
「大先輩までなにを意味の分かんねェことおっしゃってるんだべ!?」
「リングもそうさ・・・"核"がある」


言いながら、サボはリングの中央に片膝をつけながら、地面を何度か叩いてみせる。
――ある場所でその手が止まるとにやりと口角を持ち上げ、両腕に武装色の覇気を纏わせた。


「一先ず試合にケリをつけよう」


するとサボは両手を地面に突き刺し、リング全体に大きな亀裂が入る。


「竜爪拳・・・竜の息吹!!!」


"核"というべき重要な部分を内部破壊し、リングが一瞬で木っ端微塵になった。一部残っていた観客と、司会者のギャッツは目の前で起きた驚愕の光景に大きく目を見開かせた。

たった一撃でリングが木っ端微塵となり、もはや原型を留めていない瓦礫が水の中へと沈んでいく。1人立つのもやっとな瓦礫の上に立っていたバージェス、ディアマンテは中央の柱に立つサボを見て大きく舌打ちをした。


「あ、足場が・・・!」
「ッ貴様・・・一体何を・・・!?」
「・・・用が出来た!優勝する!!」
「「はあ!?」」


リングは完全に崩壊し、渦を巻くように流れる水もどんどんと水位が下がっているように見えた。真ん中に引き寄せられるように瓦礫は流れていき、ナマエとレベッカ、そしてバルトロメオを乗せた瓦礫もどんどんと中央へと引き寄せられていく。サボの一撃はリングの土台にも衝撃が入り、それが亀裂となって水が地下へと流れているようだ。


足元の瓦礫が大きく揺れたナマエはバルトロメオにレベッカを頼むと自身は大きく地を蹴り、瓦礫を伝ってバージェスの元へと跳んでいく。


「この程度で・・・!気合い!気合いだ!!ウィーッハッハァア!!」
『はあ!!!』
「ぐえッ!?」


完全に油断していたのだろう。呑気に笑うバージェスを蹴り払い、水の中へと落とすナマエ。その後すぐに真横で【01】闘魚が大きく跳ね上がりサボにチャンスが到来する。
すかさずサボが【01】闘魚に向けて走り出したのを視界の端で捉えたナマエは、その近くでサボに攻撃を仕掛けようとするディアマンテに狙いを定めた。棍棒で殴りこもうとするディアマンテの足場に向けて、大きく拳を落とす。唯一の足場が半分に割れ、バランスを崩したディアマンテは水の中へと落ちていき場外。・・・しかしギリギリのところで片手で足場を掴み、溺れるのは回避できたようだが能力者が水に浸かってしまえば最後、思う存分に力を発揮する事はまず不可能であろう。


『(いけ、サボ・・・!)』


邪魔者はもういない。空を見上げれば高く飛び上がった闘魚の背に乗ったサボはそこにある宝箱を手で粉砕し、中から現れたメラメラの実を手にとって中央の柱に降り立った。


「おれの優勝だ!これ取った奴の勝ち、だろ?」
「な!!メラメラの実・・・!!」
「貰っていいよな?」
「ッ・・・ゆ、優勝!!優勝!!こんな時になんですが、メラメラの実を手にしたのはァ!!今大会善一のダークホース、ルーシー!!!優勝おおおお!!!」


ギャッツが説明する最中、サボは持っていたメラメラの実を何の躊躇いもなく口に入れた。これでエースのメラメラの実は無事、サボに引き継がれることができた。安堵したナマエもこの場から一旦退散しようとしたその矢先。


『!!!』
「ハア・・・ッ逃がさ、ねェぞ・・・ハア、ハア・・・!!」


ディアマンテに足元を掴まれバランスが崩れる。サボが優勝した事によってすっかり気を抜いていたナマエがしまった、と気づいた時には既に遅く・・・そのまま勢いよく引き摺り込まれ、下半身が水に浸かる。


『(し、ま・・・っ!)』
「ハハァ・・・メラメラの実は取られちまったが・・・ッ仕方ねェ・・・・・・代わりに、てめェをドフィに・・・!」
『ッはな、して』


――力がどんどんと抜けていく。力を振り絞ったディアマンテが水の中から這い上がり、目の前でぐったりとしたナマエを見て口角を持ち上げると徐にナマエがかけていたサングラスとウィッグを外した。


「あ、あれはま、まさか!!?なんと謎の女性偽名の正体は・・・・ッポートガス・D・エースと同じく海賊王の血を引くポートガス・D・ナマエだったあぁあぁあ!?そ、それにしても噂通りの絶世の美女・・・!!!あまりの美しさに会場内に残ってる観客が男女問わず、わたし同様に見惚れているううう!!」

『ッ・・・』


混乱が収まらないなか、ギャッツの実況により残っていた一部の観客席たちの動きが止まり、全員の視線がナマエへと向けられる。


皆の注目を浴びる中、しかしそんなところではないナマエは水から這い上がろうとするがディアマンテに両手を踏まれているため、身動きすら取れない状態だった。
ディアマンテも先ほどまで水に浸かっていたからかまだ力は出し切れていないようで、その隙に何とかできないのか・・・ボーッとする頭の中で作戦を練っていた――その刹那。


「!?」


頭上から飛んできたサボがディアマンテを蹴り飛ばす。誰もいなくなった客席まで吹き飛んでいったディアマンテに見向きもせず、サボはナマエの両脇に手を差し込んで持ち上げ、水から救出した。そのままナマエを片腕に抱えたサボはジャンプしてその場から離れると空中で兜、付けヒゲ、そしてサングラスを外し、レベッカと一緒にいるバルトロメオに視線を向ける。


「おいマスクメロン!今からもう一発行くから・・・男なら女の1人や2人、守ってみせろよ!」
「ええ!?!?」

「くっそォ・・・!メラメラの実を食いやがった!!」
「ッ・・・あいつもしや・・・"革命軍"の・・・!?」


身体を起こしたディアマンテは姿を露にしたサボを見て目を細めた。


サボは空いてる右手の拳を掲げ、メラメラの実の能力を解放する。――炎のように燃え盛るサボの手。その懐かしい姿を目の前で見たナマエの瞳から、まるで目の前にエースがいるような錯覚を覚えたのか一筋の涙がこぼれた。

――エースの力が、サボに渡って本当に良かった。エースの意思は自分だけではなくサボの中にも存在しており、それが嬉しくて堪らない。


「熱いと思ったけど気のせいか・・・熱くねェ!おれが火になったんだ!!――エース!!!貰うぞ、お前の技・・・・・・!!」
『ッ・・・・・・』


「――火拳!!!!!!!!」






   



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