EPISODE.12



「さァてお待たせいたしました!!これが最後の予選!!Eブロックを勝ち残るのは一体誰なのかァー!?」


火照った顔を冷ますように手で扇ぐナマエの頭の中は相変わらずサボの事でいっぱいだった。これからどんな顔をしてサボに会えばいいのか・・・昔の自分はどうやってサボと会話をしていたのか・・・考えれば考えるほど"普通"が分からず頭から蒸気が出てきそうだ。


「おいおい姉ちゃん、そんな小せェ体でほんとに戦えんのかァ!?」
「早いとこ棄権したほうがいいんじゃねェか!?ガハハ!」
「ケッ。冷やかしはご免だぜ・・・!」

『(と、とにかく今は試合を早く終わらせなきゃ。トラファルガーも心配だし・・・)』


リング上には鍛え上げれた肉体を持ち合わせた強面の選手達しかおらず、その中で1人だけ女性だったナマエはかなり浮いていた。しかし当の本人はそれどころではなく、周りの選手達に声を掛けられるが全く聞こえておらず・・・それが気に食わなかったのだろうか――試合開始のゴングが鳴ると同時に、周りにいた選手達が一斉にナマエに襲い掛かる。


「おおーっとーー!!開始早々波乱の幕開け!!早くも謎の女性偽名に剣闘士たちが襲い掛かるー!!万事休すかァー!?」

「さっさと場外へ落ちやがれー!!!!」
「おらァアアアァア!」


ハッと我に返ったナマエは試合が始まっていた事に気づくと自身に飛び掛ってくる選手たちに目つきを変え、地を強く蹴って高く舞い上がり全ての攻撃を避けた。


「消えた!?」


能力は使っていないが、あまりの俊敏さに目が追いついていないのか辺りを警戒する選手たち。
けれどその姿はどこにもなく、何も知らない選手たちの上空で一回転、身を翻したナマエは着地をすると同時、選手たちの"足"を狙い蹴り払った。
バランスを崩した選手たちは次々と場外へと落ちていき、会場内が歓声に包まれる。


「な、なんということでしょう!!突如現れた謎の女性偽名!その姿は華麗に舞う蝶の如く!剣闘士や海賊らを一斉に場外へ追いやったァアア!!!」

「な、なあ、今何したか見えたか?」
「い、いや見えなかった。気付いたら場外に・・・」
「・・・な、なんだか分からねえけどすげぇや!いいぞ姉ちゃーん!やっちまえー!!」


素顔を隠していてもそのカリスマ性はキャベンディッシュに負けず劣らず、会場内の期待がナマエへと向けられる。
その後もナマエは次々と"能力なし"で倒していき、目にも留まらぬ速さで場外へと落としていった。名のある剣闘士、海賊たちも尽く倒され・・・時間にしてものの数分、気づけばリングに立っていたのはナマエだけとなっていた。


「な、なんと!!Eブロック優勝は偽名ー!!」


まさか勝ち残るとは思っていなかったのか、一瞬静まり返る会場内――けれどそれもすぐに歓声に変わる。
リングを後にし選手の待機場所に戻ったナマエは、場外へと追いやられ闘魚によって怪我を負わされた者たちのところへ行くと、救護班が来る前に能力を使って治癒を行った。・・・もちろん本人たちは意識を失っているため気づいていない。

敵といえど怪我を負わせてしまった罪悪感からくるものなのだろうか、その生半可な優しさが命取りになる、とシャンクスに散々注意されてきたというのに――しかし囚人剣闘士たちの話を聞き、この中には望んでもいない大会に出されている者も居ると思うと不憫でならなかった。放っておくわけにはいかない。

ナマエは心の中で謝りながら、全員の治癒を終えるとその場を後にした。






   



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